レポート
Strategy Instituteのレポートを掲載しています。

Research&Analytics

「賃金と物価の好循環」を実現するうえで、企業の価格転嫁を妨げるリスクが2つあることを前回のレポートで指摘した。今回は、もう一方のプレーヤーである消費者の節約志向について論じる。 本稿では節約志向を消費者物価と消費支出の増減率の差を使って定量化した結果、物価が上がれば購買点数を抑制しようとする消費者意識は依然根強いことが分かった。世代別には、賃上げの恩恵に浴した若年層の節約志向が弱まっている一方、賃上げの恩恵が乏しく教育費などの支出が重い高年齢層は節約志向を強めている。このため、今春予想される賃上げだけでは消費マインド改善は難しい。政策面では現在検討中の高校授業料の無償化などが、節約志向を中期的に薄める策として有効ではないだろうか。

石破総理大臣が2025年初の訪問先に選んだインドネシアは、国際政治においてキャスティングポートを握る大国へと変貌しつつある。同国は、2022年にG20議長国、2023年にはASEAN議長国を務め、ASEANの盟主として頭角を現してきた。2025年1月には正式にBRICSへの加盟を果たし、その地位をさらに強固なものにしようとしている。本レポートでは、インドネシアが近年、国際的に注目を集めている背景を地政学的および経済的観点から概観するとともに、同国のBRICS加盟が意味することを考察したい。

日銀が目指す「物価と賃金の好循環」実現に向け、2025年春闘でも昨年並みの賃上げが想定されており、マクロ目線では賃金、物価、消費の好循環が期待されている。しかし、ミクロ目線でコンシューマー企業の競争環境を見ると、値上げを妨げるリスクも想定される。 本稿では特に2点取り上げる。1つは業態間競合の激化が企業に価格維持バイアスをもたらすリスクである。もう1つは、中国発のデフレが市場価格に低下圧力をかけるリスクである。前者は食品取扱をはじめとする小売業態の小商圏化がより進行するためであり、今後長期間にわたって構造的な要因となる。後者は、中国の生産過剰と米国の対中関税政策に端を発するものであり、起こるかどうか不透明なものの、発生した場合の影響は非常に大きい。

「2025年の崖」という言葉がある。経済産業省は6年前に発表した「DXレポート」で、この年には企業の基幹系システムの約6割が導入から21年以上経過する見込みであるため、放置すれば崖のように巨額な経済損失が発生すると警鐘を鳴らしていた。その2025年を実際に迎えて振り返ると、ERPのリプレイスや導入は一定程度進んだとい言える。一方で、転落を免れた企業が新たな課題に直面している。レガシーシステムを刷新しさえすれば崖を乗り越えられるとの風潮が広まったため、DXレポートの本質だったデジタル技術を活用した事業変革が疎かになった面があるのだ。企業は足元の課題に向き合い、競争優位性を高めるための経営基盤としてERPを活用し、本質的なDX実現を目指すべきであろう。

欧州の自動車産業は、1世紀にわたり世界のリーダーであり続けてきたが、今、その地位は揺らぎつつある。需要の低迷、EV転換の遅れ、中国の台頭――。これらの課題を乗り越えなければ、欧州のリーダーシップは終焉を迎えるかもしれない。関税引上げなど保護主義的措置では限界があり、技術革新や産業基盤強化といった中長期的な視点が求められる。

2024年11月11~24日にアゼルバイジャンの首都バクーで、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の第29回締約国会議(COP29)が開かれた。今回COPでは途上国の温室効果ガス(GHG)排出削減や温暖化への適応を支援するための資金支援目標額が決定されるなどしたが、特に重要なのはパリ協定第6条の実施規則(パリルールブック)をめぐる交渉がようやく妥結したことだ。これでパリ協定は本格的な実施の段階に移った。ただ、2025年1月には、地球温暖化対策に否定的な立場をとってきたトランプ氏が米大統領に就任する。その国際的な影響については読めない部分が多い。

2025年の国内政治は、2024年以上に激動の一年になるかもしれない。2025年夏に予定されている参院選の結果次第で与党が過半数に届かなければ、衆参両院で過半数割れとなり、政権交代も現実のものとして見えてくる。政治の不安定化は政策の予見可能性を低くさせるなど企業活動にも大きな影響を及ぼす。2025年の政局展望について3つのポイントを示して解説する。

2025年は「次元の異なる少子化対策」が本格的に稼働する年だ。拡充した児童手当が年間を通じて支給されるとともに、未就学児の親が柔軟に働けるよう企業に求める改正育児・介護休業法などが施行される。急速に進む少子化に歯止めをかけるには経済・仕事面での育児負担軽減に加え、子どもを持ちやすくする環境づくりを一層進めていく必要がある。

2025年は団塊世代が後期高齢者となって「重老齢社会」に入る節目の年である。さらに2040年には団塊ジュニアが高齢者となり、個人消費におけるシニア層の存在感はさらに強まる。そこで本論では、コンシューマー産業が高齢者による需要をとらえるヒントを導出するべく、改めて高齢者の消費特性を振り返った。家計調査から見ると、高齢者の平均支出には節約志向がうかがえる。しかし、財・サービスの一部については前期高齢者から後期高齢者に向けて、消費志向性が高まる。このポテンシャルを発揮するため、コンシューマー産業には「つながり消費」・「オンライン化」・「インフレ対応」の3つの観点からのアプローチが不可欠になる、というのが本論の仮説である。

政府は2025年、「中堅企業」の成長に向けた官民支援を拡充する。中堅企業が「成長の屈曲点」を乗り越えるために必要な施策とは何か。求められるのは、人材戦略と成長投資、これらを支えるガバナンスの強靭化であろう。いずれも「自前主義からの脱却」が焦点になる。この観点から、中堅企業の成長ビジョンと官民支援の在り方を整理したい。