気候変動

2025年4月の国際海事機関(IMO)会合で、各国政府は国際海運における温室効果ガス(GHG)排出規制の「IMO Net-Zero Framework(ネットゼロ枠組み)」に合意した。規制対象船舶に排出削減目標を設定するとともに、この目標達成のために排出枠の利用を認めた。さらに一部の排出枠は、IMOに一定の金額を支払うことで取得できるようになっており、排出枠の売却を通じて得られた資金は、GHG排出量がゼロの船舶や燃料の導入支援に充てられることになった。ネットゼロ枠組みの導入は、国際海運に関連する企業にとっては負担増となる可能性がある一方、GHG排出量がゼロの船舶や燃料関連の技術や商品を有する企業にとって新たなチャンスとなる可能性もある。

民間の団体が発行する排出枠、「ボランタリークレジット」への関心が高まってきている。環境意識の高まりから企業が自主的な温暖化対策の一環として利用しているのに加え、公的な規制の遵守にも活用可能になったからだ。一方で信頼性や質に問題があるとの指摘もある。こうした中、最も注目を集めている組織が、ガバナンス機関「Integrity Council Voluntary Carbon Market(IC-VCM)」だ。同機関は、「クレジットの信頼性に関する原則(Ore Carbon Principles, CCPs)」を定めたうえで、評価の枠組み「Assessment Frameworks(AF)」を踏まえ、CCPsに適格かどうかを審査している。適格認定を受けたボランタリークレジットは一定の信頼性が担保された存在として、市場の注目を集めると思われる。

世界的なカーボンニュートラルの潮流とエネルギー安全保障上の議論を踏まえて、日本政府は2023年、「GX実現に向けた基本方針」を取りまとめた。10年間で官民計150兆円超のGX関連投資を生み出すことが柱。20兆円の政府支援をテコに、民間部門を中心に130億円規模の投資誘発を目指す(図表1、2)。 しかしながら、政府支援以外のGX投資資金を民間企業がどのように工面するのかという議論はこれまで、ほとんど行われていない。政策金利の先行きが不透明な中、企業が巨額の資金調達をすれば利払いなどのリスクが大きくなる可能性がある。企業がGX投資を控えれば、150兆円の目標達成は苦しくなる。 本レポートでは、海外での内部留保を国内還流させれば税制面で優遇する「レパトリ減税」を政府が使途限定付きで導入した場合、日本企業が海外で積み上がった留保資金をGX投資に振り向ける可能性があるか考察する。その一環として2017年12月に米トランプ政権下で成立した大規模減税政策「Tax Cuts and Jobs Act(TCJA)」がどのような経済効果を生み出したかについても検証を試みる。
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