欧州

  • 2026年6月3日、欧州委員会は、半導体法案2.0とクラウド・AI開発法案(CADA)を柱とする「技術主権パッケージ」を発表した。域外の巨大IT企業(ハイパースケーラー)が欧州のクラウド市場を支配し、また域内には先端半導体の製造能力が存在しないという厳しい現実を前に、EUは公共調達に「主権」の基準を導入し、段階的な要件を設ける見込みだ。もっとも、その制度設計は、域外事業者の完全な排除を目的としたものではなく、一定の条件を満たせば市場アクセスを認める、条件付きアクセスの性質が強い。他方で、政策を支える財源は2028年から7年間の中期予算である「次期多年度財政枠組み(MFF)」の決着待ちであり、何より代替となる域内の技術基盤やそれを育てるベンチャーキャピタル市場も十分に成熟していないのが実情だ。本稿では、同パッケージの提案を読み解きながら、その実現がなぜ難航するのかを構造的に整理し、日本に向けた示唆を提示する。

  • 経済安全保障がグローバルビジネスの最重要課題となる中、欧州連合(EU)では、米国に事実上独占されている決済インフラが政治的な武器(レバレッジ)になりかねないという強い危機感から、過度な対米依存から脱却し、「金融・決済主権」を確立する動きが加速している。こうした地政学リスクに対処すべく、欧州はデジタルユーロの導入や独自の決済網の構築、金融市場の統合など、自律的なインフラ整備を進めている。本稿では、EUの決済環境とEUが直面しているリスクを概観し、主権確立に向けた議論の動向を紐解く。

  • 2026年2月、米国・イランによるイラン攻撃に伴う「ホルムズ・ショック」が世界を襲った。エネルギー価格の高騰は、欧州のグリーン政策を直撃し、エネルギー安全保障が最優先課題へと浮上した。しかし、欧州連合(EU)が踏み出した環境規制の緩和は、単なる場当たり的な危機対応ではない。背景にあるのは、第2次トランプ政権による揺さぶり、クリーン技術を席巻する中国、そして域内の政治的・経済的分断という三重の構造的圧力である。欧州は今、グリーン政策を「環境政策」から国家主導の「産業・安全保障政策」へと捉え直そうとしている。 

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