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日米関係, 経済安全保障, 海洋, ナラティブ, シンクタンク

日米戦略投資からの産業活性化—高市政権が直面する外交課題

2025年10月21日、自由民主党総裁の高市早苗氏が総理大臣に就任し、新内閣が発足した。高市政権が最初に直面する最重要イベントは、米国のトランプ大統領の来日になる。今後の日米外交においては、両国が合意した戦略的投資イニシアティブの確実な履行が不可欠な要素となった。米国に対する総額5500億ドルの投資枠組みの内容を整理したうえ、「海洋」、「宇宙」などの視点から日本の経済・産業活性化につなげる端緒を探る。

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  • 近年、地球温暖化対策への取組みにおいて温室効果ガス(GHG)排出量を正味でゼロにする「ネットゼロ」を目指す動きが広がっている。政府だけではなく地方自治体、企業なども、自主的に設定したネットゼロ目標の目標達成に動き始めている。ネットゼロではGHG排出量を可能な限り削減する一方、削減が困難な排出量については大気中からCO2を除去することで、排出量と除去量を均衡させる。GHG排出量の削減だけではなくCO2除去も重要なため、除去に関連する取組みや技術への関心が高まって来ている。こうした中、EU では2024年4月に排出枠の取引を活用して除去の導入を支援する制度が、欧州議会において正式に採択された。今後、多方面に影響を及ぼす可能性もある。

  • グローバルに展開する日本企業にとって、欧州議会の右傾化は、自国優先の保護主義への対応で負担が増すリスクがある。一方で、環境重視から経済重視へのシフトや対中の経済関係の再評価による規制強化など、漁夫の利を得られるチャンスもある。M&Aを含む企業の投資計画やポートフォリオの再構築を考える上で、今回の欧州議会選挙の結果が経営判断の分水嶺となるかもしれない。

  • 日本で少子化が進んでいる。厚生労働省によると、2023年の出生数は75万8631人(※1)で統計開始以来最も少なく、近く公表される合計特殊出生率は過去最低を更新する可能性がある。少子化は労働市場にどのように影響するのか。高校と大学を卒業して就職する新社会人に着目し、独自推計したところ2030年半ばから急減する見通しだ。こうした近い将来直面する課題に対処する費用を誰がどう担うか利害調整の難しさは、新たに創設する「子ども・子育て支援金」の議論からも見て取れる。制度のあるべき理想と現実を抑えつつ、社会保障にかかわる負担の在り方を考えてみたい。

  • 中国だけでなく、欧米諸国においても経済活動に対する国家の介入が強まる中、米国は独自の方法で外国企業による対米投資を審査している。特に米中間の先端技術獲得競争を念頭に置いたこの審査は、日本企業も対象となる可能性がある。本稿では、米国への投資を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)に焦点を当てる。対米投資審査における安全保障の定義は拡大しており、その時々の国際情勢や米国内の政治環境によって法の解釈や審査の適用範囲が異なることを強調したい。

  • 2024年は世界的な選挙イヤーだ。各国で重要な選挙が目白押しで、11月には米国大統領選も控える。生成AI登場後の選挙では、ディープフェイクの拡散を止めることができず、対応が急務となっている。1月に行われた台湾総統選では、多くの有権者が外国からの発信を含む大量の偽コンテンツを目にした。AI市場が活況な日本でも、民主主義の柱である選挙の信頼性を守ることは極めて重要となる。欧州はプラットフォーム事業者などに対して厳しい規制を課すが、日本では法規制(ハードロー)による対応は馴染みにくい。AI技術の選挙への悪用を防ぐために締結された技術協定「ミュンヘン・アコード」を参照し、大手IT企業の連携による研究開発などが求められると考える。

  • 米中の覇権争いやウクライナ戦争など地政学的緊張が高まる中、「グローバルサウス」の重要性が高まっている。経済的な理由だけでなく、経済安全保障の観点からも日本には官民を通じたグローバルサウス諸国との連携が求められる。本稿では、日・ASEAN関係に焦点を当てる。ASEANは日本企業にとって単なる安い労働力や労働集約型の製造拠点から、グローバル・バリューチェーンの要へと変化してきた。そしてこれからは、互いの課題を解決するために「共創」という付き合い方があることを示したい。

  • バブル全盛期以降の日経平均株価最高値更新、大手企業の賃上げなどのニュースが相次いでいる。こうした中、本調査では、ビジネスパーソンが日本経済および日本企業について「競争力が低い」と認識していることが明らかとなった。競争力強化に向けて重要な政策・施策のトップには「技術開発やイノベーションへの投資」「デジタル化、DXの推進」が挙がる。経済成長のために重要な技術としてはAI、次世代エネルギー・環境エネルギーの回答率が特に高い。日本経済・日本企業の競争力を向上させるためには、これらの新技術の開発や活用などを手段とした変革(DX、GX)を進めることは必須といえる。しかし、ビジネスパーソンは自身の勤務先企業を保守的と認識していることもわかった。

  • いよいよ2024年4月を迎えた。物流業では労働時間の上限規制が設けられる「2024年問題」が喫緊の課題である。トラックドライバーの人数減少や高齢化も進んでおり、何も手を打たないままでは輸送能力が大幅に不足する物流危機に直面する。課題解決のためには物流改革が必須となり、政府も政策パッケージを打ち出し法整備や規制などの対策を進める。物量が多いのはB2B物流であること、運送業は多重下請け構造となっており中小零細企業は元請企業の意向に左右されることから、抜本的な改革のカギを握るのはB2B物流の主要なステークホルダーである大手運送業や荷主といえる。大手企業には、デジタル技術を活用した業務改革や、将来的なフィジカルインターネットの実現に取り組むことが求められる。その際、物流テックを担うスタートアップとの連携も焦点の一つとなるだろう。

  • 米国の2024年大統領選挙に向けて、トランプ前大統領が共和党候補者指名に必要な代議員数を確保した。2020年に続き、バイデン大統領との一騎打ちになることは確定的となり、「ほぼトラ(ほぼトランプ氏が勝ちそう)」という論調が勢いづいている。トランプ氏が再選されれば、産業、エネルギー、外交など幅広い領域で急激に政策が転換されるため、日本企業は備えが求められるだろう。トランプ氏が選挙を制した場合、新政権に影響を与える保守派の動き「Project 2025」とシンクタンク「America First Policy Institute」について解説する。

  • インターネット上の住所に相当する「.com」「.net」などのドメイン名は従来、国際的な団体によって中央集権的に管理されてきた。しかし、ブロックチェーン(分散型台帳)を取り入れるWeb3が発展し、個人や法人がドメイン名を好きな名前(文字列)で登録しやすくなった。一元的に管理されないWeb3空間が広がるにつれて、異なるネット規格で同じ文字列のドメイン名が登録され、重複してしまうという問題は多発する恐れがある。放置すれば通信障害や誤送金の危険性は高まるだろう。Web3時代のネット社会が安心感を持って安全に発展するためには、事業者と利用者双方による「住所重複」リスクの周知・理解とガバナンスの構築が求められる。

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