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温室効果ガス(GHG)排出に価格を設定する「カーボンプライシング」を導入する動きが広がっている。従来は欧州連合(EU)などの先進国が主体だったが、近年は中国、韓国、南アフリカ共和国といった新興国、途上国にも波及。日本でも企業の自主的な温暖化対策を促す枠組みが設立され、そして、2023年からGXリーグに参加する企業による排出量取引制度(GX-ETS)の試行が開始された。当初は日本政府が運営する制度に由来する排出枠(クレジット)に限り利用が認められる見込みだったが、2024年4月に追加的に利用が認められるクレジットのガイドラインが発表された。今後の展開が注目される。

デジタル技術は、業態の壁を崩し、国境を易々と突破し、そして世界のあらゆる境界と既成概念を破壊しながらサイバー新世界を形成しつつある。ところが、これに対峙するための「ガバナンス論」はおろか、その礎となる「フィロソフィー」さえも暗中模索のさなかにある。今こそ、産官学ステークホルダーの英知を結集し、「デジタル政策」の確立を急ぐべきである――。谷脇 康彦 デジタル政策フォーラム 代表幹事と神薗 雅紀 デロイト トーマツ サイバー合同会社 執行役員による提言。(司会・構成=水野 博泰 DTFAインスティテュート 主席研究員)

2024年11月5日の米国大統領選挙まで残り4カ月を切った。バイデン大統領に対する高齢不安が広がる一方、銃撃に遭ったトランプ前大統領の勢いは増している。日本では「もしトラ(もしもトランプ氏が再び大統領になったら)」ではなく、「ほぼトラ(ほぼトランプ氏が勝ちそう)」、「確トラ(確実にトランプ氏が勝つ)」という論調が目立ってきた。選挙結果を見通すことは簡単ではないが、トランプ氏の勝敗に関わらず、トランプ主義的な主張が今後の米国政治に影響を与えることは間違いない。政策の不確実性を増す米国で、日本企業が取るべき備えについて整理する。

裏金事件に端を発した政権・与党への逆風は吹き止む様子が見られない。年内にも想定される衆院の解散・総選挙の焦点は自民、公明両党で過半数を確保できるかにある。過半数を獲得できなかった場合、政権与党を維持するために自民が日本維新の会を連立のパートナーとして組み入れると見る向きも少なくない。そこで本稿では、維新の政策を概括したうえで、仮に政権入りした際に政府の経済政策ひいては企業活動にどのような変化をもたらし得るのか考えたい。

経営環境の急速な変化、DX、生産性向上、脱炭素対応など課題が山積する中、多くの企業が競争優位の源泉となる技術やソリューションを持つスタートアップとの協業を通じたオープンイノベーションを目指している。政府も予算約1兆円の政策「スタートアップ育成5か年計画」を推進する。ところが、スタートアップとのオープンイノベーションの成功事例は必ずしも多くは聞かれず、実現に苦しむ企業も多いのが実情である。そこで、スタートアップとの協業において世界的に注目が高まっているベンチャークライアントモデルについて、従来手法との違いと革新性を分析する。

近年、地球温暖化対策への取組みにおいて温室効果ガス(GHG)排出量を正味でゼロにする「ネットゼロ」を目指す動きが広がっている。政府だけではなく地方自治体、企業なども、自主的に設定したネットゼロ目標の目標達成に動き始めている。ネットゼロではGHG排出量を可能な限り削減する一方、削減が困難な排出量については大気中からCO2を除去することで、排出量と除去量を均衡させる。GHG排出量の削減だけではなくCO2除去も重要なため、除去に関連する取組みや技術への関心が高まって来ている。こうした中、EU では2024年4月に排出枠の取引を活用して除去の導入を支援する制度が、欧州議会において正式に採択された。今後、多方面に影響を及ぼす可能性もある。

グローバルに展開する日本企業にとって、欧州議会の右傾化は、自国優先の保護主義への対応で負担が増すリスクがある。一方で、環境重視から経済重視へのシフトや対中の経済関係の再評価による規制強化など、漁夫の利を得られるチャンスもある。M&Aを含む企業の投資計画やポートフォリオの再構築を考える上で、今回の欧州議会選挙の結果が経営判断の分水嶺となるかもしれない。

日本で少子化が進んでいる。厚生労働省によると、2023年の出生数は75万8631人(※1)で統計開始以来最も少なく、近く公表される合計特殊出生率は過去最低を更新する可能性がある。少子化は労働市場にどのように影響するのか。高校と大学を卒業して就職する新社会人に着目し、独自推計したところ2030年半ばから急減する見通しだ。こうした近い将来直面する課題に対処する費用を誰がどう担うか利害調整の難しさは、新たに創設する「子ども・子育て支援金」の議論からも見て取れる。制度のあるべき理想と現実を抑えつつ、社会保障にかかわる負担の在り方を考えてみたい。

中国だけでなく、欧米諸国においても経済活動に対する国家の介入が強まる中、米国は独自の方法で外国企業による対米投資を審査している。特に米中間の先端技術獲得競争を念頭に置いたこの審査は、日本企業も対象となる可能性がある。本稿では、米国への投資を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)に焦点を当てる。対米投資審査における安全保障の定義は拡大しており、その時々の国際情勢や米国内の政治環境によって法の解釈や審査の適用範囲が異なることを強調したい。

2024年は世界的な選挙イヤーだ。各国で重要な選挙が目白押しで、11月には米国大統領選も控える。生成AI登場後の選挙では、ディープフェイクの拡散を止めることができず、対応が急務となっている。1月に行われた台湾総統選では、多くの有権者が外国からの発信を含む大量の偽コンテンツを目にした。AI市場が活況な日本でも、民主主義の柱である選挙の信頼性を守ることは極めて重要となる。欧州はプラットフォーム事業者などに対して厳しい規制を課すが、日本では法規制(ハードロー)による対応は馴染みにくい。AI技術の選挙への悪用を防ぐために締結された技術協定「ミュンヘン・アコード」を参照し、大手IT企業の連携による研究開発などが求められると考える。