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日米関係, 経済安全保障, 海洋, ナラティブ, シンクタンク

日米戦略投資からの産業活性化—高市政権が直面する外交課題

2025年10月21日、自由民主党総裁の高市早苗氏が総理大臣に就任し、新内閣が発足した。高市政権が最初に直面する最重要イベントは、米国のトランプ大統領の来日になる。今後の日米外交においては、両国が合意した戦略的投資イニシアティブの確実な履行が不可欠な要素となった。米国に対する総額5500億ドルの投資枠組みの内容を整理したうえ、「海洋」、「宇宙」などの視点から日本の経済・産業活性化につなげる端緒を探る。

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  • 石破茂首相は新内閣発足後、戦後最短のスピードで衆議院を解散し総選挙に打って出た。大敗しない限り、石破首相は続投するだろう。経済・財政政策は当面、岸田文雄前政権の路線を踏襲すると見られる。唯一、石破カラーを出すのが、地方創生を柱とした経済成長促進である。交付金を増額し、支援施策を拡充する「地方創生2.0」が目玉になる。ただし、石破首相はその具体策を示していない。地方創生2.0を見通す上でのポイントを過去の発言と近年のイノベーションなどから整理したい。

  • 世界の多くの国で少子化が進んでいる。2023年には日本の合計特殊出生率が統計開始以来、最も低くなり、フランスでも第二次大戦後で最低に近い水準に落ち込んだ。こうしたなか、合計特殊出生率が改善している国として注目を集めているのがハンガリーだ。同国の家族政策を10年以上リードしたKatalin Novak元大統領と、世界的に著名な人口減少の研究者であるStephen J. Shaw氏を有限責任監査法人トーマツが招き、世界が直面する少子化と人口減少、そして日本の未来を議論した。

  • 日本全体で進行中の人口減少・少子化に対応して地域の発展を図るためには、俯瞰的な「人材の育成」と「人材のシェア」の観点を持って地域づくりを進める必要がある。

  • 各国が温暖化対策を実施する際、国際競争力への影響が問題となる。ある国が厳しい温暖化対策を実施すると、産業の国際競争力が損なわれる懸念がある。同等の対策が他国で講じられていなければ、その国の輸出品が産業競争の面で相対的に不利になるからである。このような懸念に対応するために採られている様々な措置の一つが炭素国境調整措置(CBAM)である。具体的には、輸入品製造時の温室効果ガス(GHG)排出を対象とした負担を通関の際に求め、競争上の不公平是正を図るものである。EUで2023年10月に施行されたのに続き、英国が導入を決めた。さらに豪州でも、産業分野へのGHG排出の総量規制導入を受けてCBAM導入が検討されている。GHG排出を規制していない米国でも、CBAM導入の動きが議会中心に活発化し、2024年7月、連邦下院に民主、共和超党派での法案、PROVE IT Actが提案された。2023年8月に上院で提案された法案に修正を加え、改めて下院に提案されたものである。成立するかどうかは読めない部分も多いが、11月の大統領選と連邦議会選の結果次第では、議論が進展する可能性もある。一方でCBAMについては、自由貿易を原則とする世界貿易機関(WTO)のルールとの整合性に関する懸念が残っており、具体的な実施に向けた課題は多い。

  • 社会のデジタル化が急速に進む中、世界各国で選挙におけるインターネット投票の実現を模索する動きがみられる。日本でも導入を求める声があり、政府や各政党で議論が行われている。民主主義の根幹である選挙において、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というデジタル庁が掲げるミッションをどのように実現するのか。河野太郎デジタル大臣にインタビューし、日本でのネット投票の課題やこれからの展望について聞いた。その中で河野デジタル大臣は、今後予定されている参院選での一部導入に意欲を示した。

  • 温室効果ガス(GHG)排出に価格を設定する「カーボンプライシング」を導入する動きが広がっている。従来は欧州連合(EU)などの先進国が主体だったが、近年は中国、韓国、南アフリカ共和国といった新興国、途上国にも波及。日本でも企業の自主的な温暖化対策を促す枠組みが設立され、そして、2023年からGXリーグに参加する企業による排出量取引制度(GX-ETS)の試行が開始された。当初は日本政府が運営する制度に由来する排出枠(クレジット)に限り利用が認められる見込みだったが、2024年4月に追加的に利用が認められるクレジットのガイドラインが発表された。今後の展開が注目される。

  • デジタル技術は、業態の壁を崩し、国境を易々と突破し、そして世界のあらゆる境界と既成概念を破壊しながらサイバー新世界を形成しつつある。ところが、これに対峙するための「ガバナンス論」はおろか、その礎となる「フィロソフィー」さえも暗中模索のさなかにある。今こそ、産官学ステークホルダーの英知を結集し、「デジタル政策」の確立を急ぐべきである――。谷脇 康彦 デジタル政策フォーラム 代表幹事と神薗 雅紀 デロイト トーマツ サイバー合同会社 執行役員による提言。(司会・構成=水野 博泰 DTFAインスティテュート 主席研究員)

  • 2024年11月5日の米国大統領選挙まで残り4カ月を切った。バイデン大統領に対する高齢不安が広がる一方、銃撃に遭ったトランプ前大統領の勢いは増している。日本では「もしトラ(もしもトランプ氏が再び大統領になったら)」ではなく、「ほぼトラ(ほぼトランプ氏が勝ちそう)」、「確トラ(確実にトランプ氏が勝つ)」という論調が目立ってきた。選挙結果を見通すことは簡単ではないが、トランプ氏の勝敗に関わらず、トランプ主義的な主張が今後の米国政治に影響を与えることは間違いない。政策の不確実性を増す米国で、日本企業が取るべき備えについて整理する。

  • 裏金事件に端を発した政権・与党への逆風は吹き止む様子が見られない。年内にも想定される衆院の解散・総選挙の焦点は自民、公明両党で過半数を確保できるかにある。過半数を獲得できなかった場合、政権与党を維持するために自民が日本維新の会を連立のパートナーとして組み入れると見る向きも少なくない。そこで本稿では、維新の政策を概括したうえで、仮に政権入りした際に政府の経済政策ひいては企業活動にどのような変化をもたらし得るのか考えたい。

  • 経営環境の急速な変化、DX、生産性向上、脱炭素対応など課題が山積する中、多くの企業が競争優位の源泉となる技術やソリューションを持つスタートアップとの協業を通じたオープンイノベーションを目指している。政府も予算約1兆円の政策「スタートアップ育成5か年計画」を推進する。ところが、スタートアップとのオープンイノベーションの成功事例は必ずしも多くは聞かれず、実現に苦しむ企業も多いのが実情である。そこで、スタートアップとの協業において世界的に注目が高まっているベンチャークライアントモデルについて、従来手法との違いと革新性を分析する。

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