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日米関係, 経済安全保障, 海洋, ナラティブ, シンクタンク

日米戦略投資からの産業活性化—高市政権が直面する外交課題

2025年10月21日、自由民主党総裁の高市早苗氏が総理大臣に就任し、新内閣が発足した。高市政権が最初に直面する最重要イベントは、米国のトランプ大統領の来日になる。今後の日米外交においては、両国が合意した戦略的投資イニシアティブの確実な履行が不可欠な要素となった。米国に対する総額5500億ドルの投資枠組みの内容を整理したうえ、「海洋」、「宇宙」などの視点から日本の経済・産業活性化につなげる端緒を探る。

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  • 2023年4月に、政府は産業データ連携のイニシアティブ「ウラノス・エコシステム」の立ち上げを宣言した。これに伴い、車載バッテリーについて、温室効果ガス排出量を明示するカーボンフットプリントのデータを共有するプラットフォームが2024年5月に始動した。背景には欧州電池規則への対応があり、欧州ではGAIA-Xに関連した自動車業界のデータスペースCatena-Xが推進されている。経団連は10月に産業データスペース構築の促進に向けた提言を発表し、注目度が高まっている。規制対応に留まらない経済的なメリット創出、企業の対応力強化、国際協調など、議論すべき点は多い。2025年以降、官民連携によって産業の競争力強化に貢献するデータスペースの社会実装が進むことを期待する。

  • 世界的なカーボンニュートラルの潮流とエネルギー安全保障上の議論を踏まえて、日本政府は2023年、「GX実現に向けた基本方針」を取りまとめた。10年間で官民計150兆円超のGX関連投資を生み出すことが柱。20兆円の政府支援をテコに、民間部門を中心に130億円規模の投資誘発を目指す(図表1、2)。 しかしながら、政府支援以外のGX投資資金を民間企業がどのように工面するのかという議論はこれまで、ほとんど行われていない。政策金利の先行きが不透明な中、企業が巨額の資金調達をすれば利払いなどのリスクが大きくなる可能性がある。企業がGX投資を控えれば、150兆円の目標達成は苦しくなる。 本レポートでは、海外での内部留保を国内還流させれば税制面で優遇する「レパトリ減税」を政府が使途限定付きで導入した場合、日本企業が海外で積み上がった留保資金をGX投資に振り向ける可能性があるか考察する。その一環として2017年12月に米トランプ政権下で成立した大規模減税政策「Tax Cuts and Jobs Act(TCJA)」がどのような経済効果を生み出したかについても検証を試みる。

  • 個人消費

    日本政府は物価と賃金との好循環を通じたデフレからの完全脱却を政策目標としている。企業にとっても2021年末から続く物価上昇に消費者がどのように適応しようとしているのかを的確に捉えることは重要である。そこで本稿では四半期ごとのシリーズとして、公的統計や消費動向を手掛かりに、小売・外食をはじめとしたB2C企業へのインプリケーションを示す。 現状、消費者は値上げ疲れの様相を深め、物価に応じて賃金も上がるとの確信も持てていない。年金生活者を筆頭に、日本の総世帯の約60%は物価上昇の影響を強く受けている。そのため、消費者の価格選好性がB2C企業の事業戦略を左右する形となっている。原材料費、人件費、電気代、物流費をはじめとするコストを製品価格に転嫁しにくい状況下で今後、価格競争が加速する懸念もある。 さらにリスク要因として、インバウンドをターゲットとする宿泊や飲食などの産業が、高収益をテコに人手を引きつければ、労働集約的な構造を脱却できない企業の収益機会はさらに奪われかねない。このように外部環境が変革を求める中でB2C企業は短期では、コスト競争力のさらなる強化を通じた資本集約と、価格コントロール力の構築を進める必要がある。中長期では「客数×客単価型」ビジネスからの転換が求められよう。

  • 10月27日に投開票された衆院選では、自民、公明両党の与党で過半数(233議席)を確保できるかが最大の焦点だったが、与党は64議席を減らし過半数に届かなかった。石破茂首相(自民党総裁)が掲げた「勝敗ライン」に達することができず、政局が流動化する事態も想定される。本レポートでは、石破政権を待ち受ける政局シナリオを整理したうえで、経済政策運営への影響を見通したい。

  • 政府の「スタートアップ育成5か年計画」も追い風になり、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に取り組む事業会社は増加している。しかし、新規事業創出や新技術獲得という目的の達成には難航しているケースが多い。海外で先行している企業は、経営環境の変化に対応した事業ポートフォリオの再編、最新技術の取り込み、新たな成長事業の確立などに際してスタートアップと連携し、持続的な成長に繋げている。米国の大手テック企業に限らず、伝統的な業種でもこうした成功例が多い。海外との比較を踏まえ、日本企業に、①大胆な規模拡大、②スタートアップとの相互利益獲得、③グローバル化を提言する。これらの戦略が好循環を生むことで、スタートアップとの協業によるオープンイノベーションが加速すると考える。

  • 石破茂首相は新内閣発足後、戦後最短のスピードで衆議院を解散し総選挙に打って出た。大敗しない限り、石破首相は続投するだろう。経済・財政政策は当面、岸田文雄前政権の路線を踏襲すると見られる。唯一、石破カラーを出すのが、地方創生を柱とした経済成長促進である。交付金を増額し、支援施策を拡充する「地方創生2.0」が目玉になる。ただし、石破首相はその具体策を示していない。地方創生2.0を見通す上でのポイントを過去の発言と近年のイノベーションなどから整理したい。

  • 世界の多くの国で少子化が進んでいる。2023年には日本の合計特殊出生率が統計開始以来、最も低くなり、フランスでも第二次大戦後で最低に近い水準に落ち込んだ。こうしたなか、合計特殊出生率が改善している国として注目を集めているのがハンガリーだ。同国の家族政策を10年以上リードしたKatalin Novak元大統領と、世界的に著名な人口減少の研究者であるStephen J. Shaw氏を有限責任監査法人トーマツが招き、世界が直面する少子化と人口減少、そして日本の未来を議論した。

  • 日本全体で進行中の人口減少・少子化に対応して地域の発展を図るためには、俯瞰的な「人材の育成」と「人材のシェア」の観点を持って地域づくりを進める必要がある。

  • 各国が温暖化対策を実施する際、国際競争力への影響が問題となる。ある国が厳しい温暖化対策を実施すると、産業の国際競争力が損なわれる懸念がある。同等の対策が他国で講じられていなければ、その国の輸出品が産業競争の面で相対的に不利になるからである。このような懸念に対応するために採られている様々な措置の一つが炭素国境調整措置(CBAM)である。具体的には、輸入品製造時の温室効果ガス(GHG)排出を対象とした負担を通関の際に求め、競争上の不公平是正を図るものである。EUで2023年10月に施行されたのに続き、英国が導入を決めた。さらに豪州でも、産業分野へのGHG排出の総量規制導入を受けてCBAM導入が検討されている。GHG排出を規制していない米国でも、CBAM導入の動きが議会中心に活発化し、2024年7月、連邦下院に民主、共和超党派での法案、PROVE IT Actが提案された。2023年8月に上院で提案された法案に修正を加え、改めて下院に提案されたものである。成立するかどうかは読めない部分も多いが、11月の大統領選と連邦議会選の結果次第では、議論が進展する可能性もある。一方でCBAMについては、自由貿易を原則とする世界貿易機関(WTO)のルールとの整合性に関する懸念が残っており、具体的な実施に向けた課題は多い。

  • 社会のデジタル化が急速に進む中、世界各国で選挙におけるインターネット投票の実現を模索する動きがみられる。日本でも導入を求める声があり、政府や各政党で議論が行われている。民主主義の根幹である選挙において、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というデジタル庁が掲げるミッションをどのように実現するのか。河野太郎デジタル大臣にインタビューし、日本でのネット投票の課題やこれからの展望について聞いた。その中で河野デジタル大臣は、今後予定されている参院選での一部導入に意欲を示した。