グローバルウォッチ

エネルギー安全保障は、もはや化石燃料や中東情勢にとどまらない。デジタル化や脱炭素化の急激な進展により、リチウムやレアアースなどの重要鉱物が新たな戦略的資源としてその存在感を高めている。特に近年、中国など資源保有国による輸出管理の強化や自国産業育成のための重要鉱物の囲い込みなどによって供給リスクが顕在化している。こうした中、日本を含む西側諸国は鉱物資源の安定供給を共通の最優先課題としており、連携強化の機運が高まっている。今、日本に求められるのは、高度な技術力と国際的な信頼を活かしながら、価値観を共有する国々との連携を主導し、資源保有国との戦略的パートナーシップを構築していくことだろう。

気候変動により氷が溶けだした北極圏は、新たな航路と資源をめぐる大国同士の競争の場となってきた。ロシアや中国、米国、欧州諸国が新たな海上ルートと鉱物資源の確保を目指し、北極圏の地政学的価値は急速に高まっている。その一方で、北極圏におけるガバナンスの欠如、インフラ未整備や砕氷船の不足などといった構造的課題も顕在化している。新たな国際秩序の構築が進む北極圏で、海洋国家・日本も「価値観を共有する国との連携」「民間企業との連携」を強化し、積極的な関与を進めていくべきだろう。

第2次トランプ政権による米国の政策変更は、欧州に大きな動揺をもたらしている。現在、米欧関係は、貿易、防衛・安全保障、ウクライナ問題、選挙介入、デジタル規制、気候変動といった多岐にわたる領域で摩擦が同時多発的に生じ、かつてない緊張状態にある。こうした衝突は一過性のものではなく、大西洋の絆の性質そのものを根本から変容させるリスクを孕んでいる。欧州は、トランプ2.0にどう向き合うのか。最大の焦点は、最も強力な報復措置とされる反威圧措置(ACI)を行使するかどうかであり、欧州の本気度を内外に示す試金石となる。