グローバルウォッチ

経済安全保障がグローバルビジネスの最重要課題となる中、欧州連合(EU)では、米国に事実上独占されている決済インフラが政治的な武器(レバレッジ)になりかねないという強い危機感から、過度な対米依存から脱却し、「金融・決済主権」を確立する動きが加速している。こうした地政学リスクに対処すべく、欧州はデジタルユーロの導入や独自の決済網の構築、金融市場の統合など、自律的なインフラ整備を進めている。本稿では、EUの決済環境とEUが直面しているリスクを概観し、主権確立に向けた議論の動向を紐解く。

2026年2月、米国・イランによるイラン攻撃に伴う「ホルムズ・ショック」が世界を襲った。エネルギー価格の高騰は、欧州のグリーン政策を直撃し、エネルギー安全保障が最優先課題へと浮上した。しかし、欧州連合(EU)が踏み出した環境規制の緩和は、単なる場当たり的な危機対応ではない。背景にあるのは、第2次トランプ政権による揺さぶり、クリーン技術を席巻する中国、そして域内の政治的・経済的分断という三重の構造的圧力である。欧州は今、グリーン政策を「環境政策」から国家主導の「産業・安全保障政策」へと捉え直そうとしている。

膠着化するウクライナ戦争と米国のトランプ2.0がもたらす同盟政策の不確実性―。この2つのショックに直面する欧州は今、戦後最大の安全保障政策の転換期にある。欧州連合(EU)は、「軍事的」アクターとして歩み始め、自らの役割を拡大している。防衛を産業政策の中核に据え、欧州の統合を進めるべく、総額8,000億ユーロ規模の防衛投資計画を始動させた。しかしその実現には、加盟国間の利害対立や市場の分断、そして米国との摩擦という構造的課題が立ちはだかる。米国の安全保障上の関与が段階的に後退していくシナリオが現実味を帯びる中、欧州は自律的な防衛基盤を構築し、対等なパートナーとして大西洋同盟を再定義できるかどうかが問われている。