はじめに
欧州中央銀行(ECB)の前総裁のマリオ・ドラギ氏は、2024年の「EUの競争力の未来」に関する報告書(通称、ドラギ・レポート)で、欧州はインターネット主導のデジタル革命に大きく出遅れ、将来の成長を牽引する新興技術の分野において優位性を確保できていないと指摘した。実際、世界の主要テクノロジー企業トップ50に名を連ねる欧州企業はわずか4社にとどまり、グローバルなデジタルプラットフォームにおける欧州の存在感は極めて希薄である(※1)。
欧州委員会が、こうした状況に危機感を強める理由は、大きく2つある。
第一に、新興技術を中心としたイノベーションの遅れが、EUの競争力低下に直結している点である。
ドラギ・レポートは、2000年以降に拡大した欧米間の生産性格差の主因を、欧州がデジタル技術を取り込めなかったことに求めている。欧州は、新たなハイテク企業の創出と経済全体へのデジタル技術の普及の両面において、デジタル革命の波に乗り遅れた。そのため、域内のデジタル産業を育成し、他分野への技術実装を加速させて生産性格差を縮小することが、欧州経済の持続的成長の必須条件となっている。
第二に、テクノロジー面での劣位が、米国や東アジア(とりわけ中国)への構造的な技術依存を生んでいる点である。
欧州委員会によれば、EUは主要なデジタル製品、サービス、インフラ、知的財産の80%以上を域外に依存しているとされている(※2)。半導体でも、欧米は生産の75%以上をアジア諸国に依存する(※3)。欧州委員会が実施したパブリックコンサルテーション(OPC)では、エンドユーザーの回答者の約40%が過去12-14ヶ月の間に半導体不足を経験したと回答し、過半数が今後2-3年の供給途絶のリスクを念頭に置いている。域外依存がもたらす半導体供給途絶リスクは、欧州の産業において現実に直面する問題となっている(※4)。
この構図は、高度な大規模言語モデル(LLM)の分野でも変わらない。2026年5月時点で、世界の利用実績トップ50モデルのうち48を米国製または中国製が占めた。唯一ランクインした欧州発のモデルは、フランスのスタートアップ企業が開発したものだが、利用実績で50位以内に入る一方、ベンチマークによる性能評価では上位50位に届いていない(※5)。
欧州委員会は、この高度な域外依存こそが戦略的脆弱性の源泉であると認識している。地政学リスクが高まるなか、現在および将来の基盤となる重要セクターを域外に委ね続けることは容認し難く、依存からの脱却が経済力、安全保障、そして長期的な競争力確保に不可欠である、というのが欧州委員会の立場だ。
こうした危機感は、米国政府が高度なサイバーセキュリティ機能を理由に、自国の最新AIモデルに対し制限を課したことでさらに高まった。加えて、中国政府も自国の最先端モデルに対する外国からのアクセス規制の導入を検討していると報じられている。基盤技術へのアクセスが政治的判断によって断たれうることが、具体的な形で示された。
こうした背景のもと、欧州委員会は2025年4月に「AI大陸行動計画(AI Continent Action Plan)」(※6)を提案。続く2026年6月3日には、デジタル分野の自律性強化と米中などへの技術依存低減を目的とする「技術主権パッケージ(Technology sovereignty package)」(※7)を公表した。同パッケージは、半導体バリューチェーン、AI・クラウドを支える演算能力(データセンター、AIファクトリーなどを含む)の発展を促すとともに、域内のビジネス環境を新興テクノロジー企業に適した形へ整備することを目指すものである。
特筆すべきは、同パッケージが域外企業のEU市場参入障壁を引き上げ、欧州独自のソリューションを優遇する側面を併せ持っている点だ。グローバルに事業を展開する企業にとって、欧州の技術主権確保に向けた政策動向は、今後注視すべき論点となる。
技術主権パッケージ――何が提案されているのか
EUにおける技術主権推進の中核を担う「技術主権パッケージ」は、2本の法案と2本の戦略文書で構成される(※各内容は後述)。同パッケージは、EU域内のデジタル技術バリューチェーンの発展を促すため、産業政策手段の導入を進めるものである。具体的には、①重点セクターに的を絞った資金支援、②公共調達における域内企業の優遇、③域外企業の参入障壁引き上げ、などが含まれる。あわせて欧州委員会は、関連するセクターに対する規制負担を軽減することにより、欧州のイノベーションを促進することを提案している。
1「半導体法案2.0(Chips Act 2.0)」(※8)
「半導体法案2.0(Chips Act 2.0)」は、欧州における半導体製造基盤の強化を目指す新たな法的な枠組みである。
現在、EUが世界の半導体生産に占めるシェアは10%未満にとどまる。特に、EU域内には先端半導体を製造できるファウンドリ(受託製造)能力が存在せず、設計は米国に、製造能力は台湾および韓国に大きく依存している。その結果、EU域内での生産は、EU全体の半導体消費量の22%に過ぎない(※9)。
EUは2003年、域内半導体エコシステムの強化、サプライチェーンレジリエンス向上、域外依存の低減、および2030年までに世界市場シェアの20%へ引き上げることを目的として、「半導体法(Chips Act)」を施行していた。欧州委員会は、同法が520億ユーロを超える官民投資を動員したと総括しているが、20%目標の達成は現実的には見通せておらず、域外依存も解消されていない。今回提案された「Chips Act 2.0」は現行のChips Act 1.0を見直し、これに置き換わる新たな規則案として位置づけられている。
注目すべきは、欧州委員会が提案理由書において、オランダの半導体企業をめぐる事案を名指しで挙げている点である。同事案は、米国の輸出管理規則の変更が、オランダ政府の介入と中国の報復を招き、オランダを含む欧州自動車産業を混乱させた。これは、米中の戦略的競争の狭間に置かれた欧州の脆弱性を象徴する出来事であった。
ここから読み取れるのは、半導体が地政学的レバレッジ(影響力)の源泉となる以上、自前の設計・製造能力を持たない国・地域は、他国からの供給制限や条件に従属せざるを得ないという強い危機感である。欧州委員会が念頭に置くリスクは中国にとどまらず、米国に依存するという構造そのものが、同盟国との関係においてもリスクになり得るという認識が、「技術主権」という政策枠組みの背景に存在する。
こうした問題意識から、Chips Act 2.0は施策の重心を大きく移す。供給サイドの支援が中心であったChips Act 1.0に対し、2.0では需要サイドの施策に重点を置く。例えば、以下の提案がある。
- 需要創出アプローチ:新たな半導体製品と川下のユーザー産業のニーズを結びつける「需要促進措置(Demand accelerators)」の導入。半導体関連製品の要件および技術仕様に関する協議、共同設計の支援、協働プラットフォームの構築、パイロットプロジェクトや設計パートナーシップの促進等が含まれる。また重要分野の公共調達における「EU付加価値」基準の適用や、イノベーション調達の拡大を進める
- クラウド、AI政策との連動:クラウド・AI開発法案(CADA)(※下記詳述)が掲げるデータセンター容量の拡大やAI専用チップを備えた大規模データセンター「AIギガファクトリー」構想と連動させる。域内に強固な需要を創出し、それを通じて域内の供給力を強化するという相互補完的なアプローチを志向する
供給インフラの強化:許認可期間を最長12か月に短縮するほか、支援対象となる「域内初(first-of-a-kind)」プロジェクトの範囲をバリューチェーン全体に拡大する(※10)。また、第三国のプロジェクトも対象に含めてEUに資金を呼び込む「戦略プロジェクト」の認定や、各地域が自らの投資計画をEUの戦略的優先事項と整合させることを狙う、地域政策と連動した「半導体エクセレンス地域」ラベルの創設
ただし、資金面では、同法は研究資金助成プログラムである「Horizon Europe」など既存の資金調達スキームに依拠しており、大規模な目玉となるような資金拠出額などはまだ提示されていない。欧州委員会は、技術主権のアジェンダなどに資金を提供するための「欧州競争力基金(European Competitiveness Fund: ECF)」の設立を提案しており、現在理事会で審議中の2028~2034年の新たな多年度財政枠組み(MFF)から拠出される見込みだが、予算総額や配分をめぐって加盟国間での対立が生じており、2026年秋以降の審議の行方に注目が集まる。
2「クラウド・AI開発法案(Cloud and AI Development Act: CADA)」(※11)
クラウド・AI開発法案(CADA)は、EU域内の計算資源が量的に不足し、かつ地理的に偏在していることに加え、域外事業者が供給するクラウド・AIへの依存に伴うリスクに対処するために以下の4点を目的として掲げている。
- 革新的かつ持続可能なクラウド・AI技術を通じ、EU域内で開発・展開される計算能力とAIの増強
- 持続可能で革新的な計算能力をEU全域に展開するための魅力的な条件を確保すること
- クラウド・AIのデータ主権および運用継続性に関する懸念に対処すること
- とりわけ公共部門において、クラウドサービスの供給の強靭性を高めること
そのため、主として以下を提案している。
第一に、供給側の技術基盤強化である。「クラウド・AIリーダーシップ・イニシアティブ」を設け、研究・開発・イノベーション(R&D&I)を支援する。その重点は、次の8つの「グランドチャレンジ」として整理されている。①EUデータセンターの環境持続可能性・性能・セキュリティ、②クラウドスタック(クラウド基盤を構築・運用管理するためのオープンソースソフトウェア)、③フロンティアAI、④フィジカルAI、⑤産業AI、⑥協調型欧州産業モデル、⑦AIエージェント・プラットフォーム、⑧公共部門AI(医療、行政、法務・危機管理など)
このうち⑥は、参加者間で、ビジネス上機微なデータを開示することなく、欧州の産業規模での協働を可能とすることにより、戦略セクター向けの協調型欧州産業AIモデルシステムを開発するものである。⑧は、医療、行政、法務・危機管理等の重要領域を対象に、公共部門の高品質データに基づくモデルを開発する。なお、⑤と⑥にはいずれも防衛が対象セクターとして明記されている点も注目される。
第二に、データセンターの容量拡大である。今後5~7年でEUの容量を3倍に拡大し、2035年までに必要容量を確保することを目指す。同時に、加盟国間の地理的バランスにも配慮する。
具体的な手段として、加盟国に「データセンター加速区域」の指定を義務づけ、同区域内では許認可手続きを簡素化・迅速化する。また欧州委員会が「データセンター戦略プロジェクト」を指定し、欧州競争力基金(ECF)の要件を満たす場合は「競争力シール」を付与する仕組みを設ける。
第三に、主権フレームワーク(sovereignty framework)と公共調達の厳格化である。
EU域内のクラウド市場では、EU系事業者のシェアが2017年の29%から2022年に15%へ低下し、現在は域外の三大ハイパースケーラーが欧州クラウド市場の70%以上を支配する。大手既存事業者は、データへのアクセスや移転を義務づける域外適用効力を持つ第三国法の管轄下にあり、これらはEUの基本権・データ保護の枠組みと衝突する恐れがある。さらに、第三国のアクターによる一方的な決定がサービス提供を途絶させうるという運用継続性のリスクにも、欧州の利用者は直面している。
欧州委員会は、既存のEU法には、「何が信頼できるクラウドサービスか」を統一的に定義する枠組みが存在しないと指摘。また、一部加盟国が独自に国内主権サービスの認定制度を整備しつつあるが、こうした各国措置は域内市場の分断を招き、自律性・主権という共通目標をかえって損なうおそれがあることから、クラウド・AI開発法(CADA)によって、この空白を埋めるEU単一の主権フレームワークを構築しようとしている。
同法案は、加盟国およびEU機関に対し、自らの公的な活動を対象とした技術セクターにおける「主権リスク評価(sovereignty risk assessment)」の実施を義務付ける。評価は以下の2段階で行う。
- どの公的活動が公共秩序に寄与するかを特定する
- 特定された活動について必要な「EU保証レベル(Union assurance levels)」を決定する
対象範囲は、NIS2指令(加盟国全体のサイバーセキュリティ水準を高めるために策定した法的規制)に該当するセクター(エネルギー、運輸、金融、デジタルインフラなど)および国家安全保障、域内治安、国境管理、防衛、司法および法執行などの領域である。評価に際しては、少なくとも次の3点を考慮する。①処理されるデータの機微性、②第三国またはそこに設立された法人によるEU法上の違法なアクセスのリスクや公共秩序への影響、③サービス途絶の可能性とその影響。実施時期は発効から1年後とし、以後2年ごとに(必要な場合は随時)実施する。
注視したいのは、欧州委員会が強い統制権を持とうとしている点である。欧州委員会は、リスク評価の方法論や考慮要素などを定めるが、この評価には、防衛分野を含む最も重要な公的活動も含まれる。加盟国は評価結果を3か月以内に欧州委員会に報告する義務を負い、もし委員会が、加盟国の定めた保証レベルが不適切または公共秩序上の懸念に十分対応していないと判断した場合、実施法により必要な保証レベルを指定できる権限を持つ(※12)。
これに対応して、欧州委員会は4段階のEU保証レベルからなるEUクラウド主権フレームワークを提案する(図表1参照)。公的機関は、リスク評価で公共秩序への寄与が特定されなかった活動にはレベル1、特定された活動にはレベル2以上として承認されたサービスのみを調達できる。
図表1 4段階のEU保証レベル(例)(※13)
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証明方法は、レベル1が提供者による自己適合評価であるのに対し、レベル2以上は第三者監査機関による監査と肯定的意見を要する。判定は設立地の加盟国当局が行う。
同提案は、必ずしも域外事業者の完全排除を目的としておらず、EU子会社の実体化、支援業務の域内移管、EU市民の人員確保、ソースコード監査の受け入れといった構造改革を通じた上位レベルの認証経路を残している。つまり、域内優遇をうたいながらも実体的には主権性を基準とする条件付き市場アクセス制度であると評価できる。
3「EUオープンソース戦略(The EU Open Source Strategy)」(※14)
EUオープンソース戦略は、重要分野において域外のプロプライエタリ(商用・独自仕様)ソフトウェアへの過度な依存を低減し、オープンソースを「EUの技術主権」の核として位置づけることを目的としている。行政や民間部門において、欧州発のオープンソース技術の開発・展開・長期的な持続可能性を支援し、EUのデジタルインフラに対する管理権限と戦略的自律性を高めることを目指すものである。
この背景には、EUの資金が域外に流出し続けていることへの危機感がある。欧州委員会は、EU全体で年間2640億ユーロもの資金が、IT製品・サービスに支出されているにもかかわらず、その大半が域外の企業に支払われていることを指摘する。欧州委員会は、これを単なる市場の非効率ではなく、構造的な依存を生み出す根本的な要因であるとして、この巨額の資金を域内の代替製品(既存の欧州のオープンソース企業など)に振り向けるべきだと主張している。ヘンナ・ヴィルックネン欧州委員会上級副委員長(経済主権・安全保障・民主主義担当)によると、現在米国から輸入しているサービスのうち、欧州の代替製品に置き換え可能な領域は少なくとも100に上るという。
これを達成するために、同戦略は、研究開発から市場への普及、さらには重要システムの長期的な維持管理に至る「フル・ライフサイクル」をカバーする施策を打ち出している。例えば、行政機関自らがオープンソースの利用者となり、市場をけん引する。そのために、オープンソースを優先する公共調達ガイドラインの策定や、行政のデジタル投資において設計段階からの主権(sovereignty-by-design)を組み込む。他にも、EUの基準に合致したオープンソース製品のカタログの拡充、スタートアップの資金支援や重要なソフトウェアのセキュリティを長期的に担保する手段の創設などがある。
4「エネルギー分野におけるデジタル化およびAIに関する戦略的ロードマップ(The Strategic Roadmap for Digitalization and AI in Energy)」(※15)
欧州委員会は、真の技術主権は、電化(electrification)とクリーンエネルギーの統合を進める、デジタル化され相互接続されたエネルギーシステムの構築によって支えられていると位置づける。デジタルソリューションやAIツールを導入することでエネルギーシステムの各主体には具体的な恩恵がもたらされる。一般消費者にとっては、電力価格がより安価な時間帯へ自らの電力消費をシフトさせることが可能になる。産業界にとっては、エネルギーコストの削減、効率向上、生産プロセスの最適化に加え、価格シグナルへの機敏な対応や柔軟性市場への参加が容易になる。さらに、系統運用者、発電所、蓄電設備、および産業施設といったインフラを担う主体も、データ予測に基づいたより効率的で安定した運用を行えるようになる。
AI開発やデータセンターの急速な拡大は、エネルギー需要を大きく押し上げている。このため本ロードマップでは、AIが大量のエネルギーを消費する側面と、エネルギーシステムを最適化するツールとしての側面を一体の課題として扱っている。そのうえで、AIの最適化能力を活用して、すべての消費者に安全でクリーン、かつ競争力のあるエネルギーを届ける「デジタル化されたEUエネルギーシステム」を構築するための具体策を提示している。
技術主権パッケージに先行するAI支援策
クラウド・AI開発法案(CADA)は主として、域外事業者が提供するクラウド・AI基盤に伴う主権リスクの低減に主眼を置いている。しかし前述の通り、欧州が抱える根本的な課題は域外製AIへの過度な依存であり、欧州発の技術・サービスの性能が大きく後れを取っている点にある。すなわち、規制によって主権リスクを低減しようとしても、代替となる域内のAI基盤と技術がなければ、依存構造そのものは解消されない。
そのためEUは、CADAに先立ち、AIインフラおよびAI開発そのものへの支援に着手してきた。AI大陸行動計画(AI Continent Action Plan、2025年4月)は、資金枠組みであるInvestAIを通じて、EU域内のAI投資に2000億ユーロを動員することを掲げる。うち200億ユーロは「AIギガファクトリー」の基金に充てられる。InvestAI自体は、2025年2月のパリAI行動サミットでフォン・デア・ライエン委員長が発表したものである(※16)。
インフラ投資に加え、同計画は、欧州データ連合戦略を提案し、企業や公的機関によるデータアクセスの改善とデータ規制の簡素化を目指す。この背景には、スタートアップや企業がデータに容易にアクセスできる環境を整えれば、大規模言語モデル(LLM)の学習や市場ニーズに応じた業務を遂行できるAIエージェントの開発が促進されるという狙いがある。
加えて、欧州委員会は2025年10月に2つのAI戦略を提案している。
- Apply AI Strategy:医療・製薬、モビリティ、ロボティクス、製造、防衛・安全保障・宇宙、文化といった各セクターにおいて、欧州でのAIツールの導入拡大を目指すものである。現在AIを利用しているEU企業はわずか13.5%にとどまっており、この現状が将来の競争力を損なうだけでなく、域内産AIサービスの市場規模を狭める要因になっているという危機感が背景にある(※17)
- RAISE(Resource for AI Science in Europe):主に学術セクターを対象としたAI開発プロジェクトへのEU資金の提供を約束するものである。これにより、AI分野を支える科学的知見を前進させるとともに、将来の成長に不可欠な人的資本の育成を図るとしている(※18)
欧州での議論――なぜ難航しているのか
欧州委員会が提案する「技術主権」に対するEU加盟国の見方は、概して懐疑的である。とりわけ、主権リスク評価の仕組みやEUの各種プログラム間に生じている重複に対して懸念の声が上がっている。以下、政策の実現に向けて、EUが直面している構造的な課題を4つに分けて整理する。
第一に、規制緩和と産業政策をめぐるジレンマである。経済成長に不可欠な規制緩和と、技術主権のための産業政策(実質的な規制強化)との間に、方向性の矛盾が生じている。
ドラギ・レポートは、イノベーションを促しスタートアップやテック企業の成長を後押しするためには、EU経済の大幅な規制緩和が必要だと論じ、この主張はドイツや北欧の加盟国から強く支持されてきた。実際、欧州委員会は、「オムニバス・パッケージ」と呼ばれる12本の規制簡素化法案を提出し、大規模な規制緩和に乗り出している。
他方で、戦略的自律性に焦点を当てた技術主権の提案には、経済活動に対する新たな規制要件が数多く盛り込まれている。CADAはその典型で、加盟国などに主権リスク評価を義務付け、事業者には保証レベルの取得を求め、発注機関には調達先を制約する。簡素化を掲げながら、同時に新たな規制を積み増すという政策の方向性のねじれが指摘される所以である。
第二に、こうした状況下で、各国政府はCADAについて、政治的に最も機微な「自律性」と「主権」に関する規定の明確化を欧州委員会に求めている。内部議論では、加盟国から以下のような懸念が示されたという。
- 実行可能性:主権レベルを評価するための実行可能かつ比例的な枠組みと、既存法令および今後制定される法令との関係性の明確化を要求(ドイツを含む)
- 二重規制の回避:AI法、サイバーセキュリティ法、サイバーレジリエンス法、NIS2指令、データ法といった既存の法制度との重複や不整合を避ける必要性を強調(フランスを含む)
- 手続きの負担:手続きが過度に複雑化し、官僚主義的で高コストになるリスクを警戒
- 市場の分断リスク:リスク評価を各国政府の裁量に委ねることは、解釈の相違を生み、単一市場の分断を招きかねないと主張
これに対し、欧州委員会は、サービスの認定(どの製品・サービスがどの保証レベルを満たすかの判断)は、当該事業者が設立された加盟国の当局が調整し、承認されればEU全域で通用すると説明している。
しかし、この仕組みには構造的なパラドックスがある。米国の主要テック企業が欧州拠点を置くアイルランドやルクセンブルクが、主権評価において極めて重要な権限を握ることになるからだ。域外依存の低減を目的とする制度において、その判定を委ねられるのが域外企業の集積地となるため、審議過程で争点化する可能性が高い。
第三に、次期多年度財政枠組み(MFF)をめぐる加盟国間の利害対立である。EU予算の純拠出国(EUから受け取る資金より多く拠出している国)は、予算総額を抑制しつつ、農業への補助金や結束金(域内の地域格差是正を担うEUの主要投資政策)よりも、技術主権プログラムを含む防衛・競争力強化への支出を志向する。対して純受益国は、EU予算総額を増やしつつ、既存の補助金プログラムを維持することを望むことから、競争力関連プログラムに資金を積み増す政治的余地は狭まっている。
2026年7月下旬からの予算審議では、技術主権も例外なく、議論の俎上に載せられた。現在、競争力基金とHorizon Europeを合わせて、デジタル分野に充てうる予算は約700億ユーロである。これに対し、欧州委員会自身が見積もる投資需要は、半導体で約870億ユーロ、データセンターで約3000億ユーロ、エネルギー・インフラで約4000億ユーロであり、必要額には到底及ばない。技術主権パッケージの実現は、民間投資と次期MFFの決着に大きく委ねられており、実現可能性の見通しが立っていない状況だ。
さらに、民間資本の動員においても、欧米間には構造的な格差が存在する。米系VCファンドの総額は約9300億ユーロに達し、EUに所在するファンド(約1500億ユーロ)のおよそ6倍にあたる。IT分野への投資比率も米国(42%)がEU(31%)を上回る(※19)。
ECBは、この格差の背景には、投資家基盤の構成があると指摘する。米国のVCファンドは年金基金や財団からの参加が厚く、多額の資金と高いリスク許容度を提供できる。対する欧州ではこの層が薄く、欧州投資基金など政府系主体の参加によって部分的にしか埋め合わされていない。その結果、この格差は資金需要が最も大きくなるレイタ―ステージで拡大する。
さらに、EUは伝統的な産業基盤が強固であるため、VC資金がハイテク・高成長セクターに集中する度合いが米国より低い。またEU域内の越境投資の限定性も課題だ。ECBは、エストニアのように規模は小さいが高度に発達したVC市場が米国投資家に大きく支配されたままである例を挙げており、域内資本の相互流通の弱さが、かえって域外依存を高める。
この圧倒的な資金力の差は、EUが公的支出の目標をいくら高く掲げても埋めることは難しく、域内で代替サービスを育成する余地を大きく制約する。公共調達で受注を得た企業が、その後スケールする段階で資金を得られなければ、結局は域外投資家に頼り、本社機能や知的財産を域外に移すことにもなりかねない。欧州に問われているのは、まさに自らのイノベーション・エコシステムが生んだ成果をどのように保持・拡大するかである。
第四に、資金や規制以上に深刻な課題は、欧州の技術インフラそのものの脆弱性である。CADAは域内製品・サービスの活用を促そうとしているが、現時点で米国製・中国製に代わる実用的な欧州製の選択肢は限定的だ。
例えば、クラウド市場を例にとると、欧州系事業者の大半は小規模であり、ドイツの世界的なソフトウェア企業でさえ市場シェアは約2%にとどまる(※20)。フランスの新規参入組も台頭しているが、彼ら自身が外国製のチップやITサービスに大きく依存している。そのため、単に欧州拠点のクラウドに切り替えたとしても、データの所在地の問題を超えて、主権上の制約を完全に解消することは難しいだろう。実際、EU保証レベル4の要件を満たすEU拠点の商用クラウドサービスは現時点で存在せず、当面このレベルが達成可能なのは、防衛関連用途に限られる見通しである(※21)。
また、制度自体が、より競争力のある米国のハイパースケーラーにも開かれている。彼らはすでに、EU域内でデータセンターを運営しており、レベル1の要件を満たし得るほか、レベル2についてもEU高官が米国企業の適格性を認める発言をしている。結局のところ、対外依存の構図は大きく変わらない可能性がある。
もっとも、フランス企業は、公的部門のデータの15%程度が欧州事業者向けに確保されうることを歓迎している。ただし、AIやデータ分析の分野でもフランス系のAI企業が域内の代替候補として台頭しているが、市場シェアは依然として低い。
ここで新たな政治的争点となるのが、加盟国間の配分をめぐる対立である。現状のままであれば、フランス企業がEU公的支出の主な受益者となる可能性が高いため、ドイツなどの他の加盟国は自国企業への資金配分を求めることが予想される。しかし、資金を各国の企業に分散させてしまうと、大手事業者がAI開発に必要なスケールメリットを獲得できなくなり、国際競争力を持つ企業の育成を自ら阻害することになりかねない。
そして最も懸念される実務的なリスクは、EUが主権を優先するあまり、欧州の一般企業が米中の競合他社よりも性能で劣る域内製品・サービスに頼らざるを得なくなり、結果として欧州産業全体のグローバル競争力まで低下してしまうというシナリオである。域内優先規則が調達コストを引き上げ、イノベーションへのインセンティブを削ぎかねない。重要インフラにおいては、半導体価格の上昇と品質低下も懸念される。欧州委員会は主権的サービスの価格プレミアムを5%程度と想定しているが、実際にはこれにとどまらないという指摘もある。
おわりに――技術主権がもたらすシナリオと日本への示唆
EUの技術主権パッケージが注目に値するのは、そこに掲げられた具体的な目標だけではない。この戦略が、EUが保護主義の方向にさらに一歩踏み出したことを示している点においても重要である。
欧州委員会は、域内市場の競争力を高めるために規制緩和を進める一方で、外国企業の市場アクセスを条件付きとすることで一部の戦略的セクターを保護しようとしている。主権リスク評価の導入、公共調達における欧州企業の優遇、そして戦略的セクターへの各国補助金の要件緩和という提案は、いずれも同じ方向を向いている。
多くのアナリストが指摘するように、これら一連の措置は、欧州が競争相手である米国や中国の手法を模倣し始めていることを意味する。市場アクセスをレバレッジとし、産業政策を用いて域内の代替産業を育成しようとする姿勢は、米国のCHIPS・科学法やバイ・アメリカン法、中国の国家主導ファンド「大基金」や政府調達の手法と重なる(※22)。言い換えれば、欧州委員会は、自らが長年反対してきた保護主義的な手段を、開放性に根ざした主権および公正な競争と称して実施しようとしている。さらに言えば、動機は異なるにしても、国内規制の緩和と対外的な市場防衛策を組み合わせるという点では、第2期トランプ政権の政策路線とも一定の類似性を持つ。
こうした戦略は、外交政策上のリスクも孕む。米国や中国がEUの保護主義的な動きに報復すれば、対外依存度の高いEUは極めて脆弱な立場に追い込まれる。
対米関係では、すでにEUがデジタル市場法(DMA)などによって米国の巨大テック企業に重い規制と巨額の制裁を科してきた経緯がある。米国務省は、今後のEUの技術主権関連法における保護主義的措置がパートナーシップを損なう恐れがあるとし、前進への道は規制緩和とAI・半導体分野での協力であるとして、強い牽制を見せている(※23)。
対中関係も緊張度を増している。欧州委員会は新興の中国テック企業に制裁金を科したほか(※24)、ロシアの軍需産業への供給を理由に中国の事業体に制裁を課し、これに対して中国は対抗制裁を発動した(※25)。
1つのシナリオとして、技術主権をめぐる議論は、戦略的自律性とグローバル資本への開放性、または同盟国や信頼できるパートナーとの連携との間の代理紛争(proxy battle)に発展していくことが考えられる。しかもそれは、国際貿易が保護主義へ傾斜し地政学リスクが高まっているまさにこの局面で行われる。最終的な落としどころとしては、相互主義の条件を組み込んだリスクベースの主権モデルが考えられるが、この設計をめぐってはEU理事会と欧州議会での議論の難航が予想される。
こうしたなかで、技術主権パッケージがEUの対外関係において建設的な役割を果たす可能性も残されている。その試金石となるのが、英国との技術協力である。
近い将来に期待される展開は、EUが推進する50億ユーロ規模の「スケールアップ基金」への英国の参加だろう。英国が出資を通じて欧州のスタートアップ支援に資本を供給し、見返りとして英国企業もEUの資金プールへのアクセスを得るという、まさに相互主義的な構想である。英国の国内AI主権関連の予算が5億ポンドと比較的小規模であることを踏まえれば、英国にとっても裨益がある。同様に英国は、欧州全体でAI導入を加速させることを目的とした「欧州AIチャンピオンズ」への参加も表明している。
今後のEU・英国間の技術協力における最大の焦点は、規制の整合性そのものよりも、EUが推し進める「バイ・ヨーロピアン」や主権政策の枠組みのなかに、英国を「より広い欧州産業エコシステムの一部」として実質的に組み込めるかどうかである。
EUと英国のこうしたパートナーシップ動向は、日本の視点からも学ぶところが多い。具体的には、以下の3つの観点から整理できる。
第一に、ミドルパワー間の協力と防衛分野における留意点である。
地政学的リスクがますます高まる中、サプライチェーンの多角化やリスクヘッジといった点で、欧州と日本が置かれた立場は大きく重なる。日本は欧州において、主要な技術セクターの直接的な脅威(競争相手)とは見なされておらず、むしろ戦略的分野での協力の道が開かれている。とりわけ日本企業が半導体製造の川上(素材・製造装置など)で強固な地位を占めていることは、域内に生産基盤を構築しようとする欧州にとって、日本が不可欠なパートナーとなり得ることを意味する。
ただし、防衛分野における協力には留意が必要である。現在、日欧が推進しようとしている防衛産業協力は、まさに欧州が「技術主権」を最も強く主張する領域と重なる。技術主権パッケージのなかでも、防衛は例外的な扱いを受けている。例えば、CADAは、加盟国が実施する主権リスク評価の対象に「国家安全保障・防衛・法執行など」の各領域を明示的に含めている。さらに欧州委員会は、リスク評価の方法論を定める実施法において、防衛を含む最も重要な公的活動について、加盟国がどのように最高保証レベルを適用すべきかを規定するとしている。
本来、国家安全保障は各加盟国の専権事項である。一方で、CADAは、防衛分野を含む重要な公的活動について、EU保証レベルを通じた主権リスク管理の対象に含めている。したがって、EUレベルの主権フレームワークが防衛調達にどの程度実効的に及ぶかは、加盟国の国家安全保障権限との関係で今後の重要な争点となる。加盟国レベルでの防衛協力とEUレベルの主権フレームワークとでは適用される論理が異なる可能性が高いため、今後の日欧協力がどのレイヤーを対象とするのか、そして日本がEUの枠組みのなかで「信頼できるパートナー」としてどのように位置づけられるかなどについては、EU内部の権限の所在をめぐる議論を慎重に追跡する必要がある。
第二に、EUのこうした保護主義的な動向は、日本企業にとってはリスクと商機の両方の側面から捉えることができる。日本の半導体セクターは、世界のデータセンターやAI投資のブームから多大な恩恵を受けてきた。EUの保護主義的転回は、日本企業にとって成長市場へのアクセスを狭めるリスクを孕んでいる。しかし、慎重かつ巧みに立ち回れば、これを好機に転じることも十分に可能である。
米国や中国とは対照的に、EUは日本製品に対して主権上の強い警感を抱いていない。日本企業が川上から欧州の生産能力の発展に貢献することで、保護主義の壁の内側に入り込む余地は十分に残されているのではないだろうか。
第三に、EUの技術主権政策とその苦闘は、日本の政策立案においても重要な教訓となり得る。欧州のシンクタンク(CERRE)の調査によれば、日本のデジタル分野における対米依存度は近年大幅に高まっており、その度合いは欧州諸国よりもさらに深刻であると指摘されている(※26)。日本は現時点では、対米依存を直接的な脅威と捉える段階にはない。他方で、国内のAI基盤やクラウドコンピューティング産業の育成を目指す日本にとって、競争力向上と対外依存のリスク管理というEUが直面しているジレンマは、そのまま日本にも当てはまる課題である。欧州がこのジレンマに対してどのような議論を経て、最終的にどのような妥協点(相互主義や同盟国との連携など)を見出していくのか。その経験は、今後の日本のデジタル・産業政策にも参考になり得るだろう。
参考文献・資料
(※1)Mario Draghi, “The future of European competitiveness”, 2024.
(※2)Centre on Regulation in Europe, “Digital Industrial Policy for Europe”, December, 2024.
(※3)Chris Miller, “Chip War: The Fight for the World's Most Critical Technology”, 2022.
(※4)European Commission, “Impact Assessment Report: Accompanying the document proposal for a regulation of European parliament and of the Council on a framework of measures for strengthening Europe’s semiconductor ecosystem repealing Regulation (EU) 2023/1782 (Chips Act 2.0)”, Commission staff working document SWD(2026)504, June 3, 2026.
(※5)Edouard Mathieu, “US and Chinese companies train almost all of the world’s most-used AI models”, June 30, 2026.
(※6)European Commission, “The AI Continent Action Plan”, April 2025.
(※7)European Commission, “Commission proposes tech sovereignty package to strengthen Europe's digital autonomy and resilience”, June 3, 2026.
(※8)European Commission, “Proposal for the Chips Act 2.0”, June 3, 2026.
(※9)※4と同じ
(※10)Chips Act 1.0から引き継がれた国家補助の審査場の資格要件。EU域内で初となる革新性を持つ施設と認定されれば優遇される。Chips Act 2.0では、この対象をバリューチェーン全体に広げる。この資格を得た施設は、欧州半導体技術イニシアティブとして認定され、許認可の迅速な手続きが保証される。
(※11)European Commission, “Proposal for the Cloud and AI development Act (CADA)”, June 3, 2026.
European Commission, “Proposal for a regulation establishing a framework of measures for strengthening Europe’s cloud and AI ecosystem (Cloud and AI development Act)”, COM (2026) 502 final, 2026/0138(COD), June 3, 2026.
(※12)ただし、これらの実施法は、委員会の審査手続きを経て採択されるため、欧州委員会の単独裁量ではない。
(※13)European Commission, “Annexes to the regulation establishing a framework of measures for strengthening Europe’s cloud and AI ecosystem (Cloud and AI development Act)”, COM (2026) 502 final, Annexes 1 to 3, June 3, 2026.
(※14)European Commission, “The EU Open Source Strategy”, June 3, 2026.
(※15)European Commission, “Strategic roadmap for digitalization and AI in energy sector”, COM(2026) 501 final, June 3, 2026.
(※16)European Commission, “EU launches InvestAI initiative to mobilise €200 billion of investment in artificial intelligence”, Press Release, Feb 11, 2025.
(※17)European Commission, “Apply AI strategy”, Last update June 3, 2026.
(※18)European Commission, “RAISE: Resource for AI Science in Europe”.
(※19)Adam Baumann, Zakaria Gati, Francesca Vinci and Gerome Wolf, “Europe’s venture capital gap and the financing of high-growth firms”, European Central Bank Economic Bulletin, Issue 5/2026.
(※20)European Parliament, “European Software and Cyber Dependencies”, Study requested by the ITRE Committee, December 2025.
(※21)Théophane Hartmann, “Commission’s sovereign cloud plan doesn’t push US hyperscalers out”, EURACTIV, June 3, 2026.
(※22)Mario Mariniello, “To achieve tech sovereignty, Europe must not mimic its rivals”, Brugel, June 11, 2026.
(※23)Pieter Haeck, and Mathieu Pollet, “Brussels claps back at Trump’s tech threats”, Politico, June 29, 2026.
(※24)European Commission, “Commission fines AliExpress €550 million for breaching the Digital Services Act”, Press Release, July 20, 2026.
European Commission, “Commission fines Temu €200 million for breaching the Digital Services Act”, Press Release, May 28, 2026.
(※25)“China slaps export controls on 14 EU entities in retaliation for Russia-related sanctions”, AP, July 24, 2026. <https://apnews.com/article/china-eu-sanctions-russia-export-control-war-cfb75918077b268eb76b0f19c1673511>
(※26)Centre on Regulation in Europe, “Digital Industrial Policy for Europe”, December 2022.

