経済安全保障

2008年秋に起きた米国発の世界金融危機(リーマンショック)から15年が経った。中国経済の存在感が急激に高まった当時、現在とは全く異なる視点から「米国と中国のデカップリング(切り離し)」に対する関心が集まっていたことを取り上げたい。米中デカップリングの意味合いは、金融・経済政策や金融規制同様、15年の間に大きく変わった。こうした用語の移り変わりに着目していくことも、企業戦略にとって重要ではないだろうか。

欧州委員会(EC)は、2023年10月4日、中国から輸入されるバッテリー式電気自動車(BEV)の補助金調査を開始した。ECは、経済安保の見地から貿易・投資などの管理を強化しており、欧州域内の産業基盤強化と国際社会での欧州の競争力向上を目指す。ただし、経済安保を掲げた規制が行き過ぎれば保護主義の弊害を招きかねない。今回の補助金調査のケースから、日本が経済安保施策を考えるうえで、学ぶべきポイントを示したい。

米国の対中政策がデカップリングからデリスキングへと転換しているとされている中、バイデン政権は、中国への投資を規制する新たな措置を導入することを発表した。米国からの資金が、中国の軍事力強化の資金源になることを避ける狙いがある。米国は同盟国にも同様の措置を導入するよう求めており、欧州連合はすでに検討を始めている。日本政府にも対応が求められる。