経済安全保障

  • エネルギー安全保障は、もはや化石燃料や中東情勢にとどまらない。デジタル化や脱炭素化の急激な進展により、リチウムやレアアースなどの重要鉱物が新たな戦略的資源としてその存在感を高めている。特に近年、中国など資源保有国による輸出管理の強化や自国産業育成のための重要鉱物の囲い込みなどによって供給リスクが顕在化している。こうした中、日本を含む西側諸国は鉱物資源の安定供給を共通の最優先課題としており、連携強化の機運が高まっている。今、日本に求められるのは、高度な技術力と国際的な信頼を活かしながら、価値観を共有する国々との連携を主導し、資源保有国との戦略的パートナーシップを構築していくことだろう。

  • 米国の第2次トランプ政権は貿易相手国に高関税を課し、通商と為替、安全保障それぞれの政策を組み合わせた対応を迫り始めた。これを受け、欧州や英連邦では「米国に依存しない経済圏」を模索する動きが広がる。日本は、米国との同盟関係を引き続き大前提としつつ、開かれた経済圏の維持・拡充に向けた戦略の策定と実行が求められるだろう。本稿では、米国離脱後に11ヵ国が合意した「包括的・先進的環太平洋連携協定」(CPTPP、日本では従来「TPP11」と呼称) を基軸とした欧州や英連邦、アジア諸国との「ルールベース」の連携強化の可能性について提示する。

  • 第2次トランプ政権による米国の政策変更は、欧州に大きな動揺をもたらしている。現在、米欧関係は、貿易、防衛・安全保障、ウクライナ問題、選挙介入、デジタル規制、気候変動といった多岐にわたる領域で摩擦が同時多発的に生じ、かつてない緊張状態にある。こうした衝突は一過性のものではなく、大西洋の絆の性質そのものを根本から変容させるリスクを孕んでいる。欧州は、トランプ2.0にどう向き合うのか。最大の焦点は、最も強力な報復措置とされる反威圧措置(ACI)を行使するかどうかであり、欧州の本気度を内外に示す試金石となる。

17件中4 - 6