経済安全保障

国際秩序の変容と破壊的な技術革新を背景に、日本政府は経済安全保障を重視した成長戦略の策定を進めている。柱は、戦略的な自律性と不可欠性を高め、産業基盤とサプライチェーンを強靱化することだ。その実装のカギを握るのが、世界情勢と技術の変化に対応できる地域エコシステムの構築である。本稿は、2026年6月に策定が見込まれる「地域未来戦略」を念頭に、官民連携の先行事例とされる北海道バレービジョン協議会を分析し、他地域の産業クラスター創出への示唆を探る。

2026年2月、米国・イランによるイラン攻撃に伴う「ホルムズ・ショック」が世界を襲った。エネルギー価格の高騰は、欧州のグリーン政策を直撃し、エネルギー安全保障が最優先課題へと浮上した。しかし、欧州連合(EU)が踏み出した環境規制の緩和は、単なる場当たり的な危機対応ではない。背景にあるのは、第2次トランプ政権による揺さぶり、クリーン技術を席巻する中国、そして域内の政治的・経済的分断という三重の構造的圧力である。欧州は今、グリーン政策を「環境政策」から国家主導の「産業・安全保障政策」へと捉え直そうとしている。

デジタル化の進展と地政学リスクの高まりによって、半導体は経済安全保障上、必要不可欠な戦略物資として再定義された。日本政府は、サプライチェーンの強靭化を目指し、北海道で次世代半導体の量産を目指すラピダス、熊本に生産拠点を設けた台湾TSMCなどに対する公的支援を進めている。政府の半導体戦略に呼応し、北海道では半導体産業を起点にした持続的成長を目指す「北海道バレービジョン協議会」が動き出した。この新たな産官学金による地方創生の枠組みを推進した、協議会の和田義明顧問(元防衛大臣補佐官・内閣府副大臣)とデロイト トーマツ戦略研究所の鹿山真吾主席研究員(デロイト トーマツ グループ ストラテジー・リスク・トランザクション リーダー)が半導体、地方創生の可能性について意見を交わした。