奥田 宏二

奥田 宏二 / Koji Okuda

主任研究員

大学卒業後、日本経済新聞社入社。経済部の記者として、コーポレートガバナンス・コードの制定や働き方改革、全世代型社会保障改革などを取材。金融や社会保障分野を長く担当した。フィンテックのスタートアップ企業を経て、2023年1月にデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社し、DTFAインスティテュートに参画。自治体の少子化・人口減少に関する分析や政策提案業務などに従事。

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  • 新社会人は減っているのか?~少子化対策財源の難しさと展望

    日本で少子化が進んでいる。厚生労働省によると、2023年の出生数は75万8631人(※1)で統計開始以来最も少なく、近く公表される合計特殊出生率は過去最低を更新する可能性がある。少子化は労働市場にどのように影響するのか。高校と大学を卒業して就職する新社会人に着目し、独自推計したところ2030年半ばから急減する見通しだ。こうした近い将来直面する課題に対処する費用を誰がどう担うか利害調整の難しさは、新たに創設する「子ども・子育て支援金」の議論からも見て取れる。制度のあるべき理想と現実を抑えつつ、社会保障にかかわる負担の在り方を考えてみたい。

  • アセットオーナー改革2.0

    政府が企業年金などアセットオーナー改革に乗り出している。今般のアセットオーナー改革では、資産運用の高度化や投資先の企業価値を向上するスチュワードシップ(機関投資家の行動指針)活動の活性化が論点になる。政府によるアセットオーナー改革は、第二次安倍晋三政権(2012年12月~2020年9月)の初期に行われており、今回の改革を「2.0」と位置付けることができよう。本稿では、過去と現在進行形のアセットオーナー改革を概観したうえで、株主としての議決権行使をアップデートする余地があるのかを考えたい。

  • 金融システム障害から学ぶべきこと

    金融機関でしばしば起きるシステム障害は、影響範囲の広さから社会的な注目を集めやすい。事後の対応として再発防止策は欠かせないが、障害をゼロにすることは現実的に難しい。金融機関のシステムの問題に限らず、誤りが起こさないことを過度に重視すれば、新しいことに挑戦するイノベーションのエネルギーはそがれてしまう。社会全体として、誤りはどこかで起きるという前提に物事を考える意識変革が必要ではないだろうか。

  • テレワークの法制化は必要か~英独からの示唆

    残業時間の上限規制など働き方改革関連法の施行が始まってから2024年4月に5年を迎える。同法が成立した際、安倍晋三首相(当時)は「70年ぶりの大改革」と評した(※1)。5年という政策的な節目を控え、施行後に起きた変化を振り返ると、コロナ禍によるテレワークの急拡大がまず挙げられるだろう。次の働き方改革のテーマとして、労働者にニーズのあるテレワークを労働法制でどのように位置づけるべきだろうか。テレワークなど柔軟に働くことを勤務先の企業に求める権利を定めている英国や法制化を検討するドイツを参考に考えてみたい。

  • スタートアップ目線で退職所得課税を考える

    2024年度の税制改正要望が8月末に各府省から出そろい、改正の議論が本格化する。焦点の一つとして、退職所得課税の見直しがある。同じ会社の勤続年数が長いほど控除額が増える仕組みは、成長分野への円滑な労働移動を妨げているのではないかという問題意識から俎上に載った。控除額の見直しには様々な意見があるが、個人の働き方が違っても中立な税負担があるべき姿だろう。本稿ではスタートアップ企業の目線で考えてみたい。

  • AIは雇用を奪うのか?

    生成AI(人工知能)の進化によって、AIが雇用にどのような影響をもたらすのか世界的に関心が高まっている。産業革命以降、イノベーションにより誕生した新技術は時に雇用への脅威とみなされ、「ラッダイト運動」のような激しい抵抗もあったが、総体としては人類を豊かにする新しい職業を大量に生んできた。AIが雇用にもたらす影響を概観し、日本のチャンスと課題を整理する。