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地方創生[1]の古くて新しい政策ツールに、ふるさと納税があろう。2008年5月の制度開始以降、所得再分配と産業振興を通じた地域活性化を担い、2023年度には寄附金額1.1兆円、利用者数1千万人に達した。しかし多くの場合、寄附金集めのチャネルにとどまり、納税者と地域とが新しい関係を構築する機会にはなっていない。ふるさと納税を、地域間の所得再分配を通じた産業育成への好循環につなげるためには、都市住民らを地域の潜在的な応援団とも言うべき「関係人口」[2] とする仕掛けが必要だ。まずは自治体が、マス向けで地域の魅力を伝えにくいプラットフォーマー頼みの状態からさらに進化する必要がある。そのためには、個へアプローチするD2C(Direct to Consumer)の考え方がカギとなろう。そして共感重視のアプローチとの両利きで域外の個人・企業との共創が促されれば、「自立的な地方経済」の実現が近づくはずである。

人口減や経済停滞に歯止めを掛けるための地方創生政策では、「若者・女性にも選ばれる地方」づくりが重要とされる。雇用創出に向けた若者や女性の定着を重視した企業誘致には、より多様な働き方をもたらす事務所機能などの立地が求められる。しかし現実的には、旧来の製造業中心の産業構造が定着しきっていたり、企業誘致が従来型の「工場誘致」から抜け出せなかったりする地域も多いだろう。 製造業を中心とした機能立地・産業集積には、雇用創出や労働生産性の向上など経済振興に関する多くのメリットがある一方で、いくつかのリスクも伴う。本稿では、そのようなメリットとリスクについて整理するとともに、リスクに備えた地域づくりに重要な視点や留意点を示したい。

日本全体で進行中の人口減少・少子化に対応して地域の発展を図るためには、俯瞰的な「人材の育成」と「人材のシェア」の観点を持って地域づくりを進める必要がある。

我が国の人口が減少の一途を辿る中、各地の地域経営・まちづくりのマインドセットは、定住人口という数量だけを追い求める施策から、地域外の人口とのより多様で有益な関係構築と活用へと転換されつつある。
