中川 朗

中川 朗 / Akira Nakagawa

主任研究員

メーカー系シンクタンク、金融機関、国内総合電機メーカー戦略本部で、産業調査・国内消費の分析業務に従事。みずほ銀行産業調査部では小売・消費財産業を担当し、セクターアナリスト、サブセクターヘッドとして経営層への資本政策の提案や、産業調査レポート、記事を執筆。消費の構造変化と企業戦略について、モビリティ、インバウンドや宇宙利用など幅広いクロスセクター的な観点も交え、中長期的な観点から提言した。
2024年8月にデロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社し、DTFAインスティテュートに参画。修士(文学)。

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  • コンシューマー企業の価格転嫁を阻害する2つのリスク

    日銀が目指す「物価と賃金の好循環」実現に向け、2025年春闘でも昨年並みの賃上げが想定されており、マクロ目線では賃金、物価、消費の好循環が期待されている。しかし、ミクロ目線でコンシューマー企業の競争環境を見ると、値上げを妨げるリスクも想定される。 本稿では特に2点取り上げる。1つは業態間競合の激化が企業に価格維持バイアスをもたらすリスクである。もう1つは、中国発のデフレが市場価格に低下圧力をかけるリスクである。前者は食品取扱をはじめとする小売業態の小商圏化がより進行するためであり、今後長期間にわたって構造的な要因となる。後者は、中国の生産過剰と米国の対中関税政策に端を発するものであり、起こるかどうか不透明なものの、発生した場合の影響は非常に大きい。

  • コンシューマー企業が高齢消費をとらえるには
    個人消費

    2025年は団塊世代が後期高齢者となって「重老齢社会」に入る節目の年である。さらに2040年には団塊ジュニアが高齢者となり、個人消費におけるシニア層の存在感はさらに強まる。そこで本論では、コンシューマー産業が高齢者による需要をとらえるヒントを導出するべく、改めて高齢者の消費特性を振り返った。家計調査から見ると、高齢者の平均支出には節約志向がうかがえる。しかし、財・サービスの一部については前期高齢者から後期高齢者に向けて、消費志向性が高まる。このポテンシャルを発揮するため、コンシューマー産業には「つながり消費」・「オンライン化」・「インフレ対応」の3つの観点からのアプローチが不可欠になる、というのが本論の仮説である。

  • 消費環境トラッカー 2024年11月号 収益環境が厳しさを増すB2C企業に求められる戦略
    個人消費

    日本政府は物価と賃金との好循環を通じたデフレからの完全脱却を政策目標としている。企業にとっても2021年末から続く物価上昇に消費者がどのように適応しようとしているのかを的確に捉えることは重要である。そこで本稿では四半期ごとのシリーズとして、公的統計や消費動向を手掛かりに、小売・外食をはじめとしたB2C企業へのインプリケーションを示す。 現状、消費者は値上げ疲れの様相を深め、物価に応じて賃金も上がるとの確信も持てていない。年金生活者を筆頭に、日本の総世帯の約60%は物価上昇の影響を強く受けている。そのため、消費者の価格選好性がB2C企業の事業戦略を左右する形となっている。原材料費、人件費、電気代、物流費をはじめとするコストを製品価格に転嫁しにくい状況下で今後、価格競争が加速する懸念もある。 さらにリスク要因として、インバウンドをターゲットとする宿泊や飲食などの産業が、高収益をテコに人手を引きつければ、労働集約的な構造を脱却できない企業の収益機会はさらに奪われかねない。このように外部環境が変革を求める中でB2C企業は短期では、コスト競争力のさらなる強化を通じた資本集約と、価格コントロール力の構築を進める必要がある。中長期では「客数×客単価型」ビジネスからの転換が求められよう。