景気循環による経済的影響は企業にとって不可避なものです。しかし、世界および地域経済に対し長期的な見通しを持つことにより、企業は景気循環のリスクを最小化することができます。デロイトは、世界のビジネスリーダーたちに必要な、マクロ経済、トレンド、地政学的問題に関する明快な分析と考察を発信することにより企業のリスクマネジメントに貢献しています。

本連載は、Deloitte Insightsに連載中のWeekly Global Economic Updateの2026年4月13日週の記事より抜粋して日本語抄訳版としてお届けします。

Ira Kalish

Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト

経済問題とビジネス戦略に関するデロイトのリーダーの1人。グローバル経済をテーマに企業や貿易団体への講演も多数行っている。これまで47の国々を訪問したKalish氏の解説は、ウォール・ストリート・ジャーナル、エコノミスト、フィナンシャル・タイムズなどからも広く引用されている。ジョンズ・ホプキンス大学国際経済学博士号取得。

 

 

Weekly Global Economic UpdateでCOVID-19に関する見出しを設けるのは、実に久しぶりのことです。私たちは皆、歴史におけるあの嘆かわしい一幕は終わったものだと考えていました。しかし、明らかにそうではないようです。経済協力開発機構(OECD)は、コロナ後遺症に起因する重大な経済的コストが依然として存在することを示す報告書を発表しました。OECDはコロナ後遺症を「認知機能障害(ブレインフォグ)や倦怠感といった持続的な症状を特徴とする、急性期後の感染症候群」と定義しています。
 

OECDは、その38の加盟国において約7,500万人がコロナ後遺症に苦しんでいると推計しています。そして、今後10年間で、これらの人々を治療するための医療費は少なくとも年間110億米ドルに上ると試算しています。しかし、OECDは間接的なコストの方がはるかに甚大になるだろうとも述べています。具体的には、「2025年から2035年にかけて、コロナ後遺症による間接的な経済コストは、関連する医療費をはるかに上回る見込みである。緩やかな経済成長と高齢化が進む中で、コロナ後遺症は労働参加率と生産性を引き続き低下させると予想される。これらの損失は、病気に関連する欠勤、健康問題に起因する生産性低下(プレゼンティーイズム)、そして労働力人口の縮小に起因する」と報告しています。加えて、これによりOECD経済圏の年間GDPが最大で0.2%押し下げられ、その間接コストは今後10年間で年間約1,350億米ドルに達する可能性があると指摘しました。
 

OECDの報告書は、コロナ後遺症に関連する生産性や経済活動の損失を指摘していますが、パンデミック中に教育が中断された若者たちへの長期的な影響については言及していません。私たちは、1920年代初頭の世界的なインフルエンザ・パンデミックの後、教育システムや労働市場で十分な成果を上げられなかった、事実上の「失われた世代」が存在したことを知っています。もし歴史が繰り返されるのであれば、この問題は今後10年間で再び顕在化し、それによってさらなる経済的損失に寄与することになるでしょう。
 

 

 

翻訳者

 

合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
増島 雄樹
 

合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
川瀬 茉里奈

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