
Ira Kalish
Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト
戦争が予想以上に長期化し、原油価格が高止まりしても、世界経済は過去ほど原油価格ショックに対して脆弱ではない可能性が高い点は、注目すべきことです。世界の原油生産量に占める中東のシェアは低下してきていますが、依然として大きく、世界経済にとって重要です。しかし、過去と比較して大きく変わったのは、GDP1ドルあたりの原油消費量です。米国経済を例にとると、1980年以降、米国の実質GDPは300%以上増加した一方で、原油消費量はほとんど変化していません。言い換えれば、米国は過去に比べて原油への依存度がはるかに低くなっているといえます(ほかのほとんどの主要経済でも同様のことがいえます)。このため、原油市場のショックが経済に与える影響は1980年よりもはるかに小さくなっています。1979年、イラン革命とそれに伴う原油価格の大幅な上昇が経済活動の急激な縮小をもたらしたことを思い出してください。
過去と比較して、世界中でGDP1ドルあたりの原油消費量が激減した理由はいくつかあります。第一に、自動車の燃費性能が大幅に向上し、現在では電気自動車が普及しています。第二に、世界中で非石油資源、特にクリーン資源からのエネルギー供給が増えています。最後に、1970年後半の価格高騰により、企業、政府、住宅所有者が効率性の向上に投資した結果、オフィスビル、工場、倉庫、電車、飛行機、そして住宅について、以前よりも少ないエネルギー消費量での運用が可能になっています。
原油価格が持続的に上昇した場合の影響は各国で異なります。現在、石油の純輸出国となった米国にとっては、石油の純輸入国だった過去に比べれば、影響ははるかに小さくなります。一方、中国、日本、欧州の多くの国々といった純輸入国では、資源流出が拡大し、経済活動により大きな悪影響が及ぶことになります。中国の場合、大量の石油を備蓄していると報じられており、価格が急騰すれば購入を控え、代わりに貯蔵した石油を消費に回す可能性があります。
さらに、物価の持続的な上昇は、特に中央銀行が金融引き締めに失敗した場合、世界的なインフレの加速を引き起こす可能性があります。1970年代に、中央銀行が原油価格の上昇を事実上容認し、十分な金融政策を怠った国々ではインフレ率が大幅に上昇したことを思い出してください。ドイツは例外で、ドイツ連銀は金融引き締めを行い、インフレ率の上昇は比較的穏やかでした。これは長期的には、他国と比べてドイツの経済活動にプラスの影響を与えました。
翻訳者
合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
増島 雄樹
合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
神山 美彩





