Ira Kalish

Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト

経済問題とビジネス戦略に関するデロイトのリーダーの1人。グローバル経済をテーマに企業や貿易団体への講演も多数行っている。これまで47の国々を訪問したKalish氏の解説は、ウォール・ストリート・ジャーナル、エコノミスト、フィナンシャル・タイムズなどからも広く引用されている。ジョンズ・ホプキンス大学国際経済学博士号取得。

 

 

2025年の第4四半期において、ユーロ圏経済は堅調なペースで成長しました。21か国からなるユーロ圏の実質GDPは前期比では0.3%増加し、前年同期比で1.3%増加しました。さらに、成長は雇用の増加のみならず、労働生産性の穏やかな成長にも起因しています。第4四半期の雇用は前期比では0.2%増加、前年同期比で0.7%増加となりました。雇用の増加率とGDP成長率の差は、労働生産性の上昇率を反映しています。

 

欧州最大の経済大国であるドイツでは、第4四半期の実質GDPは前年同期比で0.4%増加にとどまりました。しかし前期比では0.3%増加であり同年第2・第3四半期の停滞以後、ドイツ経済が再び加速し始めていることを示しています。一方、各国の第4四半期の前年同期比の実質GDP成長率は、フランスが1.1%、イタリアが0.8%、スペインが2.6%、オランダが1.8%、ベルギーが1.1%、ポルトガルが1.9%でした。ユーロ圏外ですがEU域内における経済成長率はポーランドが3.6%、チェコが2.4%、ブルガリアが2.9%でした。しかしハンガリーは前年同期比でわずか0.5%の成長にとどまりました。

 

欧州経済の強まりの一部は、堅調な輸出によるものでした。欧州連合(EU)統計局によると、12月のユーロ圏から域外向けの輸出は、ユーロ建てで3.4%増加しました。ユーロ圏域内の輸出は6.7%の増加でした。域外からの輸入は4.2%増加しました。欧州全体では、12月の対米輸出は12.6%減少(主に米国関税が原因です)となった一方で、対中輸出は11.5%、対英輸出は8.4%、対印輸出は14.5%、対スイス輸出は20.3%の増加となりました。他方で、対日輸出は2.0%減少しました。輸入は、米国からが1.6%の増加、中国からが10.2%の増加でした。

 

対米貿易の縮小がなければ、欧州の経済成長はもう少し速かった可能性が高いと考えられます。さらに、中国の対米貿易の縮小は中国が欧州を含む他の市場に機会を求める要因にもなりました。欧州の対中輸入が堅調なのはその表れです。加えて、中国製品の低価格はユーロ圏のインフレ率の鈍化にも寄与しています。それにもかかわらず、12月も欧州の対中輸出は好調でした。もちろん、それがあるべき姿です。EU外務・安全保障政策上級代表は次のように述べました。「我々がより強くなれば、我々の製品も競争力をもち、保護政策は必要ありません。とはいえ、我々の企業に甚大な損害を与える中国の経済的威圧的行為にも対処しなければいけないのは確かです。」

翻訳者

 

合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
増島 雄樹
 

合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
江越 七海

本記事に関するお問い合わせはこちら