景気循環による経済的影響は企業にとって不可避なものです。しかし、世界および地域経済に対し長期的な見通しを持つことにより、企業は景気循環のリスクを最小化することができます。デロイトは、世界のビジネスリーダーたちに必要な、マクロ経済、トレンド、地政学的問題に関する明快な分析と考察を発信することにより企業のリスクマネジメントに貢献しています。

本連載では、デロイトのエコノミストチームが昨今の世界経済ニュースやトレンドについて解説します。今回は、Deloitte Insightsに連載中のWeekly Global Economic Update2026年1月26日週の記事より抜粋して日本語抄訳版としてお届けします。

Ira Kalish

Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト

経済問題とビジネス戦略に関するデロイトのリーダーの1人。グローバル経済をテーマに企業や貿易団体への講演も多数行っている。これまで47の国々を訪問したKalish氏の解説は、ウォール・ストリート・ジャーナル、エコノミスト、フィナンシャル・タイムズなどからも広く引用されている。ジョンズ・ホプキンス大学国際経済学博士号取得。


 

米国の家計支出、所得を上回るペースで増加を続ける

 

米国の家計は、生活水準を維持しようとする姿勢が明らかです。過去7カ月の各月において、家計支出は個人の可処分所得を上回るペースで増加しました。その結果、当然ながら、個人の貯蓄率は着実に低下し、11月には3.5%となりました。これは2022年10月以来の最低水準です。加えて、過去2カ月では、家計支出の増加分の約4分の1は医療費に充てられていました(医療費の一部は保険会社によって補填されています)。この情報は、個人所得と個人支出、またFRBが最も重視するインフレ指標に関する米国政府の最新の報告書に基づくものです。詳細を見ていきましょう。

11月の実質可処分個人所得(インフレ調整済み税引き後の所得)は、前月比でわずか0.1%の増加となりました。さらに、過去1年間でほとんど変化していません。同所得は、前年比でわずか1%上昇に過ぎませんでした。それでも、11月の実質個人消費支出は前月比で0.3%増加しました。さらに、実質消費支出は前年比で2.6%増加しています。

それに加えて、耐久財への実質支出は10月から11月にかけて0.6%増加しました。非耐久財への支出は0.5%増加し、サービスへの支出は0.2%増加しました。

所得と支出に関する報告書には、FRBが最も重視するインフレ指標である個人消費支出デフレーター(PCEデフレーター)のデータが含まれていました。この指標は、11月に前年比で2.8%上昇しました。これは9月も同じで、2024年4月以来最も高い水準でした。つまり、過去1年半の間にインフレは緩やかに加速してきました。

変動の大きい食料とエネルギー価格を除いたコアPCEデフレーターは、前年比で2.8%上昇しており、これは過去8カ月間とほぼ同程度の水準でした。したがって、基調インフレは、FRBの目標である2%を依然として大きく上回る水準で明らかに高止まりしています。さらに、FRBは、関税引き上げの一時的な影響により2026年にインフレが加速するとの予想を示しました。加えて、経済はこれまでの予想よりも好調に推移してきました。そのため、経済の弱さを示す兆候がない限り、FRBはこれ以上利下げを行う必要はないという説得力のある主張もできるかもしれません。

一方、政府は、前年比で耐久財価格が1.2%、非耐久財価格が1.6%、サービス価格が3.4%上昇したとも報告しました。耐久財のインフレに関しては明らかに加速しましたが、サービスのインフレは比較的安定していました。耐久財のインフレ加速は、企業が関税コストの一部を顧客に転嫁している影響を反映しているとみられます。11月の耐久財のインフレ率は2022年11月以来最も高い水準になっています。パンデミック期間を除けば、耐久財のインフレ率は1995年3月以来最も高い水準となっています。

※本記事と原文に差異が発生した場合には原文を優先します。

Deloitte Global Economist Networkについて

Deloitte Global Economist Networkは、デロイトネットワーク内外の視聴者向けに興味深く示唆に富むコンテンツを発信する多様なエコノミストのグループです。デロイトが有するインダストリーと経済全般に関する専門知識により、複雑な産業ベースの問題に高度な分析と示唆を提供しています。デロイトのトップマネジメントやパートナーを対象に、重要な問題を検討するレポートやThought Leadershipの提供、最新の産業・経済動向にキャッチアップするためのエクゼクティブブリーフィングまで、多岐にわたる活動を行っています。

翻訳者

 

合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
増島 雄樹
 

合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
高島 理沙子

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