

Ira Kalish
Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト
テクノロジー産業によって急伸する米国の生産性
米国経済では、労働生産性が著しく向上しているようです。しかし、その多くはテクノロジー産業に集中しており、その他の産業は同じペースで改善していません。その結果、経済は二極化しているように見えます。
以前から、一部の専門家は「K字型経済」、すなわち高所得世帯は好調である一方、それ以外の世帯はそうではないという構造について指摘してきました。これは実際に起きていることです。さらに現在では、経済にはもう一つのK字型の側面、テクノロジー産業と非テクノロジー産業の間で格差が生じているようです。以下で説明します。
2025年第2四半期と第3四半期の両方で、労働生産性は急速に上昇しました。これは、長らく期待されてきたAIによる生産性向上がついに実現したことを意味するのでしょうか。おそらく、そうではありません。むしろ、生産性の向上は主にテクノロジー部門で起きており、非テクノロジー部門では限定的な向上に留まっています(図1)。これは、テクノロジー部門での生産量が大きく増加する一方で、雇用の増加はわずかであることを反映しているとみられます。データセンターが稼働を開始し、洞察/インサイト(あるいは幻覚/ハルシネーション)を次々と生み出し始めると、生産量は増加します。しかし、データセンターは非常に少人数しか雇用しません。その結果、生産性は急速に上昇します。
しかし、生産性向上が特定の産業に偏っているため、米国経済の大半はまだその恩恵を受けていません。通常、生産性が幅広い産業で向上すれば、賃金も大きく上昇し、それによって生活水準が向上します。米国経済においてこれが実現するのは、生産性向上がテクノロジー産業からその他の産業へと広がる場合のみです。そしてそれは、他の産業においてAI導入が生産性向上をもたらした際に起こります。データを見る限り、この移行はまだ始まっておらず、実現には時間がかかる可能性があります。
図1
2018年以降、米国における生産性の向上は、主としてテクノロジー部門に限定されています
(1人あたり実質労働生産性、2018年第1四半期=100)

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Deloitte Global Economist Networkについて
Deloitte Global Economist Networkは、デロイトネットワーク内外の視聴者向けに興味深く示唆に富むコンテンツを発信する多様なエコノミストのグループです。デロイトが有するインダストリーと経済全般に関する専門知識により、複雑な産業ベースの問題に高度な分析と示唆を提供しています。デロイトのトップマネジメントやパートナーを対象に、重要な問題を検討するレポートやThought Leadershipの提供、最新の産業・経済動向にキャッチアップするためのエクゼクティブブリーフィングまで、多岐にわたる活動を行っています。
翻訳者
合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
増島 雄樹
合同会社デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー
上田 翔一




