
本連載では、デロイトのエコノミストチームが昨今の世界経済ニュースやトレンドについて解説します。今回は、Deloitte Insightsに連載中のWeekly Global Economic Updateの2025年12月8日週の記事より抜粋して日本語抄訳版としてお届けします。

Ira Kalish
Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト
米国の関税が大幅に引き上げられてから、米国政府はどれぐらいの税収を得ているでしょうか。そして税収は輸入額と比較してどの程度でしょうか。ありがたいことに、これらの重要なテーマに対してはピーターソン国際経済研究所の分析から答えを得ることができます。
まず、今年1月から8月までの米政府の関税収入は1,490億ドルで、関税率が非常に低かった前年に比べて大幅に増加しました。一方、同時期の連邦政府の財政赤字は1兆8,650億ドルでした。これは、関税の財政赤字に対する影響はわずかであったことを意味します。
OECDの年次総会に合わせてパリで開催された最近の会合にて、私は大統領経済諮問委員会の臨時議長であるピエール・ヤレド氏が、関税収入は財政赤字を削減しており、それによって「大きくて美しい1つの法案(the One Big Beautiful Bill Act)」による財政懸念を払拭していると述べているのを聞きました。しかし、関税の影響で輸入がさらに減少すれば、税収は減少し、財政への影響も小さくなります。政府はまた、関税が製造業のリショアリングにつながり、工業製品の輸入が減少する可能性があることを示唆しています。これも税収の減少を示唆しています。
一方、ピーターソン国際経済研究所は、関税収入は輸入品価格の約10.2%だと述べています。これは米イェール大学予算研究所が推定した関税率17%よりも低いです。前者は関税の免除、除外、遅延、その他の理由による相殺も考慮しています。それでも、この実効関税率は歴史的に高い水準です。さらに、輸入元の国や、製品の種類によって、影響は異なっています。
レポートによると、8月の関税収入は輸入消費財の16%でした。産業中間財では11.5%、資本財では6.7%、原材料では1.3%です。しかし、8月時点ではほとんどの企業が関税コストを顧客に転嫁していないと報告書は指摘しています。したがって、消費者物価への影響は軽微であり、これは、企業が古い在庫については値上げしていないことが一因です。とはいえ、今後数カ月間の間にコスト転嫁が進み、インフレ率の上昇につながる可能性が高いとみられます。
同報告書によると、8月の実質関税率は中国からの輸入に対しては37.1%、同じく日本が16.4%、EUが9.2%、メキシコが4.7%、カナダが3.7%でした。中国に対する非常に高い関税措置は、既に中国からの輸入を回避する動きを引き起こしています。メキシコとカナダの税率が低い理由は、2026年に見直しが予定されている米国・メキシコ・カナダの3カ国間自由貿易協定による関税免除が反映されているためです。
※本記事と原文に差異が発生した場合には原文を優先します。
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