シンクタンク

欧州のAI(人工知能)政策専門家たちが公表した近未来予測「Europe2031」が世界中で波紋を広げている。架空の欧州委員会職員とAI起業家が主人公となって未来を描く物語であることも未来予測のあり方に新たな視座をもたらした。特筆すべきは、AIをめぐる課題をイノベーション推進や規制の枠組みにとどめず、EU(欧州連合)の主権や交渉能力という地政学的観点から描写したことにある。AI主権を政治哲学上の概念にとどめず、AIを動かすための総合インフラ力である計算資源、半導体供給網やデータへのアクセス権と再定義し、具体的な課題として示した点は斬新である。この近未来シナリオは日本にどのような示唆を与えるのか。先端AIへのアクセス制限リスクや中堅国連携の可能性に言及しながら、読み解きたい。

日本が産業クラスター形成を通じた「地域未来戦略」を進めるには、自治体の枠組みを超えた広域連携が不可欠である。本稿では、最先端半導体の製造拠点整備を機に設立された「北海道バレービジョン協議会(HVVA)」を分析することで、産業クラスターと広域連携を結びつける設計論を、他の地域でも応用できるものとして示す。

経済安全保障がグローバルビジネスの最重要課題となる中、欧州連合(EU)では、米国に事実上独占されている決済インフラが政治的な武器(レバレッジ)になりかねないという強い危機感から、過度な対米依存から脱却し、「金融・決済主権」を確立する動きが加速している。こうした地政学リスクに対処すべく、欧州はデジタルユーロの導入や独自の決済網の構築、金融市場の統合など、自律的なインフラ整備を進めている。本稿では、EUの決済環境とEUが直面しているリスクを概観し、主権確立に向けた議論の動向を紐解く。