連載
社会課題の解決に挑むスタートアップ

人手不足への対応、生産性の向上、イノベーションの実現などに貢献し、独自の技術やソリューションで社会課題の解決に挑むスタートアップに注目します。
記事一覧
「トモダチ」が拡げる量子共創の輪

海外の有力スタートアップやVCが登壇し、国内外の産官学関係者が集う「グローバル量子トモダチの会 2026」が東京で開催されました。会場では、スタートアップの最先端の技術が産業実装へと着実に近づいている現在地が示され、日本市場への期待の高まりとともに、国際連携が量子分野の発展を加速させていることが印象づけられました。
フィジカルAI、日本の勝機はどこにあるか ーSusHiTech2026レポートー

フィジカルAIは、生成AIに続く有力な領域として注目を集めています。しかし、米中が先行するなか、日本が再びロボティクスで存在感を示すのは容易ではありません。SusHi Tech Tokyo 2026の議論をもとに、現場で蓄積されるデータの価値、社会課題に根差した実装力などの観点から、日本のスタートアップの可能性を考えます。
「世界の悲しい経験を減らしたい」海外に飛び出し社会課題に立ち向かう女性起業家たち

女性活躍支援プロジェクトToget-HERが万博で特別イベント開催女性活躍を支援する一般社団法人Toget-HERが、2025年7月10日・11日に大阪・関西万博のウーマンズパビリオンで特別イベントを開催しました。10日には「社会課題を解決する女性起業家たち」と題したプログラムに、南米やアフリカで、犯罪・治安、貧困、女性の雇用などの社会課題に取り組む3人の女性起業家が登壇し、Toget-HERをリードするDTFAの大塚泰子がモデレーターを務めました。「世界の悲しい経験を減らしたい」「貧困をなくしたいという志を持って単身ブルキナファソに拠点を移した」「タンザニアで、16歳で双子を妊娠して退学したアナに出会った」など印象的なコメントが多いパネルディスカッションとなりました。画面上左上 菊池モアナさん、右上 梶田真実さん、下 原口瑛子さん、手前 DTFA 大塚泰子株式会社Singular Perturbations 梶田真実さん 独自アルゴリズムで犯罪発生数を68%削減最初に自己紹介をしたのは、株式会社Singular Perturbations(シンギュラー パータベーションズ)代表の梶田真実さんです。統計物理(理論)を専門とする研究者でしたが、病気にかかったことなどをきっかけに、社会をより良くするために知識や能力を使いたいと考えるようになり、起業したと言います。イタリアでスリに遭った後、曜日や時間、場所などがスリが起きる確率が高くなる条件に当てはまっていたことに気づきました。そこで人口、過去の犯罪データ、衛星画像、建物属性等様々なデータを使い、独自のアルゴリズムに基づき犯罪予測を行うシステムCRIME NABIを開発し、「世界の悲しい経験を減らす」というビジョンを掲げ事業を進めています。世界的に犯罪件数が多い中南米を主要ターゲットとし、ブラジルやホンジュラスの警察などにサービスを提供しています。転移学習を使いデータが少なくても予測が行える、AIの専門家でなくても犯罪のパトロールや監視カメラのモニタリングを効果的に行えるといった強みがあり、ブラジルのミナスジェライス州では盗難の発生数を68%削減するという効果を得ました。女性としての難しさを聞くと、「私は物理学、起業、警察と、男性の割合が非常に高い中で生きてきています。その中でリーダーシップを発揮するためには、納得性が高いロジックや成果を示すことが大切だと考えています。また、やはり属性が似ている人とは関係を築きやすいというのはあります。ブラジルで初めて警察向けの事例ができた都市は、首長が女性だったことが関係しているかもしれません」と答えました。【Borderless Burkina Faso】原口瑛子さん テロの影響を受ける国で女性の雇用を創出ソーシャルビジネスを専門とする株式会社ボーダレス・ジャパングループから、原口瑛子さんと菊池モアナさんが、事業を行うアフリカ現地から登壇しました。原口さんは、学生のときにケビン・カーターの有名な写真「ハゲワシと少女」を見て、貧困をなくしたいという志を抱いたと話し始めました。2022年に単身ブルキナファソに拠点を移し起業します。ブルキナファソは世界最貧国の1つで、テロも頻発しています。原口さんが現地の人と膝を突き合わせて語り合ううちに、就学率・就労率が低い女性が特に弱い立場に置かれていることを知りました。女性達に自立できる安定収入と帰属できるコミュニティを提供できるビジネスを行いたいと考えました。ブルキナファソはシアナッツの生産が世界トップレベルで、その資源を活かしシアバターを事業化しました。シアバターの加工・製造を行う女性組合と連携し、海外の化粧品メーカーに販売を行います。取引先からは原料の作り手の顔が見えるトレーサビリティの高さが評価されているといいます。さらに、革製品のケア用品などシアバターの用途拡大にも取り組んでいます。「貧困の解決という大きな課題に対しては大海の一滴でしょうが、私の挑戦によって、ほかの誰かが後に続きやすくなるかもしれないと思っています。私は子供時代を熊本で過ごしましたが情報が乏しかった。今はどこにいても、世界で様々な活動している女性を身近に感じることができますよね、このイベントや万博もその機会の一つです」と語りました。【Borderless Tanzania】菊池モアナさん 生理用ナプキンの製造工場を全国に展開したい菊池さんは大学で「教育が社会課題解決のカギを握る」と学び、現場を見たいとタンザニアに行きました。そのとき、16歳で双子を妊娠して退学し、貧困の中で自殺も考えた少女アナに出会いました。タンザニアでは、女性の4人に1人が10代で望まない妊娠をし、学校を辞めざるを得ず、中絶を禁じられ、シングルマザーとして貧困に苦しんでいるという厳しい現状を知ります。菊池さん自身も若くして妊娠・出産を経験しましたが、「日本は様々な援助があり恵まれている。助けてもらった分、タンザニアの女性達をサポートしたい」と決意したそうです。タンザニアでは生理用ナプキンの製造工場を設立し、若年妊娠で退学した女性達に働く場を提供しています。ナプキンは中~高所得者向けに販売し、利益から貧困層の少女達にナプキンや性教育を寄付する仕組みです。「初めは安く作ろうと考えましたが、いくら安くても、貧困ライン(一日280円)以下で生活している貧困層には手が届かないと気づきました。彼女たちは生理用品がないので紙や端切れなどで代用し、水も満足に使えないため不衛生で、尿路感染症が風邪レベルで流行しています。生理ケアができないため学校を休み、授業についていけなくなって退学する子も多い」と説明します。国連人口基金などとも連携し、これまでナプキン53万枚の寄付を行ったほか、工場を全国に展開する計画を進めています。最初の訪問で出会ったアナは、今は工場のリーダーとして生き生きと働いているそうです。女性の視点が社会課題の解決にどうつながったか、という質問には「男性社会では『若い女性が子供を産んで家にいるのは普通だ』と思われてしまうので、見落とされやすいテーマを扱えています。ただし、外国人の小娘として扱われる難しさはあります。政府の役人から袖の下を要求されたりもします」と答えました。上川陽子前外務大臣もエール「大変頼もしく、感動しました。また話を聞きたい」上川陽子衆議院議員も会場でセッションを聞いていました。「私はWPS(Women, Peace, and Security、紛争・災害・暴力等の課題への女性参画)に取り組んでいます。皆さん使命感を持ってその現場で活動されていて、大変頼もしい。課題に立ち向かい、切り拓いていく力に感動しました。持続し拡大していく中では、さらに大きな問題を乗り越えていかなくてはならないでしょうし、自分が今持ってない力が必要となるフェーズもあるでしょう。この先のお話もまた聞きたいです」とコメントし、3人の女性起業家にエールを送りました。DTFAの大塚は、「皆さんのお話には感動しました。女性は『次世代のために、いい社会を作りたい』という意識が強いと思います。そういう女性の強みを活かしていきたいですね」と締めくくりました。
海洋国家日本から世界へ、イノベーションでブルーエコノミーの未来に挑む

海洋資源の持続可能な利用と環境保護を両立するブルーエコノミー。海に囲まれた島国日本にとっては、新たなビジネスフロンティアになるという期待が高まっています。伝統的な業界である水産業から最新の環境保全まで、ブルーエコノミーに革新をもたらすスタートアップが世界に挑もうとしています。身近な海とイノベーションが交差する未来を展望します。
フェムテック(Femtech)を活用した女性の健康課題の解決と働きやすい職場づくり

政府は、生理、更年期症状、婦人科がん、不妊治療など女性の健康課題による経済損失は年間3.4兆円と試算しています(*1)。日本は労働人口が減少し、男女格差の是正と女性のいっそうの活躍が必須となっており、企業には様々な人材が長く健康に働き続けられる環境の整備が求められています。テクノロジーで女性の健康課題を解決するフェムテックのスタートアップからは、企業経営にとって注目すべき様々な製品やサービスが創出されています。
Morning Pitch Special Edition 2025イベントレポート 最も躍進が期待されるスタートアップを表彰

2025年1月22日に、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社(以下、DTVS)/野村證券株式会社主催の「デロイト トーマツ イノベーション サミット 2025 / アントレプレナーサミット・ジャパン」が行われました。本イベント内の「Morning Pitch Special Edition 2025 」では、213社のスタートアップの中から最優秀賞とオーディエンス賞を選出。宇宙、不動産テック、医療、スマートシティ、量子通信、生成AI、地方創生と多様な領域を担う7社のファイナリストがいずれ劣らぬ革新的なソリューションを紹介し、社会を変える可能性を感じさせる特別な機会となりました。
Z世代に刺さるマーケティングを生み出す起業家たち

今後消費者の中核となっていくZ世代の重要性が増しています。物心が付いた頃からインターネットに接し、学生の頃からスマートフォンやSNSを駆使してきたデジタルネイティブで、Z世代に刺さるマーケティングは手法も多様化しています。同世代の起業家たちが生み出す、VTuberやショートドラマを活用する最先端のマーケティングに注目しました。
NOVAREを拠点に発展する清水建設のオープンイノベーション

清水建設はスタートアップとのオープンイノベ―ションに積極的に取り組んでいます。日本経済団体連合会(経団連)がスタートアップエコシステムに重要な役割を果たす大企業の取り組みを可視化する「スタートアップフレンドリースコアリング」の事例集では、「スタートアップの製品/サービスの社内調達」において優れた事例に選出されました。2023年9月に東京都江東区に新規オープンしたイノベーション拠点「温故創新の森NOVARE(ノヴァーレ)」を訪問し、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)活動を担うベンチャービジネスユニットの小原智剛氏と宮本飛悠氏にお話を伺いました。
スマートシティは実装段階へ――データ活用によるスマートな街づくり

「スマートシティ」というと何を連想しますか。次世代モビリティが行き交いAIやIoTといった技術をフル活用した先端的な未来都市でしょうか。しかし、日本の多くの都市やエリアで取り組みが進んでいるのは、ドライバー不足に悩む公共交通の維持や観光の活性化による地域振興など、デジタル技術とデータを活用した身近な街づくりです。都市課題解決に向け、世界的にスマートシティへの注目が高まっていますが、ビジネス化という面では難易度が高いテーマです。街づくりのビジネスに挑むスタートアップを紹介します。
スタートアップが描く新時代モビリティの未来像

コネクテッドカー、自動運転車、MaaS、EVなどがモビリティに欠かせないキーワードとなりました。CASEと呼ばれる世界的な潮流、日本の人口減少に伴う社会課題などを背景に、モビリティ革命ともいえる変化が生まれています。新しく形成された市場にはスタートアップの参入も相次いでいます。次世代のモビリティは私たちの社会や生活を大きく変える可能性を持っており、スタートアップがもたらすイノベーションへの期待が高まります。次世代のモビリティに挑むスタートアップを紹介します。
スタートアップの力を最大活用する「ベンチャークライアントモデル」セミナーレポート

2024年4月19日に、デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社(以下、DTVS)主催、27pilots Deloitte GmbH(以下、27pilots)共催によるセミナー「スタートアップ協業から戦略的利益を生む方法」を開催しました。大手企業とスタートアップとの連携は活性化していますが、出資やアクセラレーションという通常の手法では、協業やスタートアップの本格採用に至る確率が低いなどの課題があります。スタートアップとの協業から戦略的利益を得るための新しいアプローチ「ベンチャークライアントモデル」を日本でいち早く紹介したイベントの詳細をお伝えします。
目前に迫る「2024年問題」――物流改革で危機を乗り越える

2024年4月を迎え、物流の「2024年問題」が改めて注目されています。トラックドライバーの時間外労働時間の規制強化、高齢化、就業者の減少など、人手不足が深刻化しているのです。消費者にとって身近な宅配便の再配達問題がメディアで取り上げられる機会が増えていますが、物流の問題は宅配便にとどまりません。社会や経済を支える物流がこれまでのように維持できないという物流危機の到来が懸念されています。この課題を解決するために、スタートアップの活躍が期待されています。2024年2月にデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社(以下、DTVS)が開催したピッチイベント「Morning Pitch」に登壇した配送最適化サービスを提供するSWAT Mobility Japanを紹介します。
「デロイト トーマツ イノベーションサミット 2024—Morning Pitch Special Edition」イベントレポート

2024年3月21日に、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社ほか主催により、スタートアップやその最先端のイノベーションを発信するイベント「デロイト トーマツ イノベーション サミット 2024 / アントレプレナーサミット・ジャパン」が行われました。当イベント内で開催された「Morning Pitch Special Edition 2024 」の模様をお伝えします。※写真左よりDTVS斎藤、DataLabs田尻氏、ソニア・セラピューティクス佐藤氏
建設業界が直面する「2024年問題」にはDXによる生産性向上が不可欠

建設業や運送業で大きな問題になっている「2024年問題」。2024年4月から労働時間の上限規制が適用され、人手不足がいっそう深刻化することが避けられません。課題解決に向けたDXの推進に際して、スタートアップの持つ優れた技術やアイデアの採用が進んでいます。2024年1月にデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社(以下、DTVS)が開催したMorning Pitchに登壇した建設テックの2社、株式会社アイ・ロボティクス(以下、アイ・ロボティクス)と株式会社スカイマティクス(以下、スカイマティクス)をご紹介します。