個人消費

地方創生[1]の古くて新しい政策ツールに、ふるさと納税があろう。2008年5月の制度開始以降、所得再分配と産業振興を通じた地域活性化を担い、2023年度には寄附金額1.1兆円、利用者数1千万人に達した。しかし多くの場合、寄附金集めのチャネルにとどまり、納税者と地域とが新しい関係を構築する機会にはなっていない。ふるさと納税を、地域間の所得再分配を通じた産業育成への好循環につなげるためには、都市住民らを地域の潜在的な応援団とも言うべき「関係人口」[2] とする仕掛けが必要だ。まずは自治体が、マス向けで地域の魅力を伝えにくいプラットフォーマー頼みの状態からさらに進化する必要がある。そのためには、個へアプローチするD2C(Direct to Consumer)の考え方がカギとなろう。そして共感重視のアプローチとの両利きで域外の個人・企業との共創が促されれば、「自立的な地方経済」の実現が近づくはずである。

「物価と賃金の好循環」を実現する上で、賃金上昇に対する消費者の期待感は相当程度織り込まれてきた。前回のレポートでは、2022年以降の物価上昇局面において、消費者が節約志向とプチプレミアム志向とを使い分けてメリハリをつけている状況を示した。本稿では、主に商業動態統計調査を手掛かりとして、2024年度のインフレ下、日本人はどこで買い物をしてきたのかを確認する。さらに、業態間競合が激しさを増すだけでなく、トランプ関税などを機に経済の先行きへの不確実性が懸念される中、消費者から選ばれる小売り業態の特徴と、今後の持続的成長に必要な条件について考える。

物価高に伴って節約志向が強まる中、前回のレポートでは消費マインドを何が支えるのかを探った。今回は、節約志向と、価値を認めるものには出費を惜しまないプレミアム志向を使い分ける「メリハリ消費」について論じる。具体的な手法として商品・サービスの品目別に見て節約志向とプレミアム志向のどちらが強いのかを、いくらまで支出できるかという「支払意思額 [1](WTP)」に着目して定量化を試みた。その結果、20代の消費者にとってもプレミアム志向が強い品目が存在することが分かった。また、米価急騰がその他食品の消費トレンドを転換させた状況や、日常的な節約の中にちょっとした贅沢を求める消費者の姿も浮き彫りになった。コンシューマー企業がメリハリ消費を見極めることは、不要な価格競争を避け、付加価値を訴求する変化対応力を磨く1つのヒントとなろう。