デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下、DTFA)が企画立案から携わり展開してきた四国中央市のシティプロモーションは、始動から2年目に突入しました。本年度以降さらに本格化させステップアップすることを目指して、高校生、地元企業、市職員との対話を通してまちの魅力と未来像についての想いを固めるワークショップを数回に分けて実施しています。本記事では、そのワークショップの様子をレポートします。

持続発展するまちづくりの在り方を共有する場

2023年11月17日に開催された第1回目のワークショップでは、シティプロモーションの旗印となるロゴやスローガン制作に向けたアイデア出しなどを目的に意見交換が行われました。

今回のワークショップは、高校生、地元企業、市職員の方々の参加のもと、DTFAの運営により開催されました。前半は、本ワークショップを主催する四国中央市の担当者より冒頭挨拶やワークショップの目的についての説明、そして市の概要紹介がありました。後半は、高校生、地元企業、市職員の方々が3つのテーブルに分かれ、グループごとにまちの魅力や課題、将来像について意見を出し合いました。

冒頭挨拶

最初に、政策部政策推進課みらい創造室の大西宏室長からワークショップ開催にあたって挨拶がありました。

四国中央市では、人口減少や少子高齢化など地方の課題を解決するため、市として独自価値を創造し、選ばれる四国中央市を目指した活動を進めています。昨年度は「日本一の紙のまち」や「四国の真ん中に位置するまち」といった本市ならではの価値を様々な分野で発揮する未来を目指して、シティプロモーション戦略を策定しました。

2年目となる本年度の取り組みとして、シティプロモーションの旗印となるロゴやスローガンを皆さんに考えていただきたいと考えています。ワークショップ1回目の今回は、市の魅力やアピールポイント、持続可能な四国中央市について話し合い、旗印の制作に向けたアイデア出しをお願いします。四国中央市の様々なイベントや施設で使われるロゴやスローガンとなりますので、ぜひワークショップで楽しみながら皆さんの四国中央市に対する想いや夢を語っていただけたらと思います。

本ワークショップの位置付け説明

続いて、本ワークショップの担当者である政策部政策推進課みらい創造室の筱原勇弥さんから、今回のワークショップの位置付けについて説明がありました。

本日から始まるワークショップは、四国中央市が策定したシティプロモーション戦略の一環で行うものです。現在、全国の地方都市では人口減少や少子高齢化をはじめ、新型コロナウイルス感染拡大以降のライフスタイルの変化、働く場所の選択基準の多様化など、様々な課題に向き合っています。四国中央市も例外ではありません。持続可能なまちとして発展するためには、人口増加を目指した取り組みが必要です。そこで本市では、四国中央市にゆかりのあるUターン希望者を人口増のコアターゲットとして考えています。高校卒業後、市外の大学・専門学校への進学率が7割である本市では、就職や結婚・出産を機に地元に戻ってもらえるような、まちへの愛着を育てる政策を柱としました。

四国中央市のシティプロモーションは、単なる地元愛だけでなく、まちに貢献したいという気持ちを育むアプローチを大切にしています。最近は「シビックプライド」とも呼ばれますが、市出身の方々には、市外に出た際にまちをPRしてもらえるような人たちであってほしいとも考えています。市民へのアンケート調査によると、四国中央市民はまちへの愛着や誇り、幸せの実感度が高く、特に人間関係の充実度を重視していることがわかりました。一方で、紙産業が盛況で就職先自体は多いまちにも関わらず「働きたい仕事ない」「就職先がない」といったネガティブな回答も多く、市の魅力と若者との間にある意識のギャップが課題です。

昨年度に開催したワークショップの議題は「18年後のまちの未来像」でした。2023年3月のシティプロモーションのキックオフイベント「18っ祭!」では、ワークショップでまとめたアイデアをアーティストの鷲尾友公さんがイラスト化したビジョンマップを公開しています。本年度は、シティプロモーションの旗印となるロゴ、スローガンの制作を目指しています。本日のワークショップでは、ロゴやスローガンのコンセプトのアイデア出しをお願いします。

話し合いの材料になる市政に関するスライド説明

政策部政策推進課の宮崎博行さんが、スライドを使って四国中央市の概況や歴史、特に紙産業の成り立ちやまちとの関わりに関する説明を行いました。四国中央市が推進する地域産業人材定着事業や、紙産業のまちに愛着を持つシビックプライドを育むための小学生向け職業見学や中学生向けものづくり体験講座などの取り組みについて、参加者は熱心に聞き入っていました。

SROI(社会投資収益率)によるワークショップ開始

後半は、DTFAによる司会進行のもと、実際にワークショップが行われました。

本年度のワークショップでは、SROI(社会投資収益率)を用いたフレームワークが採用されています。SROIとは、政府、非営利団体等によるプログラムの価値を評価するために生まれたフレームワークです。このフレームワークでは、図1に示す6つのステップを通じて、定性的・定量的に取り組み等による社会的インパクトを分析します。今回もこの6つのステップに沿ってまちを分析評価していく計画で、今回のワークショップではステップ1と2が行われました。なお、SROI分析の詳細についてはこちらをご参照ください。

【図1】SROI分析における6つのステップ
出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

まず、3つの異なるステークホルダーである市職員、高校生、地元企業のグループに分かれてテーブルに着きました。最初に、まちにお金や人、物が投入され、そこからどんな活動が生まれて、どういった変化が起こっていくのか、鎖状になったロジックモデルを使って議論が進められます。各テーブルで、参加者がイメージする四国中央市の地域資源やステークホルダー、今感じている魅力や足りない点、未来像のアイデアを付箋紙に書いていきます。例えば、高校生グループの付箋紙の中には「日本一の紙のまち」「紙産業の従事者が多い」など、市の価値を代表するキーワードが並んでいました。

このように、ワークショップを通して、これからの四国中央市がどのように変化をしていくか、モデル化していく作業が行われました。

ステークホルダーそれぞれの傾向がよく出たまとめ発表

ワークショップの最後には、話し合った内容をまとめとして発表しました。3つのグループがそれぞれ、ステークホルダーの立場を明確に表していました。

まず、高校生グループが思い描く市の未来像は、紙産業を中心にまちが持つ伝統・歴史を活用した地域活性化や、自然・名所のさらなる観光地化の推進など、地域資源を生かした素直な将来をイメージしていました。また、四国中央市が行っている紙オムツ配布など、まちならではの子育て支援を通した住みやすいまちづくりへの期待も大きい印象でした。

次に、市職員グループは四国新幹線や大型商業施設の誘致など、人口増加や市の発展に向け、利便性が高く快適に暮らせる環境を重視していました。「都会的」といったキーワードも登場し、まちづくりに対する行政の立場が特色として出ています。

そして、地元企業グループの発表では、イベントや自然が気軽に楽しめて、子育てがしやすく、企業同士のつながりで結ばれたまちを目指すイメージが登場しました。まちの活性化に対して、企業が果たすべき役割を実践し、活気のある未来像を重視していた点が印象的でした。

地元愛の強い市民の想いをどのようにシティプロモーションへと反映していくことができるのか。ワークショップの成果が期待されます。

DTFA Times編集部

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