四国中央市のシティプロモーションの幕開けとして開催された「18っ祭!」は、四国中央市の市民からどのような反応があり、今後、どう展開していくのでしょうか。第2回の開催(2024年3月10日予定)に向けて次の代の高校生達が動き出した今、昨年度に引き続きシティプロモーションの企画・運営を担当している四国中央市みらい創造室の筱原勇弥さん、進藤頼厚さん、篠永友洋さんに昨年度の振り返りや今年度への想いについて伺いました。

筱原 勇弥さん

四国中央市みらい創造室

2002年、旧伊予三島市役所に入庁。文化振興・社会教育の生涯学習分野、障がい者福祉、窓口センター、法制執務、庁内の情報システム分野、学校関係の管理・ICT関係業務を経て、現在のシティプロモーション、DX推進業務に従事。

進藤 頼厚さん

四国中央市みらい創造室

2002年、旧伊予三島市役所に入庁。ソーシャルワーカーとして福祉分野にて約20年地域福祉に携わる。令和4年度から現在のシティプロモーション推進、DX推進業務に従事。地域共生社会を実現するため、医療福祉の視点からまちづくりに取り組む。

篠永 友洋さん

四国中央市みらい創造室

愛媛県庁におけるG20大臣級会合受入、循環型社会形成、福島県庁における被災企業の支援などを経て市役所に入庁。地方創生を軸に、移住促進、官民連携SDGs推進組織の立ち上げ、市外企業との共創事業の調整を担当。

地域と若者の絆を深めるイベントで意識改革を推進

――第1回の「18っ祭!」から半年が経ちました。イベント開催による効果、また、若者と地域との絆を深める一歩を踏み出せたと実感するような出来事があればお聞かせください。

筱原:第1回の「18っ祭!」に運営で参加した高校生から「今年もイベントは開催するんですか?参加してとても良かったので、またぜひ関わりたい」といった声が届いています。

篠永:地域で活動をしている個人や団体からも、自分たちの活動とつなげてイベントと連携したいという話をいただきました。

――市役所内での反応はいかがでしたか。

筱原:市外で暮らしている若者が一斉に帰省する成人式とセットで開催する発案があり、実現に向かって動き出しています。18歳の若者が四国中央市に戻って集まる絶好の機会を活かせたらと考えています。昨年度でも成人式と同時開催するアイデアはありましたが、残念ながら準備の都合で実現しませんでした。今後の実現に向けて、計画をまとめています。

――昨年度を踏まえて、今年度のシティプロモーションへの取り組みの特徴を教えてください。

篠永:DX戦略の中で、昨年度計画していた「共創スペース」を2023年12月にオープンしました。民間運営の施設で、市内の方と市外の方が協業できる場所です。企業同士のマッチングや地域住民レベルでのイベント開催なども可能になりました。

筱原:昨年度「18っ祭!」で活躍した高校生の運営メンバーからは次回開催への問い合わせはあったものの、実際の参加者は少数にとどまりました。興味はありながらも、毎年参加してもらうことの難しさを感じました。運営メンバーが一新されることは、新たなテイストになるメリットはありますが、参加した高校生にとっては最初からイベントをつくり上げる労力が必要になります。運営ノウハウが継承されない点は気がかりです。今年度は、継続できる仕組みづくりの重要性を模索しています。

高校生がボランティア活動をしたい場合、ボランティア市民活動センター、通称「ボラセン」が窓口となっています。高校生にとって、これらのボランティア活動と近いものかもしれませんが、「18っ祭!」は地域との関わりをより重視している特色があります。一般的なボランティア活動との違いを具体的に発信し、関心を持ってもらえたらと考えています。

進藤:昨年度の「18っ祭!」で活用したSNSは残っているのですが、イベント終了後、情報発信が途絶えています。継続して地元の高校生に興味関心を持ってもらうためにも、定期的な情報発信の必要性を感じています。

第1回「18っ祭!」に参加した高校生たち

課題は「18っ祭!」の運営ノウハウをどう継承するか

――シティプロモーション全体にどんなことを期待していますか。

進藤:「18っ祭!」は四国中央市を巣立つ3月のタイミングで開催されます。そのため、このまちの家族や友人、景色などを印象付ける試みができたらと思います。

昨年度第1回の「18っ祭!」は、準備期間が短期間だったにも関わらず、高校生が目に見えてポジティブに変化しました。たった数カ月の間に、大人が目を見張るほどの成長ぶりでした。ただ、その後どのような人生を歩んでいるのかが見えない寂しさがあります。そのため、運営に参加した若者が成人式のタイミングで四国中央市に戻って来た際、同日開催で「18っ祭!」のイベントにも参加する流れを具体化していきたいです。

筱原:また、2025年1月は四国中央市発足20周年であり、初代の運営高校生メンバーが20歳を迎えます。その成人式の機会に「18っ祭!」のイベントもサポートしてもらえる仕組みづくりを検討中です。運営ノウハウ継承の一助となればと思っています。

――日常業務とは異なる「18っ祭!」ならではの特徴はありますか。

進藤:「18っ祭!」は、一から高校生が主体となってつくり上げたイベントです。10代の感性で自分たちがオリジナルなものをつくっていく体験の素晴らしさを、次の世代にも味わってもらいたいです。そして、人が成長する瞬間に立ち会える、大人にとっても大いに価値のあるイベントだと思っています。

昨年度は高校生を中心に参加団体や企業の方々も、イベントを成功させるため皆さん真摯に取り組んでいただきました。シティプロモーション計画にある「熱中する」「場を盛り上げる」といったプロセスを歩んでいると思います。こうしたイベントの魅力がもっと市内に広がれば、まちの活性化や市の事業に対する市民の見方も変化するのではないでしょうか。

――前回の反省点を踏まえ、今回はどのような点に注意が必要だとお考えでしょうか。

進藤:1年を通して「18っ祭!」の活動を続けていく必要があると思います。前回はメンバー募集から始まってイベントまで短期集中でこなしたため、継続していく仕組みづくりまで至りませんでした。部活動のようなスタイルで、高校生の運営メンバーが定期的に活動を続ける必要があります。

筱原:今後、成人式に合わせたイベント開催になると、受験の年に当たる高校3年生は秋以降の運営参加が難しくなります。そのため、高校2年生をコアメンバーとする活動が理想です。

進藤:その年度で計画されたイベント準備期間を踏まえて、その年ごとの高校生の感性でイベントの目的や開催方法を柔軟に変えていく対応も今後は必要になると思います。「18っ祭!」を継続していくことも重要ですが、運営で参加する高校生の感覚を大切にしながら、バランスのある事業を意識していきたいです。

多くの市民が参加し、好評を博した第1回

市民へ向けたシティプロモーションの情報発信を強化

――企業を巻き込む働きかけについてはどうでしたか。

筱原:持続可能な経営活動を求めて積極的に参加してくださる企業の方々には感謝しています。市役所としても、真摯な思いに応える綿密な計画と丁寧な事業展開が必要と考えています。

例えば、今年度はロゴやスローガンの開発で旗印づくりがシティプロモーションに含まれています。その際も「四国中央市をアピールし、まちの価値を高め、結果として企業の利益にもつながる」という意識でシティプロモーションを進めている市の本気が伝わればと思います。

実際にSDGsの分野でも真剣に関わってくださる企業ばかりなので、四国中央市が「18っ祭!」を通してまちの未来を創造している取り組みに対する理解を求めていきたいです。特に、今年は地元企業の若手社員との連携を進め、高校生の企画運営にアドバイスで参加してもらう働きかけも続けています。

――シティプロモーションで今後取り組みたいと考えていることはありますか。

筱原:四国中央市民にまちの魅力を質問したら「日本一の紙のまち」という答えが返ってくると思います。ただ、その事実を市の誇りとして感じているかはまた別問題ではないかと感じています。

シティプロモーションでは、紙業をはじめ自然やグルメも含めた四国中央市の魅力にもっと誇りを感じられるアプローチが必要です。市民1人ひとりが誇りに感じていることなら、単なる知識レベルだったまちの魅力を様々な形でシェアしてもらえるからです。

例えば、子どもたちが学校で使うノートはどのまちで生産されたものか、市民はあまり意識していないと思います。紙関連のアイテムは地元産の商品から選んでもらうなど、紙のまちとして地道な取り組みも必要かもしれません。

篠永:「日本一の紙のまち」を市民がもっと具体的にイメージできるプロモーションが必要だと感じています。一口に紙といってもセルロースナノファイバーのように、環境に優しく高機能な新しい種類も登場しているなど、市内向けの情報発信を強化していきたいです。

世界的に注目される新しい紙を四国中央市で製造している事実を知ってもらい、まちへの愛着心や誇りにつなげるより具体的な広報活動を検討しています。

――お話を伺って、次回開催がますます楽しみになりました。本日はありがとうございました。

DTFA Times編集部