2023年3月5日、四国中央市のシティプロモーションのキックオフイベント「18っ祭!」が開催されました。今回のイベントにあわせて開催された「マルシェ」に出店した、飲食店を営む森實大祐さん、渡邊雅信さん、前田和美さん、雑貨店を営む眞鍋佳那さんに、地域の企業商店の視点から見たイベントの意義やまちづくりへの思いを伺ました。

マルシェを通じて生まれた横のつながり

森實大祐さん・渡邊雅信さん

渡邊雅信さん(左)、森實大祐さん(右)

——森實さんは、市内の和食店「浜政」を経営されており、このイベントではカレーライスなどを販売されています。今回のシティプロモーションの企画を初めて聞いたときの印象をお聞かせください。

森實:「18っ祭!」のイベントに合わせてマルシェも開催するというお話は、地域の盛り上がりにつながるので単純におもしろいな、と感じました。

自身で料理教室を開催したことはありますが、マルシェのようなイベントに参加する機会はありませんでした。しかし、今回は企画の段階から携わり、マルシェに参加するショップの取りまとめを担当するなど、様々な店舗とのやりとりは楽しかったですね。

——イベントは高校生が主体でしたが、若者と一緒に企画・運営に関わってみた感想はいかがでしたか。

森實:企画の立ち上げ段階で、高校生がマルシェの出店候補として選んでいたのが、菓子店やアクセサリーショップなど、ほとんどが若者向けのショップだったので、年の差を感じました。

当日の会場を見てもわかるように、イベントには幅広い年齢層の方たちが来場されます。高校生が主体のイベントというコンセプトは大切にしながらも、地域の子どもから高齢者の方まで気軽に参加してもらえるように、フードをもっと入れたらいいのではないか、といったアドバイスをしました。

——他の参加店舗と連携していくなかで、何か新たに生まれたものはありましたか。

森實:横のつながりが増えましたね。「お店やオーナーさんの名前だけは知っていても、実際にお話したことはない」といった方たちとのコミュニケーションが広がって、情報交換ができました。

——実際にイベント当日を迎えて、予想と違った点はありますか。

森實:「イベントの周知が十分でないのでは?」という声は上がっていました。高校生が運営メンバーの主体となって企画を進めたこともあり、SNSとブログなどインターネットを主な情報発信に使っていましたが、大型スーパーや産直市など、生活に身近な場所にポスターを貼らせてもらうなどしてもよかったかもしれません。予想以上に来場者は多かったので安心しましたが、高齢者が多いまちなので、次の開催では周知方法を検討すべきかなと感じています。

ただ、今回は時間の限られたなかで準備を進めていたので、高校生も大変そうでしたね。来年はもう少し早く取りかかる、メンバーを増やすなどしてPRにもっと力を入れれば、より一層賑わうだろうと期待しています。

地元の魅力を再発見できるきっかけづくり

——渡邊さんは市内のイタリア料理店「三島バルevoevo」で、今回のイベントにも森實さんと連携して参加されています。まちづくりに対する思いについてお聞かせください。

渡邊:四国中央市は自然が豊かで、海から山までの距離も近いため、アウトドアスポーツをテーマに地域活性化ができないかなと考えています。

例えば「サイクリストの聖地」として世界的に有名な「しまなみ海道」と連携して、ヒルクライムなど自転車ロードレースで人の流れを呼び込む、といった方法もあるでしょう。また、吉野川のラフティングや瀬戸内海のシーラフティングなど、ウォータースポーツ愛好者の中継点になり得る可能性を活かせないか、といったアイデアもあります。

近隣のエリアにある知名度の高い観光資源に乗っかるかたちで、四国中央市の魅力も感じてもらえる、そんなまちづくりも有効ではないでしょうか。

——この企画の目的でもありますが、若者が戻ってくるためのまちづくりには何が必要だと思いますか。

渡邊:大学や遊ぶ場所などを含めて「何もないまち」なので、高校生が一度はまちを出て都会で暮らしたいという気持ちはよくわかります。

他の自治体でも取り組みをしている例がありますが、高校生の会社をつくり、地元にいる間に若者に仕事の楽しさを覚えてもらう、というのもいいかもしれません。このまちで働いた経験が、Uターンのきっかけのひとつになると思います。

森實:四国中央市で毎年開催されている「書道パフォーマンス甲子園」のような、全国的に有名になったイベントを大切に続けるというのも、まちづくりで大切なポイントだと思います。まちを離れて都会で暮らす人たちに、地元で面白そうなイベントを開催している様子を伝えることで、地元の魅力を再発見してもらえる機会になるでしょう。

今回の「18っ祭!」はまちのお祭りというスタイルにしたことで、「紙」や「書道」以外のもっと広いジャンルを取り込める点がメリットですね。これからの市のまちづくりに役立つコンセプトだと思います。来年以降も地元の商店として参加をして、まちを離れた若者が戻ってくるきっかけになるような、にぎやかなイベントに育てていきたいですね。

出所:18っ祭!公式Instagram(https://www.instagram.com/city_18_hs)

高校生のきめ細やかなイベント運営に期待

前田和美さん・眞鍋佳那さん

——前田さんは、市内で青果とおにぎりのお店「まる」を運営されており、今回のマルシェにはおにぎりで出店しています。また、眞鍋さんは、アロマショップ「Apt15」で出店されています。今回の「18っ祭!」のお話を聞いた印象はいかがでしたか。

前田:高校生が活躍できる場が生まれるのは素晴らしいアイデアだと思いました。ちょうど私の娘も18歳で同級生の子どもたちも今回のイベントには多く参加しています。コロナ禍で思うように高校生活を楽しめなかった感がある若者が、自分たちで主催して大きなイベントを運営することは、親の年代の私としても嬉しくて、精一杯応援したいと感じました。

眞鍋:高校生と企画スタッフが企画書を持って来店され、参加を依頼されたのがきっかけです。私自身も、一度まちを離れて最近四国中央市に戻って来たということもあって、もっとまちづくりに貢献できないかなと思っていました。今回のようなマルシェに参加するには良いタイミングだったと思います。

——高校生と関わるなかで苦労された点はありますか。

前田:最初は、高校生のなかで運営の中心となるメンバーがいなかったようで、高校生たちも自分たちがどう動けばいいのか戸惑っている様子でした。イベントが近づくにつれて一体感が生まれてきましたが、途中までは若者同士のコミュニケーションがうまくいっていなかった印象がありました。

そのため、私のところにも色々と質問しに来てくれて、距離感が縮まって嬉しかったものの、企画として具体的にどのように動いているのかは見えづらかったところは参加する側としては苦労しましたね。

高校生がマルシェの参加を依頼した店舗のなかには「応募期限をはっきりと伝えられていなくて、参加希望の連絡をするとすでに締め切られていた」とか「イベントが近づいているのに、直前まで当日の流れについて具体的な説明がなかった」というケースもあったようです。

ただ、高校生が主体のイベントだったので、大人の立場で協力はしつつ、どこまで踏み込んで関わればいいのか、そのバランスが難しかったですね。

——高校生との関わりや今回のイベントを通して、新しい発見はありましたか。

前田:高校生とやりとりをし始めた頃は「まだまだ子ども」と思うこともありましたが、付き合っていくうちに、イベントの情報発信のため高校生が作成した記事も大人顔負けのレベルでしたし、開催が近づくにつれて参加店舗への連絡や確認などもしっかりしてきました。

今回は企画の立ち上げから開催までタイトなスケジュールだったので、もう少し時間を与えてあげれば、もっと高校生もきめ細かな運営ができていたと思います。今年の成功をきっかけに、ぜひ来年も高校生が主役でまちを盛り上げてもらいたいですね。

——一度市を離れて都会で暮らしている人たちが、このまちに戻って来たいと感じるには何が必要だと思いますか。

眞鍋:このまちに戻ってきたときに、地元の生活に溶け込める支援だったり、ふらっと立ち寄れる個性的な個人店だったり、そういう地方の魅力を感じられるような取り組みが必要かなと思います。

今回マルシェに出店しましたが、「18っ祭!」も市の魅力を内外に伝える、大切なまちづくりのひとつになると思います。地元の高校生や若者を応援するためにも、来年もぜひ参加したいです。

アロマショップ「Apt15」

市役所担当者から

今回の「18っ祭!」におけるマルシェの成功には、地域の商店さんの出展協力にとどまらないイベント運営への細かなアドバイスが不可欠であったと考えています。例えば、当日の日照や人流を考慮したお店の配置などについては、市役所が気付きにくいことでした。これをサポートしてくださった商店の皆さまには心から感謝しております。
また、イベントを企画運営した高校生にとっても、「得意なことは得意な人に聞く」という学びになったはずです。日頃は学校内や学習塾などの閉じた環境での活動になりがちな彼らですが、既存のコミュニティ内にはないノウハウは、外に飛び出すことにより獲得でき、課題解決につながる、という成功体験になったのではないかと考えています。あわせて、地域に顔見知りの大人ができたことも、将来的なUターンにつながる良いきっかけであったと思います。
今回、イベントに関わった高校生にはこの地域とのつながりをもとに、将来様々な方面で活躍していただきたいと思います。

DTFA Times編集部