2023年3月5日、四国中央市のシティプロモーションのキックオフイベント「18っ祭!」が開催されました。今回のイベントを含めシティプロモーションの企画・運営を担当している四国中央市みらい創造室の筱原勇弥さん、進藤頼厚さん、篠永友洋さんにシティプロモーションの経緯や狙い、「18っ祭!」で関わった若者たちとの交流などについて伺いました。
目次
筱原 勇弥さん
四国中央市みらい創造室
2002年、旧伊予三島市役所に入庁。文化振興・社会教育の生涯学習分野、障がい者福祉、窓口センター、法制執務、庁内の情報システム分野、学校関係の管理・ICT関係業務を経て、現在のシティプロモーション、DX推進業務に従事。
進藤 頼厚さん
四国中央市みらい創造室
2002年、旧伊予三島市役所に入庁。ソーシャルワーカーとして福祉分野にて約20年地域福祉に携わる。令和4年度から現在のシティプロモーション推進、DX推進業務に従事。地域共生社会を実現するため、医療福祉の視点からまちづくりに取り組む。
篠永 友洋さん
四国中央市みらい創造室
愛媛県庁におけるG20大臣級会合受入、循環型社会形成、福島県庁における被災企業の支援などを経て市役所に入庁。地方創生を軸に、移住促進、官民連携SDGs推進組織の立ち上げ、市外企業との共創事業の調整を担当。
高校生を中心に議論を深める意義
――今回のイベント「18っ祭!」のきっかけとなった、四国中央市のシティプロモーションの全体像についてお聞かせください。
筱原:どの地方の自治体も若者流出の悩みがある中、四国中央市も同様の問題を抱えています。自分自身も大学進学を機に一度ここを離れた身ですので、都会への憧れといった気持ちはよくわかります。ただ、進学で一度市外に出てしまうのは仕方がないとしても、卒業後に就職や結婚・出産などのタイミングで帰って来てもらいたいという思いがあります。
そこで、地元で暮らす学生のうちに市に深く愛情を感じてもらい、いつか四国中央市に帰って来ることを選択肢の1つに加えてもらえないか、という思いがそもそもの始まりです。この5年間でまずは若い世代にターゲットを絞ってプロモーションを仕掛けて、ゆくゆくは親世代など大人世代への働きかけも考えています。
篠永:高校卒業後の進学率が比較的高いものの、大学がない四国中央市では18歳を起点に市外に出るのは既定路線になっています。ですから、いかにして戻って来てもらえるかが鍵を握っていると思います。
進藤:色々な経験をして帰って来てもらうことができれば、まちにフィードバックしてくれるはずなので、その点はメリットだと考えています。
――ワークショップを通じて議論を深めたと伺っていますが、どのような内容だったのでしょうか。
筱原:ワークショップで未来について話し合いを進めていく中で「18」というのがキーワードとして出てきました。四国中央市が誕生して18年ですが「では18年後はどんなまちになっているのだろう」といったテーマで議論を進めていったのです。
具体的に構想を形にしていく段階で、ターゲットとする若者が親しみやすく、いつでも目に入るように、文章ではなくビジョンマップを制作しようという流れになりました。
高校生からは「わくわくする」「おしゃれ」といったキーワードが出ていました。四国中央市は生活するには困らないものの、遊ぶ場所や文化を感じられる施設があるか、といった点では難しい面があります。大人は車で遠方まで行けますが高校生は自転車でアクセスできる範囲も限られるため、どうしても松山や高松などの都市に電車で遊びに行くことになり、便利な都会への憧れはますます強くなるのだろうと感じます。
寄り添う姿勢で大人たちがサポート
――ワークショップの議論の中ではほかにどういった話題がありましたか。
筱原:最初は「インバウンドなどの旅行者を引きつけよう」「市内にみんなが立ち寄れる場所があればいいのでは」といった提案もありました。「伝統工芸の水引を使ったアート作品を活用した芸術祭をする」「ローマ法王に献上した名産の五葉松の盆栽を展示する」など、外国人にも興味がありそうな素材を活用してはどうだろうと、といったトピックもありました。
――若者に焦点を絞ったイベントを開催することになったきっかけは?
筱原:当初は、今年から18歳が参加できるようになった成人式の中で18歳の若者が市政18周年を祝う企画を実施してはどうか案もありましたが、20歳の人たちへの配慮も必要だったので、成人式とは別で18歳の若者にまちづくりのためのイベント開催を任せてみよう、という話が生まれました。
――イベント企画には様々な課題があったと思いますが、どういった点が大変でしたか。
進藤:市側としては、18歳が主役になるイベントなので高校生の意見を中心に反映させていきたいという思いがありました。ただ、地域の大人も巻き込みたいとなると、大人の声が大きくなってしまう恐れがあります。
「18っ祭!」では、市民が気軽に参加できるようにマルシェなども開催する話となりましたが、高校生と大人側の意見のバランスをどう調整していくかに配慮しました。
また、本格的なイベントの企画・運営の経験がない高校生が動きやすいように、高校生に寄り添ってアイデアを引き出したり、具体的にどういった手順でやればいいのかなどを一緒に考えたりしました。大人の視点からすると「もっとスマートなやり方があるのでは?」と感じる部分が出てきても、高校生の自主性を大切にして見守る姿勢を取りました。
人と人とのつながりを大切に育てる
――高校生たちと接して、どのような印象的を持ちましたか。
篠永:ワークショップなどの発言を聞いていると、地域のこれからについて、大人が想定する以上に、よく考えていると感じました。また、試験や学校行事もあって大変だったと思いますが、1人ひとり真剣に取り組んでくれたと思います。その後のイベント準備をしていく中でも、高校生を中心に人と人がつながっていき、次々と展開していった様子を間近で見て本当にすごいなと感じました。今回の活動を通して高校生同士がつながっていったのはもちろん、高校生と商店、商店同士など、地域の人たちや地域の資源とも高校生が接点をつくることができた手応えがありました。
筱原:このイベントのようなきっかけがなければ、今回マルシェに参加してくださった商店主の皆さんに高校生自ら声を掛けるといった機会はなかなかなかったでしょう。「18っ祭!」というイベントを通して、地域には様々な人たちが働いていることを高校生も知ることができたはずです。一方で大人も、高校生が新しいチャレンジする様子は新鮮だったのではないでしょうか。
進藤:マルシェの店舗は、高校生が1つずつアタックして参加の約束を取り付けていきました。おかげで、予想以上に多くの屋台やキッチンカーで賑わいましたし、参加店舗数も安全性が保たれてキャパシティが許す限り、高校生の判断に任せました。
一方で多数のアイデアは出るものの実現性があるか、どのように企画にしていくかといったあたりは高校生にはあまり経験がない部分だったため大人がフォローしていきました。準備を進めていく中でそれを学び、彼らが成長していく様子を感じることができました。
――今後の展開についてはどのように考えていますか。
筱原:今後このイベントを継続的に盛り上げていくには、今回のイベントで生まれたつながりを大切に育てていくことが大切です。例えば部活の先輩・後輩関係はつながりが強いので、地元出身でこの地域で働いている「お兄さん・お姉さん」を巻き込むような方向でも、地域おこしを進めていきたいですね。
篠永:地元企業の若手社員がイベントを応援したいという動きもあるので、しっかりとキャッチして次回につなげていきたいです。
進藤:地元の大人たちが、高校生にとって憧れの存在であるということがとても大事なポイントだと思います。
筱原:イベントを経験した人たちが、毎年このイベントのために市に帰ってきてくれるように今後もぜひ「18っ祭!」を続けていきたいと考えています。