2023年3月5日、四国中央市のシティプロモーションのキックオフイベント「18っ祭!」が開催されました。今回のイベントの企画・運営に関わった地元の高校生の新田心春さんと寺尾桜さんに、参加したきっかけや運営してみた感想、まちづくりへの思いなどについて伺いました。

始まりは、地域貢献に対する興味と好奇心

新田心春さん(左)、寺尾桜さん(右)

——今回のイベントに参加することになったきっかけを教えてください。 

寺尾:私はもともと高校2年生のときから市役所のワークショップに参加したり市民リポーターやライターをやったりしていました。そこでお世話になっていた市役所の方から「今度シティプロモーションで18歳の高校生を主役にした企画を進めているので参加してみませんか?」という話を聞きました。

そのとき「大人だけでなく他の高校生ともイベントを通して交流すればもっと自分の視野が広がるのではないか」と思って参加を決めました。

「18っ祭!」に関する具体的な活動は、地元の人、アーティストさん、市役所の方々、このプロジェクトの企画立案を行うデロイト トーマツの皆さんが集まったまちづくりのワークショップです。伝統産業の水引を使ったり、市が誕生した18年前に遡ってまちの魅力を再発見するプログラムに携わっていくうちに、高校生として地域に何か貢献してみたいと感じたんです。

新田:私は秋に大学受験が終わって、卒業までの期間を有意義に過ごしたいと思っていたタイミングでワークショップの話を聞きました。まちづくりやボランティアに興味があったので、迷わず参加を決めました。

最初のワークショップの段階では、高校生が主役というテーマだけで、まだ具体的にどういった企画をするのか決まっていませんでした。話し合いを重ねるうちに、高校生だけでなく地元の大人の方々も巻き込むこうした大規模なイベントになっていったので、びっくりしています。

幅広い世代との交流が刺激に

——運営をしていく中で、思った以上に大変だったこと、苦労したことはありますか?

寺尾:スタッフ間での連絡が大変でした。最初はLINEを使って連絡していましたが、今までLINEは友だちや家族と身近な話題を交換するだけのツールだったので、今回のようにイベント運営に関する連絡や調整といった難しいことをテキストでやりとりするのにも苦労しました。LINEの場合はPDFやExcelの書類をチェックするのが大変でしたし、タイムラインが流れていってしまい、大切な情報が抜けてしまっていたこともありました。

新田:準備が進むにつれて運営マニュアルのチェックや修正などWordやExcelを使う必要が出てきたので後半はパソコンを使うメンバーも増えてきたのですが、初めてパソコンのメールを使う人も多く、情報共有が上手くできないことが多くて大変でした。

——これまで今回のイベント以外で他校の高校生とのつながりはありましたか?市内の高校からメンバーが集まった印象はいかがですか?

新田:これまでは、コロナ禍の影響もあって全く交流がありませんでした。

寺尾:ワークショップから参加しているコアメンバーは、「18っ祭!」に自主的に参加していますが、当日ボランティアや企画委員といったメンバーは企画を進める中で学校に許可を取って募集をかけました。途中から役割分担をしていく流れになり、グループ作業が増えてくると、学校が違うだけで考え方やコミュニケーションの取り方にも違いを感じることも多く、まとめていくのが大変でした。

新田:高校生は大人のように、相手に気を遣いながらコミュニケーションを取ることに慣れていないので、距離感を縮めるまでに時間がかかりました。ですが、一度会話のきっかけをつかむと、お互いのことがよくわかり打ち解けられました。高校生同士の交流が深まったことも、今回のイベント運営での達成感につながっています。

出所:18っ祭!公式note(https://note.com/city_18_hs/)

——大人とのコミュニケーションで大変だったことや印象的だったことはありますか。

新田:文章でやり取りする際、敬語やビジネス文といった言葉遣いで苦労しました。目上の方に対してどのように文章を始めたらいいのか、絵文字を使ってもいいのか、など、悩みながらやりとりしていました。直接会うときは皆さん気さくに話してくださるので問題ないのですが、文面となると慣れていなくて。学校の先生と話すのとも違って、仕事をしている緊張感がありました。

寺尾:関わってくれる大人の皆さんは、地域をより良くしたいという気持ちを持った方たちばかりでした。高校生にも優しく接してくれたのが印象的でした。足りていないものはないか気遣ってくれたり、もっとこうすればいいのではといったアドバイスをしていただいたり。今まで大人との関わりというと家族がメインだったので、地域の大人方たちの温かさを感じられた体験からも「このまちっていいな」と思いました。

新田:関わってくださった大人の方々に恵まれていたなと感じます。作業に遅れが生じてしまったときも、デロイトの方たちは柔軟にスケジュール調整してくださったので、感謝しています。

イベントの継続で地域とつながる機会を増やす

——運営を始める前と今とを比べて、成長を感じる点はありますか?

新田:良い意味で人に頼ることができるようになりました。最初は周りに気を遣い過ぎて仕事をため込んでしまうこともありましたが、大人の方にはもちろん高校生メンバーにも「ちょっと手伝ってもらえない?」って素直に言えるようになれました。そういった体験を通して「仕事って大変なんだな」と感じたり、周りの人たちに感謝する気持ちが芽生えたりしました。

寺尾:高校生メンバーが頑張っている姿を間近で見ながら、1人ひとりの魅力を理解できたことが良かったと思います。

——「18っ祭!」をきっかけに地元に戻って来たくなる人が増えると思いますか?また、他に何があればそう感じられるでしょうか?

新田:正直なところ、このイベント1回だけで地元に戻ってくる人が増えるかというと、それは難しいと思います。自分たちの中では一生懸命気持ちを込めてつくり上げたイベントですが、市外で暮らしている人たちからすれば「高校生が何かイベントやってる」ぐらいにしか見られないと思うので。でも、今回をきっかけに来年以降も続けていけば、まちへの見方が変わっていくのではないでしょうか。

戻って来たくなるかどうかで大切なのは、子育て支援を含めて、市全体でこのまちを良くしていきたいという気持ちだと思います。人の温かさだったり、1つのことに一生懸命取り組んでいる姿だったり、そういうものがあれば地元に帰りたいなと私は思います。

寺尾:これまで体験した様々なワークショップや今回のイベント運営のように、地域の人たちとつながることができる機会や時間がもっと増えればいいなと思います。

市役所担当者から

今回の取り組みは、新田さん、寺尾さんはじめ高校生の皆さんの主体的な参加により無事キックオフができました。高校生の皆さま、ご多用の中を送迎などでサポートいただいた保護者の皆さまには心よりお礼を申し上げたいと思います。
イベントにあたっては、高校生にとっても有意義な経験が多かったのではないかと思います。まずは、地域の飲食店や企業の方とつながりができたこと、これは、進学などで都会へ出ていつか地元に帰る際にある種の安心材料となると思います。また、イベントの実施を通じた学びもあったのではないかと思います。例えば、取り組みの主旨の言語化、様々な世代の関係者とのコミュニケーション、オンライン上での資料のやりとり、詳しい人に頼ること、これらはぜひ将来、様々な場面で生かしていただきたいと思います。
市としても、新田さんが仰る通り、今回の取り組みだけで若者のUターンにつながるとは考えておりません。この取り組みを基軸として、地域の様々な方、市役所の他部署と密に連携を図り、市の魅力向上に努めて参りたいと考えています。
イベントは次年度も継続しますので、今回参加した高校生メンバーにも、地域を離れてもこの18っ祭!には戻ってきていただき、またお話ができればうれしいです。

DTFA Times編集部