シナリオ

  • 本を読む人

    欧州のAI(人工知能)政策専門家たちによる近未来予測「Europe2031」は、AI政策に関する判断ミスが衰退を招く様相を描き出し、世界中に波紋を広げた。前回の論考ではEurope2031が提起した地政学的・経済安全保障上の課題=内容(コンテンツ)を取り上げたが、本稿ではその形式(フォーム)に焦点を当てる。Europe2031の執筆者たちは、従来の政策文書形式を排し、「SFプロトタイピング(Sci-Fi Prototyping / Speculative Fiction Prototyping)」と呼ばれる手法を用いて、政策当局者の感情と直感に刺さる物語を紡ぎ出した。生成AI、自律型AIエージェントが急激に普及・進化している現在、SFプロトタイピングをAIと融合させるアプローチは、政策立案・分析に技術革新をもたらす可能性がある。

  • 膠着化するウクライナ戦争と米国のトランプ2.0がもたらす同盟政策の不確実性―。この2つのショックに直面する欧州は今、戦後最大の安全保障政策の転換期にある。欧州連合(EU)は、「軍事的」アクターとして歩み始め、自らの役割を拡大している。防衛を産業政策の中核に据え、欧州の統合を進めるべく、総額8,000億ユーロ規模の防衛投資計画を始動させた。しかしその実現には、加盟国間の利害対立や市場の分断、そして米国との摩擦という構造的課題が立ちはだかる。米国の安全保障上の関与が段階的に後退していくシナリオが現実味を帯びる中、欧州は自律的な防衛基盤を構築し、対等なパートナーとして大西洋同盟を再定義できるかどうかが問われている。

  • エネルギー安全保障は、もはや化石燃料や中東情勢にとどまらない。デジタル化や脱炭素化の急激な進展により、リチウムやレアアースなどの重要鉱物が新たな戦略的資源としてその存在感を高めている。特に近年、中国など資源保有国による輸出管理の強化や自国産業育成のための重要鉱物の囲い込みなどによって供給リスクが顕在化している。こうした中、日本を含む西側諸国は鉱物資源の安定供給を共通の最優先課題としており、連携強化の機運が高まっている。今、日本に求められるのは、高度な技術力と国際的な信頼を活かしながら、価値観を共有する国々との連携を主導し、資源保有国との戦略的パートナーシップを構築していくことだろう。

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