会計不正の最新の動向および推移分析

2020年から2024年までにおける調査報告書等の公表資料から、不正の発生件数を類型別に集計すると以下の推移となる。

図1:不正の類型別5年間推移

財務諸表不正の件数が各年度とも相当な割合を占めており、財務諸表不正の割合は2020年から2021年にかけて大きく減少した以降は30%40%程度の横ばいで推移し、直近の2024年は2023年の20件から6件増加して26件とやや増加した。また、贈収賄・キックバック、データ偽造・情報漏洩については隔年一定件数が生じており大きな変動はない。資産の不正流用については、2023年以降は財務諸表不正に次ぐ件数の多さとなっており、特に会社資産の窃盗や経費の私的使用等が近年では散見される。労務・法令違反等については2023年に一時的に高い水準となっており、これはコロナ雇用調整助成金等の助成金の不正受給案件が頻発した影響である。次に、会計不正のうち最も大きな割合を占め、直近で増加傾向を示した財務諸表不正の動向に着目し、その要因を検討する。

財務諸表不正について発生件数をスキーム別に細分化した推移は以下の通りとなる。

図2:財務諸表不正のスキーム別5年間推移

架空売上・循環取引は2020年から2021年にかけて件数が大きく減少したのち、大きな変化はなかったが、直近の2024年では2023年の4件から9件増加し13件と急増した。また、売上の前倒しや原価・費用の繰延等および恣意的な評価についても2023年に一時的にやや高い水準となったものの、2020年から2024年にかけてみれば毎年一定数が発生していることがわかる。すなわち、財務諸表不正は2020年から2021年にかけて全体的に減少してから2021年から2023年は横ばいを継続した後、2023年から2024年にかけて増加して2020年と同レベルの件数となった。

2021年から2023年の3年間がやや少ない水準に留まった要因として考えられるのは、2020年以降コロナ禍を受けてテレワークが奨励・浸透しテレワーク環境下で業務や事業が遂行されたことにより内部統制等の実効性が低下していたと推定できる。なお、テレワーク率に関しては2020年に急増して2021年にピークを迎えた後は逓減しているという統計があり、前述の推定とも整合するものの、2021年以降逓減とはいえ2024年のテレワーク率は2020年以前よりも未だにかなり高い水準にあるため、以下で視点を変えて分析する。

下記のグラフは、財務諸表不正の発覚経路の推移を整理したものである。

図3:財務諸表不正の発覚経路別5年間推移

内部統制および内部監査は2020年から減少傾向にあったが2022年で底打ちし2023年以降は増加傾向に転じており、この動向が全体的な不正の発生件数の動向の主因といえる。一方で内部告発については2020年から2021年までは減少傾向にあったものの、一転して2022年には6件と急増し、2023年以降はまた減少傾向となった。また、外部告発や国税・監督官庁からの指摘については各年度一定数が報告されている。

内部統制および内部監査の動向は、急激なテレワークへの移行が内部統制・内部監査の実効性を招きこれらによる不正発見数を減少させたものの、2022年以降は現場戻りが徐々に進んでいったことに加えて、テレワーク環境下の業務や事業遂行等への慣れや経験の蓄積が進み、内部統制および内部監査の実効性を取り戻していった結果によるものと推察される。

内部告発の動きは、20226月より改正公益通報者保護法が施行され、会社の取り組みにより従業員に内部通報制度がより周知されて一時的に内部通報による不正の発覚数が増加したものの、それらが実効性を取り戻したため内部通報による不正の発覚数が対照的に減少したのではないかと考えられる。

内部統制および内部監査の実効性回復との関連で、一つ興味深いデータを提示したい。不正の平均潜伏年数の推移である。

図4:財務諸表不正の平均潜伏年数5年間推移

財務諸表不正の平均潜伏年数は、2020年から2023年にかけては5年前後で推移しているものの、2024年には6.5年と急に長期化している。この変化の意味するところを確定的に述べるのは難しいが、一つの仮説として、仮にテレワーク環境になかった場合に2021年~2023年に発見されたであろう不正が、2024年に内部統制および内部監査の機能回復によって一気に顕在化したとみることができる。発見が遅れた分、潜伏期間が延びたと解釈するものだ。また、潜伏期間の長さが隠蔽の巧妙さと相関すると考えれば、外部通報や監督官庁からの指摘などで外から発見するのが難しかったものが、内部統制および内部監査の機能回復によって、内部の目線が厳しく入り、発見されるようになったとも考えうる。

おわりに

2020年頃からのCOVID-19の影響によるテレワーク環境の浸透により、これまで機能していた内部統制・内部監査の実効性の低下の可能性は2022年頃で底打ち、2023年以降は実効性が回復している兆候を把握することができた。その一方で、2021年~2023年に潜伏していた会計不正が未だ発見されず、潜伏し続けているケースもあるだろう。会計不正は対応が後手に回ると会計監査人の監査意見を取得するのに時間を要し、決算開示の期限延長など会社のレピュテーションにも大きく響くこととなる。不正発見を目的とした内部統制・内部監査のより一層の強化手法として、まずは不正リスク評価を行い、リスクアプローチに基づく評価範囲の決定、対応手続の強化などの検討を開始することを提言したい。

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