データ連携社会とデータガバナンス

 

デジタル社会において、各社デジタル化推進を熱心に進めている。IoTやクラウド、AI技術の急速な進展なども後押ししたことで、企業・自治体・業界団体などの枠を超えたデータ活用が盛んに取り組まれ、製造、物流、金融、医療、政府など多様な分野で、データの相互運用による新たな価値創造やサービス革新、利便性向上が急速に進んでいる。

一方、サイバー攻撃や情報漏洩、データ不正などからの守りのデータ管理を高める必要性がかつてないほど高まっている。

「当社では起きないであろう」「当社には取られて困るデータは無い」といったお考えもたまに耳にするが、一度インシデントが起きると、「あらかじめ対応しておくべきだった」と平時の備えの大切さを実感するとともに、再発の不安にさいなまれる。

現代では「データ」はヒトに次ぐ重要な経営資産として位置づけられる。日本企業・団体はデジタル社会における競争力と防衛力の両面からデータ活用・管理のあり方を根本的に見直すべき局面に来ているのだが、諸外国と比べた時の日本企業・団体の「データ」への対応や進度の差が開きだしていることから、政府の危機感が強く、デジタル庁から「データガバナンス・ガイドライン」として企業経営者向けのガイドが示された。

参考:「データガバナンス・ガイドライン」を策定しました 公開日:2025年6月20日 デジタル庁

 

競争力と防衛力強化におけるデータガバナンスの役割

 

近年、多くの企業が企業競争力向上に向けた「全社データ共通基盤」の構築を進めている。社内の様々なシステムや業務からデータを集約し、AI活用や全社横断的な業務改革に活用するための全社横断基盤である。しかし実態を見ると、基盤を作ったものの、そもそものデータが全く集まらない企業が非常に多い。

背景には、現場ごとのデータ管理方法のバラつきや、データの定義・品質・権限管理が統一されていないこと、現場へのデータに関するガイダンス・成熟度の低さが挙げられる。つまり、データに関するルールやガイドが未整備なため、現場から基盤にデータが集まらず、「全社データ活用」の前提となるデータ集約が実現できていない。データガバナンスの役割の一つとして、データの収集・登録・管理ルールを全社的に定めつつ現場を巻き込んでいくことで、データを集める推進力が上がるのだが、これを怠ると、いくら全社データ共通基盤を構築しても“空の器”となり、データ活用やDX成果に続かず、何の期待効果も得られない。

さらに、サイバーインシデントが発生した際、データガバナンス未対応企業の多くでは「どこに何のデータがあるかわからない」といった重大な問題が顕在化する。業務をマニュアル対応せざるを得ないなかでデータの重要性にあらためて気付くわけであるが、事業継続や復旧に膨大な時間・コストがかかるだけでなく、顧客や社会からの信頼も損なわれる。

 

データガバナンスの実践と価値

 

激変するデジタル社会、データが繋がる時代において、企業・団体が競争力と防衛力を両立するためには、実効性あるデータガバナンスの仕組みが不可欠である。従来のデータマネジメントの上位概念であるデータガバナンスが成立しないままでは、データの活用・管理をはじめその先にある社外や業界間とのデータ相互運用において損をする。

当社ではこれまで多様な業界・規模の組織に対して、独自の「データガバナンス・フレームワーク」を用いた支援を行っている。データガバナンス活動の方法論として、確立している当社フレームワークを用いて活動することをお勧めする。

 

     

補足するが、データガバナンスはITソフトウェアを導入することで実現するものではなく、仕組み・仕掛けの導入である。AIエージェントやエージェント型AIが、構造化データや非構造化データが散在したフォルダ(データのゴミ屋敷と呼ぶ方もおられる)の中をとても器用にかいくぐるITソフトウェアベンダーのプロモーションも多いが、利用者・現場側からすると、「また定着しないITソフトウェアが導入された」という印象に繋がりかねない。利用者・現場側は日々データを使った業務において、ITソフトウェア不足ではなく不明瞭なルールやガイド不足で困っているのである。                                       

(*注記するが、当方はテクノロジーが未来を変えると信じており、新しいテクノロジーの試行や投資は推奨している。ただし、「ハコモノ行政」的なITソフトウェアへの過度な期待や依存により、維持運用を担う方々の苦労や運営コスト増加などの事案も多く見てきているため、このような記載をしていることをご理解いただきたい。)

データガバナンスを主導するデータ組織を組成する理由は、大切な経営資源であるデータの活用・管理を持続的に維持運営・高度化できる組織を作り、利用者・現場側にしっかりガイドを行い、経営資産としてのデータの最大化を持続的に高度化することを目的としている。類似の活動に取り組まれている企業を見るが、プロセスを改善したとしても、まわる仕組み・仕掛けや、維持運営する組織が存在しない場合は、高い外部費用をかけたのちに定着せず振出しに戻り、活動が消滅しているケースも目にしている。

 

おわりに

 

VUCA時代において予測不能な事案が多く起こるが、突き詰めるとその多くはデータ事案である。根本原因はデータガバナンスへの取り組み不足であるとも言える。全社組織横断のデータ管理ルール・運用体制を整備し、現場がセキュアで利便性の高いデータ環境の状態づくりが、DX推進といった競争力向上やインシデント時の防衛力高度化の第一歩となることをあらためてお伝えしたい。サイバーインシデントや災害時にも、データガバナンスを取り組んでいれば、事業継続や復旧を従前よりも確実に行うことができる。

今こそ、データガバナンスの実践が企業競争力と防衛力の基盤であることを強く認識し、取り組みを始めるべき時代である。

 

 

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