社会的勢力の活動とその排除

暴力団は依然として、企業活動を装うなどして、証券取引や不動産取引等の経済活動を通じ、活動資金を取得している。また最近では、闇バイト等を利用した強盗や詐欺の背後に反社会的勢力が存在しているとされており、引き続き犯罪活動の主体となっている。企業としては、このような活動を行う反社会的勢力の活動を助長する関係とならないように注意する必要がある。

企業が求められる反社会的勢力の対応については、政府から犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして、政府指針「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」が公表されており、企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応が示されている。この政府指針や各都道府県で施行されている暴力団排除条例等に準拠して、反社会的勢力との一切の関係を遮断する必要がある。

暴力団排除条例

暴力団を排除するための法令としては、各都道府県で施行されている暴力団排除条例が挙げられる。企業が事業活動を行うに際しては、当条例に抵触しないように注意する必要がある。条例に違反した場合には、勧告、公表、防止命令の処分が科せられるが、懲役、罰金が科されることもある。当条例で留意すべき点として、「契約の締結における事業者の責務」、「利益供与等の禁止」、「名義利用等の禁止」が挙げられる。

「契約の締結における事業者の責務」では、①事業者がその事業に係る取引を行うに際し、暴力団の活動を助長等するおそれがあるときは、その取引の相手方等が暴力団員または暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとされている。また、②契約書を締結するに際し、その取引が暴力団の活動を助長等する取引と判明したときは、契約解除することができる条項を事前に設けるよう努めるものとされており、③実際に契約の履行が暴力団の活動を助長等することが判明したときに、その契約を解除するよう努める必要がある。具体的には、各都道府県の暴力団追放センターの会員となって暴力団員のデータを取得するなどして、相手方をスクリーニングするとともに、契約書に暴力団排除条項を導入することで、契約の相手方が反社会的勢力に該当した場合には契約を解除することができるよう事前に準備をしたうえで、実際に該当した場合には、暴力団追放センターや警察と連携するなどして、契約の解除に努める必要がある。逆に該当しない場合の例としては、スーパーやコンビニエンスストアで日用雑貨品を売買するなど、一般的に取引の相手方について身分を確認しないような場合についてまで相手方の反社性の確認を求めるものではなく、この場合は暴力団の活動を助長することにもならない。また、暴力団事務所への蕎麦やピザの出前や、新聞を定期的に配達する行為は禁止行為にはならない。

「利益供与等の禁止」は、事業者が暴力団の威力を利用する目的または利用したことの対価として、暴力団員などに対し、金銭、物品その他の財産上の利益を供与する行為や、暴力団員などに対し融資するまたは融資を受ける等の暴力団の活動を助長等する行為を禁止するものであり、さらには、その事実を知った者は通報するよう努めることが求められている。「利益供与」は、事業者が商品を販売し、相手方がそれに見合った適正な料金を支払うような場合であっても該当するが、暴力団の威力を利用することの対償として行われる場合、あるいは、暴力団の活動を助長し、暴力団の運営に資することとなることを知って行われる場合に限られる。一方、利益供与時には知らなかったが、後で判明した場合は、条例で規制される「利益供与」とはならない。また、暴力団事務所への電気やガスの供給、法令に基づいて行われる医師の診療行為、建築物等の維持保全などの適法な状態を保つために行う暴力団事務所の工事、弁護士が民事訴訟において暴力団員の代理人になる行為等は「法令上の義務または情を知らないでした契約に係る債務の履行として利益供与する場合その他正当な理由がある場合」として、禁止行為とはならない。

「名義利用等の禁止」は、暴力団員が暴力団員であることを隠す目的があることを知って、自己や他人の名義を暴力団員に利用させることを禁止するものである。

反社会的勢力排除のための態勢整備

反社会的勢力排除のためには、一元管理態勢の構築が重要となる。組織として対応するには、経営陣が積極的に関与することで、経営の最重要課題として認識し、適時報告する態勢の構築が必須となる。また、暴力団追放センターや特暴連(警視庁管内特殊暴力防止対策連合会)等、外部団体等を活用し、商品・サービス提供先だけでなく、業務委託先も含めて反社会的勢力排除に取組む態勢も整備しておきたい。そのためには、網羅的な反社会的勢力対応方針を策定するとともに、その対応方針に基づくマニュアルを整備することが肝要である。また、取引先の審査や顧客属性判断等を行う際には、外部機関(警察、弁護士等)から提供された情報を共有、活用し、適切に反社会的勢力に関するデータを活用する態勢を構築することが求められる。反社データベースは、外部団体等からのリストのみではなく、社内の情報等も統合する形で更新することが有効である。これらを一元的に管理する部署は、警察とのパイプを強化して組織的な連絡体制を構築するとともに、問題発生時の協力体制や、脅迫・暴力行為により緊急を要する場合に直ちに警察に通報する体制を整備することが重要である。そのうえで、反社関連事案に対する周知、教育・啓発、相談受付等を行うなど、実効性を確保する必要がある。

おわりに

反社会的勢力は取引上のミス等に乗じ不当要求を行い、一度要求に応じると新たな要求に繋がる場合もある。不当な要求を受ける苦しさから、安易に要求に応じることがないように、トラブルが発生した際には個人で抱え込まず、組織で対応することを社内に周知することもポイントとなる。

反社会的勢力の対応は、初動が重要であり、その威力に屈することなく、毅然とした対応をとることが重要である。

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