記事一覧
製薬業界における開発パイプラインの取引に関するアーンアウト構造の評価(前編)

ライフサイエンスおよび製薬業界における開発パイプラインの取引は、一時金、マイルストーン支払い、ロイヤリティフィーといった複数の要素が組み合わさった、非常に複雑な契約構造を持つことが一般的です。これらの取引において、新薬やモダリティなどの価値をどのように評価するかについては、豊富な文献や議論が存在します。しかし、その評価額を契約内の様々な対価要素にどう配分するかについては、あまり深く掘り下げられていません。 本稿では、このような取引に関する課題と、最適な配分方法について考察します。具体的には、新薬やモダリティの経済的価値を評価する方法論そのものではなく、ライセンス契約における「一時金」「マイルストーン支払い」「ロイヤリティフィー」などの要素に、その価値をどのように分配するかに焦点を当てます。このプロセスにはサイエンスな分析だけでなく、契約条件やリスクを踏まえた戦略的かつ芸術的な判断が求められます。本企画は2部構成となっており、前編では日本及びグローバルにおけるライセンス案件の取引傾向について、後編ではライセンス取引の設計について考察していきます。内容に入る前に、以下に本稿で使用する主要な用語の定義を示します。一時金(Upfront payment)ライセンス契約締結時、またはその直後に支払われる固定額の対価を指す。この支払いは、ライセンス契約の成立に基づく。マイルストーン支払い(Milestone payments)ライセンス契約締結後に発生する固定額の支払いであり、特定のトリガーイベントが達成されることを前提とする。通常、これは開発プロセスの成功や、規制当局の承認取得といった進捗状況に関連付けられている。最終的な販売やマーケティング活動に向けた重要な進展が基準となることが多い。ロイヤリティフィー(Royalty fees)主に製品の売上高(通常は純売上高)を基準として計算される支払いを指す。この支払いでは、売上の一定割合がライセンサーに移転される。経済的には、ライセンサーとライセンシーの間で将来の製品販売利益を分配する形に見えるが、計算基準が売上高に基づいており、利益指標ではないため簡便性が高い点が特徴。 これらの定義および以下の製薬開発プロセスを前提に、ライセンス契約における価値の配分について考察を進めていきます。
製薬業界における開発パイプラインの取引に関するアーンアウト構造の評価(後編)

前編では、日本及びグローバルにおけるライセンス案件の取引傾向について、過去のデータを参考に考察を進めていきました。後編ではライセンス取引の設計について、詳細に説明します。
費用対効果分析を活用した医療技術の社会的価値評価
近年、ESGやサステナビリティ経営が重要視されています。特にライフサイエンス・ヘルスケア領域の企業、医療法人、大学および自治体等は事業活動や経営の意思決定において、より広範な社会コミュニティへの還元に関心が集まっており、こうした動きは益々活発になっていくでしょう。広義のライフサイエンス・ヘルスケア領域は、「医薬品」、「バイオテクノロジー」、「医療機器」、「病院・クリニック」、「介護・福祉施設」等のみならず、「フィットネス」、「健康食品・サプリ」、「スポーツ」といった多岐の分野にわたっています。各分野のサービスを受けることで、受益者のWell-being向上を定量的に可視化する分析方法は複数存在しています。今回、企業が戦略および財務的な運営方針を決定するうえで、定量的な評価に基づく意思決定にESGがどのように組み込まれているか、ライフサイエンス・ヘルスケア領域でも、医薬品分野を対象に紹介していきます。特に、医薬品(新薬・ジェネリック・診断薬等)の社会的価値を評価するために定量的な分析手法がどのように使用され、企業の意志決定へ影響するかにフォーカスし概説しています。 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
第3回 ジョイントベンチャー解消時のバリュエーションの論点

これまでの第1回と第2回の記事では、JVの概要、JV設立時のバリュエーションの論点について説明してきましたが、今回は、JV解消時の論点について説明します。JV解消時には、JV設立時と異なり、戦略・方向性の相違を含め当事者間で既に意見が対立している場合が多く、JV解消の交渉は難航しているケースがよくあります。そのため、本記事では、JV解消時を円滑に行うためのポイントについて説明します。
第2回 ジョイントベンチャー設立時のバリュエーションの論点

日本企業の多くは海外進出の際現地企業とのジョイントベンチャー(以下、JV)の設立を選択します。前回はその概要を説明しましたが、今回は継続の難しさから減少傾向にあるJVの設立時のバリュエーション論点について解説します。
第1回 ジョイントベンチャー概要

多くの日本企業は、将来の成長率を高めるため、積極的に海外進出を進めています。その際に、有効な手段の1つとなるのが、現地企業とのジョイントベンチャー(以下、JV)の設立です。一方、JVの継続は非常に難しい現状があり、近年ではJVの設立は減少傾向にあります。そのため、本連載では、3回にわたり、JVを活用していく際の論点について取り上げます。
