パーパスバグに対する処方箋
――前編では、パーパスバグの6つの類型をご紹介いただきました。対応策もお伺いできればと思いますが、類型ごとに対応策は変わるのでしょうか?
はい。パーパスバグは、どこにひずみが生じているかによって、必要な処方箋も異なります。ここでは、6類型それぞれに対する代表的な打ち手をご紹介します。
まず1つ目の「化けの皮型」では、企業の実態や計画と、社内外ステークホルダーの期待値が過度にずれないよう、丁寧なコミュニケーションを継続することが重要です。
例えば経営者自身によるSNS発信も1つの手段ですが、大きなパーパスを掲げるだけでなく、足元の進捗や現在地、経営者として目指す姿を継続的に共有することで、期待先行の状態を是正しやすくなります。
2つ目の「言葉足らず型」では、抽象度の高いパーパスに新たな解釈を加え、解像度を高めることが必要です。
例えば、シナリオプランニングのような手法を用いて将来のリスクや機会を棚卸しすることで、自社にとってそのパーパスが何を意味するのか、どのような戦略や行動につながるのかを具体化しやすくなります。
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出所:合同会社デロイト トーマツ
――パーパスを再解釈するというのは、もう一度パーパスを策定し直すこととは違うのでしょうか?
はい、異なります。パーパスは企業の存在意義に関わる概念であり、短期間で頻繁に変更するものではないと私たちは考えています。もしパーパスを何度も変えてしまうと、社内外ステークホルダーからの信頼を損なう可能性があります。
抽象度の高いパーパスは、大きな組織全体を一括りに表現しようとして総花的な内容になってしまうことから生まれると考えています。そのため、例えば職位別、部門別、あるいは個人単位で「自分たちにとってこのパーパスは何を意味するのか」を再解釈していくことが、解像度を高めるうえで有効です。
3つ目の「絵空事型」では、パーパスと現状の距離を埋めるための、布石となるアクションを起こす必要があります。
例えば、新規事業やM&Aの実行、あるいはその前段階としてのプロジェクト立ち上げなど、将来に向けた本気度が伝わる取り組みを示すことで、パーパスの実現可能性に対する疑念を和らげることができます。
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出所:合同会社デロイト トーマツ
4つ目の「誰やるの型」では、新たな組織文化を体現する“ヒーロー”となる従業員像を明確にし、その人材を実際に評価・登用していくことが重要です。
例えば、次世代層に新規事業や変革テーマを担ってもらい、その挑戦を正当に評価することで、他の社員にも行動変容を促しやすくなります。
加えて、パーパスを起点とした中長期の取り組みが短期的にコストセンターと見なされないよう、経営層がその意義を繰り返し発信し続けることも欠かせません。
5つ目の「知る人ぞ型」では、事業変革・組織変革の先に、どのような新しいパーセプションを築きたいのかを明確に設計する必要があります。
というのも、同じ情報を発信していても、受け手がその企業をどのような会社だと捉えているかによって、変化の意味は大きく変わるからです。
例えば、強い祖業を持ちながら事業の多角化や領域転換を進める企業では、長年積み重ねてきた祖業のイメージを短期間で変えることは容易ではありません。
そのため、まずは現在のパーセプションを正しく把握し、目指したい新たなパーセプションとの間にどのような橋をかけるべきかを考えることが重要です。例えば、新しい事業に祖業で培った技術や強みがどう生かされているのかを示すことで、外部ステークホルダーにとって理解しやすい接続点をつくることができます。
多額の広告投資によって一気に認識転換を図る方法もありますが、現状と理想の間を埋める情報を1つずつ丁寧に設計していくことも、同じくらい重要です。
6つ目の「ゆでがえる型」では、社内外の調査や対話の機会を通じて、経営層に時代の変化や危機の兆候を認識してもらうことが出発点になります。
この類型では、パーパスバグの修正は、まず経営層の認識をアップデートすることから始まります。
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出所:合同会社デロイト トーマツ
――「ゆでがえる型」に関しても、時代に合わせたパーパスの再解釈が必要になってくるのでしょうか?
例えば、外部環境の変化に対応しようとして、創業以来大切にしてきた理念まで大きく変更した結果、自社らしさが見えにくくなってしまった企業もあります。
重要なのは、変えるべきではない自社の個性と、時代要請に応じて変えるべき点を慎重に見極め、必要なアップデートを行うことです。
その意味で、手放すのではなく、再解釈することが重要なキーワードになると考えています。
――最後に、パーパスバグの解消に取り組まれる読者に伝えたいことはありますか?
まず重要なのは、自社の現状がパーパスバグのどの類型に当てはまるのかを見極めることです。
例えば、現状が「絵空事型」であるにもかかわらず、「化けの皮型」への対策を講じても、改善は進みません。なぜ自社のパーパスが浸透しないのか、あるいは機能しないのかを考え、その背景にあるひずみがどの類型に近いのかを見立てることが、適切な打ち手の第一歩になります。
その際には、周囲の人や他部門のメンバーと意見交換することも大切です。パーパスバグの見え方は、担当業務や役割によって大きく異なります。
そのため、グループ会社間、部門間、年次や役職をまたいだコミュニケーションによって、まずは現状認識をそろえることが、早期解消に向けた重要な鍵になります。
今回、ここまでお読みいただいた皆さまの第一歩を少しでも後押しできるよう、「パーパスバグ類型判断シート」をご用意しました。ぜひ、自社のパーパスの“健康診断”にご活用いただき、今後必要となるアクションを考えるきっかけにしていただければ幸いです。





