東証プライム上場企業では、パーパスを掲げる企業が年々増加しています。策定にとどまらず、経営戦略や人事施策に落とし込む取り組みも広がる一方で、実務の現場では「掲げたものの事業に落ちない」「社内では浸透していても社外の認識が変わらない」といった悩みも少なくありません。
私たちは、こうした状態を整理するために、パーパスが機能している状態を「内的一貫性」「外的一貫性」の2つの観点から捉え、機能不全を6つの類型に整理しました。
本稿では、その考え方と6類型の概要を、合同会社デロイト トーマツのBrand Strategyチームにて、コンサルタントとクリエイターの共働による経営課題解決に取り組む額田康利、三宅洋基、鵜川将成よりご紹介します。

パーパスが機能している状態

――近年、パーパスを掲げる企業数は右肩上がりで増加しています。また定めるだけではなく、多くの企業が経営戦略や人事施策に落とし込んだパーパス経営に取り組んでいるようです。パーパスは業績向上への万能薬なのでしょうか?

外部調査では、パーパスへの取り組みと業績・企業価値との一定の関連性が示唆されています。一方で、私たちがクライアント企業と対話する中では、「パーパスが思うように機能していない」という声も少なくありません。

例えば、グループ全体としてのパーパスは掲げたものの、各事業会社の活動に十分落とし込めていないケースがあります。また、パーパスに沿って新たな事業展開を進めたい一方で、売上の柱である既存事業が優先され、取り組みが前に進まないケースもあります。さらに、社内ではパーパスが浸透していても、顧客や生活者の認識が変わらないという課題も見られます。

こうした企業の悩みを踏まえ、私たちは、パーパスが機能している状態を「内的一貫性」と「外的一貫性」を備えた状態と定義しています。

ここで重要なのは、社外に向けて同じ情報を発信していても、受け手がその企業を「どんな会社か」と捉えているかによって、意味の受け取られ方は変わるということです。そのため、パーパスが機能しているかを考えるうえでは、社内での浸透や実行状況だけでなく、社外でどのように理解されているかまで見ていく必要があります。

出所:合同会社デロイト トーマツ

内的一貫性とは、パーパスが戦略に落とし込まれ、事業の中で体現されるとともに、組織文化や従業員の行動にも反映されている状態を指します。パーパス経営というと、組織への浸透に焦点が当たりがちですが、事業戦略の中でもパーパスが体現されていることが重要です。

一方、外的一貫性とは、外部ステークホルダーから見ても、企業の実態とパーパスが一致していると認識されている状態を指します。同じ情報を発信しても、相手がその企業をどう見ているかによって、受け止め方は変わります。そのため、社内で変化が起きているだけでなく、その変化が社外にも正しく伝わっていることが重要です。外的一貫性が高まることで、企業成長への期待が高まり、購買・投資・就職・協業といった行動の後押しにもつながります。

つまり、パーパス、事業戦略、組織文化、パーセプション(社外ステークホルダーからの認識)の4要素が整合しているとき、内的一貫性と外的一貫性が備わり、パーパスが機能している状態だといえます。

一方で、実際にはパーパスとこれらの要素の間にひずみが生じ、十分に機能していないケースも多く見られます。私たちはこうしたひずみを「パーパスバグ」と名付けました。

出所:合同会社デロイト トーマツ

パーパスバグの6類型

パーパスバグは6つの類型に整理できます。「化けの皮型」「言葉足らず型」「絵空事型」「誰やるの型」「知る人ぞ型」「ゆでがえる型」の6つです。

出所:合同会社デロイト トーマツ

1つ目の「化けの皮型」は、例えば魅力的なパーパスを掲げることで投資家や市場から期待を集め、資金調達や注目獲得には成功したものの、事業戦略や組織文化が追いつかず、十分な成果につながっていないような状態を指します。カリスマ経営者がいる企業や、成長期待の高いスタートアップに見られやすい類型です。
この類型では、パーパスを実態に落とし込むための建設的な社内議論が生まれにくく、期待値だけが先行しやすい傾向があります。

2つ目の「言葉足らず型」は、パーパスが抽象的すぎるために、自社ならではの戦略や組織文化に落とし込まれず、従業員にも外部ステークホルダーにも十分な関心や共感を持たれていない状態を指します。
事業そのものは順調に進んでいる場合もありますが、パーパスについては「掲げただけ」にとどまり、実際の意思決定や行動に結びついていない類型です。

3つ目の「絵空事型」は、パーパスの表現自体には独自性があるものの、現在地と比べてあまりにも遠い内容を掲げているために、社内外から実現性に乏しいと受け取られかねない状態を指します。
その結果、パーパスを具体的な事業戦略に落とし込めず、従業員や株主をはじめとするステークホルダーから、その実現可能性に疑問を持たれることがあります。

4つ目の「誰やるの型」は、パーパスをもとに事業戦略を描けていても、組織のキャパシティ不足や社内での共感不足によって、実行段階に移せない状態を指します。
現状の事業運営で手一杯となっており、新たな取り組みに人的・時間的な余力を割けないという声が多く聞かれます。その結果、社外のパーセプションも形成されにくい傾向があります。

5つ目の「知る人ぞ型」は、パーパスに沿った事業変革や組織変革が一定程度進んでいても、その変化が社外の認識にまで十分届いていない状態を指します。
長い歴史を持ち、TVCMをはじめ多くのコミュニケーションを重ねてきた企業ほど、従来の企業イメージが固定化されており、陥りやすい類型です。新たな取り組みや変革を認識しているのが一部のステークホルダーに限られるため、コーポレートコミュニケーションを工夫しながら、認識の更新を図っていく必要があります。

6つ目の「ゆでがえる型」は、かつては内的一貫性・外的一貫性が保たれ、パーパス経営が比較的うまく機能していた企業が、時代の変化とともに徐々に組織文化の綻びを抱え、危機の兆候が見え始めている状態を指します。
この類型では、現場から距離のある経営層ほど「大きな問題はない」と認識しやすく、違和感を抱えた次世代人材の離職が相次ぐといった事象が表面化することもあります。

以上が、多様な業態のクライアント企業との対話から得た示唆をもとに整理した、6つの類型です。
もし、自社のパーパスが十分に機能していないと感じる場合、どこかにひずみが生じている可能性があります。そのひずみを解消する第一歩は、まず自社の状況が6類型のどこに近いのかを見立てることです。

後編では、それぞれの類型に対する処方箋をご紹介します。

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