景気循環による経済的影響は企業にとって不可避なものです。しかし、世界および地域経済に対し長期的な見通しを持つことにより、企業は景気循環のリスクを最小化することができます。デロイトは、世界のビジネスリーダーたちに必要な、マクロ経済、トレンド、地政学的問題に関する明快な分析と考察を発信することにより企業のリスクマネジメントに貢献しています。
本連載では、デロイトのエコノミストチームが昨今の世界経済ニュースやトレンドについて解説します。今回は、Deloitte Insightsに連載中のWeekly Global Economic Updateの2025年7月21日週の記事より抜粋して日本語抄訳版としてお届けします。

Ira Kalish

Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト

経済問題とビジネス戦略に関するデロイトのリーダーの1人。グローバル経済をテーマに企業や貿易団体への講演も多数行っている。これまで47の国々を訪問したKalish氏の解説は、ウォール・ストリート・ジャーナル、エコノミスト、フィナンシャル・タイムズなどからも広く引用されている。ジョンズ・ホプキンス大学国際経済学博士号取得。

中国経済は関税により米国向け輸出が打撃を受けているが、中国政府の景気刺激策によって下支えされている。中国政府が発表した最新の経済指標によると、中国経済は全体的には好調のようだ。

実質GDPの成長と内需拡大政策

中国政府は、2025年第2四半期の実質GDPが前年同期比5.2%増、前期比1.1%増と発表した。これは、米国向けの大幅減少でも全体としては大きく増加した輸出、堅調な小売売上高、工業生産の力強い成長によるものである。しかし、不動産投資の大幅な減少により、固定資産投資は伸び悩んでいる。前年同期比5.2%という数字は、第1四半期からは減速しているものの、多くのアナリストの予想を上回った。

中国政府は今後も財政・金融を組み合わせた内需拡大政策を継続すると予想されている。財政政策として、(電化製品等の)消費財買い替え支援策が実施されている。金融政策に関して、中央銀行(中国人民銀行)の副総裁は「金融政策にはタイムラグがあり、現在の対策の効果はまだ完全に表れていない。中央銀行は緩やかな金融緩和政策を継続する」と述べた。しかし、一部のアナリストは、企業と家計が現金をため込んでおり、低金利が金融市場の活性化に寄与していないため、金融政策は効果的ではないと考えている。より重要なのは、家計の支出を増やし、貯蓄を減らす構造改革である。

小売売上高

2025年6月の小売売上高は前年同月比4.8%増であった。小売売上高の伸び率は2月以来の低水準だが、インフレ率が非常に低いことを踏まえると健全なペースである。消費財買い替え支援策の影響で、6月の耐久消費財の売上は前年同月比32.4%増であった。

工業生産と固定資産投資

2025年6月の工業生産は前年同月比6.8%増であった。これは20242月以来、2番目に高い伸びである。製造業部門は7.4%の増加であった。これには自動車(11.4%増)、コンピューター・通信(11%増)、鉄道・造船(10%増)が含まれている。一方、2025年上半期の固定資産投資は2.8%増にとどまった。製造業への投資は7.5%増加しているが、不動産への投資は11.2%減少した。これは住宅市場の低迷が継続していることを示している。

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