MBO(Management Buyout)とは、経営陣自ら会社の株式・事業などをその所有者から買収することである。

経営陣が所有する資金は限られている場合が多いため、とりわけ小規模な会社が対象となる場合を除いては、外部の投資ファンドや金融機関などからの資金調達によりMBO資金を調達するケースが多い。

MBOを行う主な目的は、以下の通りである。

  • 短期的には株主にとって痛みを伴う構造改革を見据えて上場企業を非公開化すること
  • ノンコア事業を独立させ新たな資本のもとで、経営陣に自由裁量を拡大させた経営を行うこと
  • オーナー企業において経営陣に事業承継し、事業承継問題を解決するとともに経営能力を有する人物による経営を確保すること

上場企業がMBOにより非公開化するメリット

上場企業がMBOにより非公開化するメリットとして、自身が大株主となることにより、株式市場の短期的評価にとらわれず、経営陣の自由な意思に基づき長期的な視点からの企業経営が可能になることが挙げられる。また、内部統制報告制度および四半期報告制度をはじめとした企業が上場していることにより生じるコストの増大を回避することや2000年代中盤以降に散見された敵対的買収によるリスクを予め回避する目的がその背景にあるといわれている。

MBOを行う際の留意点

MBOでは、その取引において自社の経営陣が株式の買い手となることから、取引価格に関して必然的に利益相反が生じることとなり、また、株主と経営陣の情報の非対称性が存在することから、株主の適切な判断機会、意思決定における恣意性の排除、価格の適正性を担保する客観的情報などを確保するための手続きが必要となる。この点については、2019年、経済産業省が「公正なM&Aの在り方に関する指針」を公表し、利益相反を防止するための手続きが示されている。

次に、MBO成立後の企業経営に関する留意点であるが、MBOにより非公開化した場合には、従来上場していたことにより享受していた、認知度の向上および資金調達手段の多様性などの利益が得られなくなる可能性がある点にも留意する必要がある。また、MBOの実施に際して、MBO資金を外部の投資ファンドや金融機関から資金調達を行った場合には、将来的に当該資金の返済負担が生じることにより、企業経営に与える影響についても考慮する必要がある。