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カーブアウト(carve out)とは、経営戦略の一環として、グループ内の一部事業を切り出し、新会社として独立させること。グループ内の子会社や事業部門の一部の価値がマーケットから低く評価されている場合(コングロマリット ディスカウント状態)、あるいは全社戦略上経営資源を集中させる対象でない場合において、カーブアウト実行後IPOあるいはM&A(売却)を行い、当該事業を発展させていく新たなスポンサーに事業を承継させる目的において用いられるケースが多い。
デューデリジェンスの実務では、「Carve out=切り出す」という用語に準じ、事業を分離して切り出す一連の作業、または、全社の財務諸表から対象事業の財務諸表を切り出す作業を指すことが多い。
会社全体を移転対象とする合併や株式譲渡のような場合には、移転対象の実現を表現したものとして会社の決算書があるが、事業部など会社の一部を切り出す事業分離などの場合には、通常、対象範囲に決算書がない。そこで全社決算書のうちから対象事業に係る部分を切り出し、当該事業に係る財務諸表を擬制するカーブアウトの作業が必要となる。このようにして財務諸表の形で財政状態や経営成績を表示することにより、事業の実態が可視化される。
カーブアウト財務諸表の作成
管理会計情報の調整(計数面からの検討)と実体(Entity)面からの検討の2つからなり、具体的には、以下のような作業を行い、カーブアウト財務諸表を作成する。
①管理会計情報の調整
カーブアウトの作業は、切り出す事業に係る財務諸表を作成することであるが、基本的には、管理会計で作成される部門別損益計算書、貸借対照表に依存することになる。もし、その精度が高ければそれをそのまま使用し、特別な作業を行う必要はないこともある。しかし、分離対象事業の財務諸表があったとしても、必ずしもそれがそのまま利用できるとは限らない。以下の点に留意し、調整すべき事項がないか検討し、必要に応じて調整する。
- 管理会計の処理単位と分離範囲の差異の調整
- 貸倒引当金の洗い替えなど、財務会計上の決算処理の反映
- 固定資産の減損処理など、事業部で行われない処理の反映
- ②実体(Entity)面からの検討結果の反映
②実体(Entity)面からの検討
管理会計上は分離可能であっても実体(Entity)面で分離不可能な状況もある。例えば、分離対象事業とそれ以外の事業に共通の部材を製造している工場があるような場合である。このような場合、管理会計を元に作成したカーブアウト財務諸表が絵に描いた餅となってしまう可能性がある。そのため、管理会計データを基にカーブアウト財務諸表を作成し、並行して実体(Entity)面から事業の分離を検討することも必要となる。これについて、具体的には以下の事項を検討、実施する。
- 一連のバリューチェーンに沿った経営資源の整理やビジネスの商流の把握といった対象事業の俯瞰
- 管理会計に捉われない、「実体」レベル(物理的視点)での分離可能性の検討
- 実体(移転する経営資源)の計数化
- 分離インパクトの試算(管理会計情報への反映)