マーケティング領域で唯一無二の存在を目指し、M&Aも活用して進化(前編)

データ×テクノロジー×コンサルティングの手法をとり、リスクを極小化させた成果報酬マーケティングを行う株式会社Macbee Planet。2015年に創業した同社は2020年に上場を果たし、2024年にプライム市場へと移りました。加えて、全上場企業の中で唯一、6期連続営業利益50%以上の成長を実現させています。この実績はどのような企業戦略から生まれたのか、その成長過程とは。代表取締役社長を務める千葉知裕氏に伺いました。
目次
千葉 知裕氏
株式会社Macbee Planet
代表取締役社長
公認会計士。大手監査法人を経て2018年に上場準備責任者として当社に入社。2021年12月のグループ経営体制への移行を機に代表取締役社長に就任。メンバー全員が活躍できる組織を目指し、グループ全体の事業、組織づくりを牽引している。
渡辺 真里亜
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
マネージングディレクター
大学院修了後、コンサルティングファームにて、システムコンサルタントとして勤務。現・有限責任監査法人トーマツに入社後、転籍を経てDTFAにおいて、バリュエーション業務に従事する。現在、ライフサイエンス・ヘルスケア、テクノロジー・メディア・通信、エネルギーなど幅広い業界のM&A案件に携わっている。
リスクに対応しつつ業界を絞って事業を展開、発展させる
渡辺
マーケティング関連大手企業が多く採用する固定報酬型でなく、あえて成果報酬型のマーケティングを打ち出している理由を教えてください。
千葉
当社の創業は2015年、ウェブマーケティング業界においては後発企業と言えます。だからこそ、何かしら「尖った」要素を持たなければ成長は望めません。そこで選択したのが、成果報酬マーケティングというスタイルでした。かつて総合代理店勤務を経験した創業社長が、売上・利益に直結するマーケティングを実践する必要性を強く感じて当社を起こしたとの経緯もあり、そのアイデンティティを受け継いで現在も事業展開を行なっています。成果報酬型のビジネスは、成果が出なければ利益も得られないというリスクが存在します。しかし、当社ではそのリスクを極小化するため、特にテクノロジーの力を活用することに努めてビジネスに変化を与えました。さらにデータの取り方、質も意識、この2点をブレイクスルーポイントとして一気にスケールさせたのです。もちろん、これらを有益に扱えるコンサルタントが所属していることは大前提となっています
渡辺
結果、6期連続高成長との実績が生まれました。振り返って、御社が成長のために意識し続けていたことはありますか。
千葉
徹底して成果報酬型領域にこだわったこと、業界を絞ってクライアント企業としてきたことが挙げられると思います。リスク分散の意味もあり、多業界への展開を実践する企業は多いですが、当社はまずウェルネス業界、次にコンシューマーファイナンス、さらに投資業界へと順次広げていきました。つまり、まずは一つの業界に集中して実績を伸ばし、トップに立つ。それが実現したのち、また別の業界へという手法を繰り返してきたのです。このような一点突破のビジネススタイルは、大企業に打ち勝つジャイアント・キリングの可能性を備えています。それを確実に獲得しながら攻め続けてきたと言えるでしょう。また、当社にとってのターニングポイントは、ファイナンス業界で大きな受注を獲得したことです。それをきっかけに、ビジネスの勢いが一気に増していきました。
事業を支える社員の質を向上させ続けるために
渡辺
企業において、社員の質は重要な成長要素と考えます。御社ではどのような形でそれを維持、向上させていますか。
千葉
基本的には少数精鋭、プロフェッショナルな人材を集めています。ただそれも、社内で上位に立つ人材を投入するというより、同レベルのメンバーを揃えて互いに競争意識を持ってもらうことを意識した環境づくりを行なっています。社内全体を見ると中途入社社員が多いですが、特にグループ会社のAll Adsは新卒社員を多く採用しています。育成プロセスもしっかりと構築し、新卒、中途の別なく同じインプットを実践して全員の目線、レベルを引き上げることを目指しています。また、新しい経験を多く得られるチャレンジングな環境も、社員の成長にとって重要です。そこで未知なる挑戦をプラス思考で捉えられる人材育成を心がけ、競争環境の中、自身でレベルアップしていくことを社員に求めています。これは、「働きがいのある会社」であり続けるための施策でもあると考えています。
渡辺
そのような環境下、社員のモチベーションを保ち続けるために留意していることはありますか。
千葉
OJTによって「場数を踏ませる」ことも大切ですが、同様に視野を広げる体系立てた教育も重視しています。どの部署に所属していたとしても、当社のビジネスの全体像をしっかりと理解していなければ、良い「打ち手」は見出せません。この案件において今何が起きていて、それはどの部署が関わり、それぞれどのような行動を起こそうとしているのか。それが明確になれば、最良のアウトプットが可能になります。もちろん、自身の軸となるプロフェッショナルスキルは磨いていきますが、激しい変化が続くこの時代、それだけでは活動の幅が狭まってしまうというのが私の考えです。スキルの幅を広げるには、やはり一定の競争があり、それに打ち勝っていくことが必要です。このようなモチベーションを備えた人材でなければ、今後の社会で生き残っていけないのではと予測します。
M&Aを意識して立案される今後の企業成長戦略
渡辺
今後の成長戦略についてはどのようにお考えですか。
千葉
現在目指している企業としての姿を確実に実現させていくとともに、積極的にM&Aを実施していきます。実績として、最初のM&Aはテクノロジー関連企業を対象に行いました。これはマーケティング業界では、かなりユニークだったと言えるでしょう。同種のマーケティング関連企業からM&Aを実施していく方が一般的かもしれませんが、当社はデータ×テクノロジー×コンサルティングの手法をとっていますので、その一角を占めるテクノロジーの充実化も重要事項だったのです。
渡辺
その際、PMIはうまく機能したのでしょうか。
千葉
うまくいったか否かは、非常に難しい議論になります。言えるのは、当社はグループインした企業と一緒になってPMIを実施したということです。私たちはテクノロジーを強化するため最初のM&Aを実施しましたが、当初は共通言語の違いから融合が難しくなるとの側面も見られました。しかし、インセンティブプランを明確にすることでそれを乗り越えました。もちろんそれは、協働によって必ず事業を発展させることができるとの互いの認識・信頼があってこそ。そのうえで、両社が「進んで協力したい」との姿勢を明確に見せたことが成功要因だったと思います。
渡辺
M&Aにおける今後の展開について教えてください。
千葉
理想的なのは、互いのビジネスモデルの強みを最大限に活かし、シナジーを生み出せるM&Aの実現です。これは、企業であれば当然求めることであり、その意味では事業領域の違いが&の妨げになることはありません。事実、私たちは同業だけでなく、領域やメディアにも強い関心を持っています。
渡辺
ありがとうございます。幅広い分野におけるM&Aを考慮されている、その理由や目的については後編で伺いたいと思います。