10月15日、東京丸の内のデロイト トーマツ イノベーションパークにて、Women Empowerment「Toget-HER」projectのオープニングイベントが行われました。このプロジェクトは、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下、DTFA)のパートナー、サステナビリティアドバイザリー統括である大塚泰子が一般社団法人社外取締役女性ラボとともに企画・運営をリードするもの。「シスターフッド」を合言葉に、日本を代表する女性リーダーがコーチ、メンターとなり、女性が管理職という役割を楽しみながら、幸せでいられる社会を目指して、女性のビジネスパーソンが社外で横と縦の繋がりを持つことを目指すものです。会場には、女性の働き方に携わる方や、様々な企業の女性管理職の皆さんがギャラリーとして訪れました。本記事では、このオープニングイベントの様子をお届けします。

企業課題に挙げられる女性のワークライフバランス

女性の働きやすい環境の作り方を考えるトークセッションでは、DTFAパートナー大塚泰子の進行で、日本を代表する4人の女性リーダーが会しました。

登壇者は、株式会社ポーラ代表取締役社長及川美紀氏、富士通株式会社執行役員EVP CMO山本多絵子氏。そして、一般社団法人スタートアップエコシステム協会代表理事藤本あゆみ氏に、元朝日新聞社「AERA」編集長でジャーナリストの浜田敬子氏です。

女性リーダーたちによるトークセッションの様子

トークテーマは、「Women @ Work 2024から考える、働きやすい環境をどう創る?」というもの。「Women @ Work 2024:A Global Outlook日本版」はデロイトトーマツグループが85日に発表したグローバル調査で、日本をはじめ、アメリカやドイツ、インド、中国など世界10カ国における女性の職場環境にはびこる課題やニーズを分析しています。

大塚は「自分が所属する組織は、ジェンダーの多様性のコミットメントを果たすために、きちんと具体的な措置を講じていますか?」の問いに対して、日本もグローバルもともに11%と低く回答していることに触れつつ、さらに離職理由の回答に着目していると語ります。

出所:Women @ Work 2024 A Global Outlook日本版

女性の離職理由の第2位は、職場でのいじめや嫌がらせ、また無意識での思い込みであるマイクロアグレッションによる居心地の悪さ。3位はワークライフバランスが取れないこと。大塚はこの2点をトークの柱に据えました。

大塚は、「ワークライフバランスのアンケートを取ると、『女性だから』があまり理由になっておらず、日本企業の古い評価体系や企業文化が働きにくさの根本にあるのでは」と指摘。「リモートワークや時短勤務など、フレキシブルな働き方をすると昇進に影響しそう」といった回答に注目が集まりました。

人材変革を促すため、「自らの仕事の定義書を作り、希望をすれば2年目の社員であっても応募をして異動ができる」という自社のキャリアオーナー制度とポスティング制度を活用する富士通の山本氏は「女性は様々なライフイベントがあるため、自分自身でキャリアをデザインすることが特に大事」と説きます。

また、ポーラの及川氏は「自社の人事部長が『ポーラが求める未来人材は、マッチョな組織人リーダーではなく柔軟な共創型リーダー』と旗振りしたことにより、リーダー層に女性が一定数入ってきた」と語ります。 。「企業が大きくメッセージを発することで、カリスマでもスーパーウーマンでもないけれど、チームで仕事をすることならばできると思った女性がリーダー職に手を挙げた」とも付け加えました。

一方、スタートアップエコシステム協会の藤本氏は、「スタートアップの長所は大企業に比べて規模が小さいため、適材適所で個々の能力に見合った役割が与えられているところ」と語ります。「ベンチャーキャピタルは1人の社員がカバーする範囲も広いため、マッチョな働き方に見えるところもある。またリーダーの影響を強く受けるため、バイアスの強いリーダーのもとでは働きづらい問題も起きている」と、短所も指摘しました。

働く日常に潜むマイクロアグレッション

次に話し合われたのは、マイクロアグレッション。トークに移る前に、ジャーナリストの浜田氏よりマイクロアグレッションについての説明がありました。

マイクロアグレッションとは、日常の言動に潜む小さな差別意識のこと。浜田氏は「どんな人でもジェンダーバイアスや年齢バイアスなどがゼロにはならないため、必ず出てしまう。だからバイアスが出てしまったらすぐに指摘し合い、『ごめんなさい』と謝る雰囲気が必要」と語ります。

また「問題なのは、『良かれと思って』の好意的差別」とも。「育児中の女性に対して配慮するあまりに大きな仕事から外してしまう。女性にとってはそれが機会喪失になったり、マイクロアグレッションになったりする」。人間は期待されてこそやり甲斐を感じ、成長する生き物。浜田氏は、好意的差別に潜む問題の根深さを指摘しました。

そしてこの日、一番盛り上がったのは、女性管理職が必ず会議で直面する「話が長いと遮られる問題」や「言いたいことが言えなかった問題」でした。

「この問題のうまい対処法があったら、私が知りたいぐらい」と答えたのは、ポーラの及川氏。藤本氏は会議において「強気で相手の言葉を遮りにいくと、強硬に止められるので、1つ受け入れて2つ返すことを心がけている」と答えました。さらに山本氏は、「国際会議で海外からの参加者の皆さんが勢いよく話すところに割って入れない問題」も付け加えます。「私が心がけているのは、インパクトのある内容をきちんと準備することと、話すタイミング。それをしないと聞き流されたり、無視されたりしてしまう」とのこと。

また浜田氏は、「会議以外でも上司との1on1の機会を作って、自分から議題を提出することが大事」と言います。大切なのは「『もっとこういう仕事がしたい』と上司に言えるかどうか」とも。

最後に大塚が「ジェンダー平等が進んだ企業は、組織への帰属意識が高くなる。企業の文化はとても大事」と指摘すると、及川氏はトークセッションをこのように締めました。

「『あなたは当社にとって、どれだけ大事な人であるか』を、会社がきちんとメッセージするかどうかによって、組織文化は大きく変わる。心理的安全性というレベルではなく、本当に人権そのもの。社員が『自分を成長させてくれる企業』と感じられるには、やはり必要なのは経営陣や上司の覚悟と、仕組み作り。つまり、ワークライフバランスです。経営者は『やっているつもり』のさらに高みにいかないと、従業員の皆さんの帰属意識を高められないと感じているので、私はこれからますます頑張ります」

Women EmpowermentToget-HERprojectについて

後半は、大塚より会場の皆さんへWomen EmpowermentToget-HERprojectの説明が行われました。20253月の国際女性デーの前後にフルサービスでのローンチを目指し、地方在住者でも参加できるよう、PC・スマホアプリで繋がるプロジェクトです。

大塚は、「日本に素敵な女性の活躍支援団体がたくさんあるものの、なかなか連携できていないのがもったいない」と言います。「会場にいらっしゃる次の世代の役員、管理職である皆さんを育てていく社外の横と縦の繋がりをしっかり作っていきたい」とプロジェクトの抱負を語りました。

管理職の女性が社外で連帯し、上記の目標を達成できる社会を作るために、大塚は「アプリの中にはコミュニティ用のコンテンツを用意しており、『Toget-HER』のメンバーになっていただいた方は誰でもお使いになれる。繋がることで成長できるハードとソフトのスキルが身につくものを用意した」と語ります。

ハードスキルのインプット面は、デロイト トーマツ アカデミーや他企業のeラーニングコンテンツを。アウトプット面は、女性起業家に特化したピッチコンテンストなどを予定しています。

またソフトスキルでは、トークセッションの他にも女性管理職同士赤裸々に語れるトークの場も。「Toget-HER」内で気軽にメンターとメンティーの関係性が培われるよう、メンターシッププログラムやキャリアコーチングなども用意しました。

その他、「Toget-HER」ならではのスペシャルセッションもあります。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会作成

さらには、『幸せなチームが結果を出す ウェルビーイング・マネジメント7か条』の著者でもあるポーラの及川氏がチームビルディングを、UNI-COの代表取締役である井上奈緒氏がコーチングを。そして、サンリオエンターテイメントの代表取締役社長である小巻亜矢氏が自らの研究課題である対話型自己論を担当します。自分の現在地を確認し、自らの心の声を聞き、自分の棚卸しをするプログラムです。

また、今後「Toget-HER」内でメンバーはコミュニティを自由に立ち上げられますが、最初にプリセットしているコミュニティもあります。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会作成

「スタートアップ」のオーナーは、この日のトークセッションにも参加したスタートアップエコシステム協会の藤本氏。「地方の可能性を考える」は、松山ローカル大学代表取締役の宮嶋那帆氏。そして「政治を語ろう」は元岡山県議会議員の山本満理子氏が、「社外取締役を目指したい」は社外取締役女性ラボ代表理事の椿奈緒子氏がオーナーを担当します。

PC・スマホアプリで広くつながる日本の女性管理職連帯プロジェクト、Women EmpowermentToget-HERprojectが切り開く今後の社会に期待が高まります。

DTFA Times編集部