デジタル時代において、情報は資産であると捉える企業が増えています。これらの企業にとって情報ガバナンスの導入・構築は、管理コストの整備やリスク低減を考えるうえで必要不可欠な要素といえるでしょう。今回は、情報ガバナンスについて意味や、構築のメリット、導入する際のポイントを紹介していきます。

2021年9月15日に掲載した記事の内容を改訂して再掲します。

情報ガバナンスとは?

出所:EDRM Global Advisory Council

企業文書は従来の紙文書から電子文書へと変遷しつつあります。これらの電子文書は、企業内のファイルサーバーや各デスクトップ、個人のPC、外部記憶媒体、クラウドなど多くの場所に散在しています。このような中で企業はリスク管理、情報開示等の説明責任、法定期間で定められた文書保管義務などの要件を満たしながら文書の情報管理を行う必要があります。つまり、企業は企業内で生成されるあらゆる文書のライフサイクル全体において情報管理の徹底が必要であり、それを実現するための「情報ガバナンス」が求められているのです。「情報ガバナンス」と混同されやすい「ITガバナンス」ですが、「情報ガバナンス」は、企業内の情報資産を効果的に利活用し、適切に管理するための仕組みのことを指しており、「ITガバナンス」はITに特化して情報システムの導入や運用を組織的に管理・統制する仕組みを指しています。「情報ガバナンス」は情報資産のすべてが対象となり次に述べる「非構造化データ」が多くを占めるため難易度が高くなります。

そもそも情報ガバナンスが必要な背景とは?

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

事業を運営するうえで欠かせない文書。企業や組織では、日々、膨大な文書の作成・処理、保管、検索が行われていることは言うまでもありません。近年、ビジネスのデジタル化の波を受けてそれらの文書はますます増大傾向にあります。企業は文書を適切に管理しなければ、生産性が低下するだけでなくビジネスに損失が起こってしまうリスクがあるのです。リスクとは、業界や国ごとの法令・規制遵守違反や、訴訟時の適切な対応が難しくなること、情報漏洩が発生しやすくなることなどが挙げられます。

情報ガバナンスが効いていないとどのようなリスクがあるのか?

情報ガバナンスの構築ができていないと、法規制の順守や変更時への対応が難しくなり、訴訟時のコスト増大といったリスクにさらされます。
情報ガバナンスが効いていない企業に起こりうるリスクを紹介します。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

情報ガバナンス構築のメリット

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

企業や組織は、情報ガバナンスの構築により、意思決定の促進や従業員の業務効率の向上を実現できるようになります。また、法規制のコンプライアンス違反や情報漏洩リスクを提言するとともに、法規制コンプライアンス違反によるリスクや訴訟対応時のコストを低減できるようになります。

情報ガバナンス 成功のポイント

企業や組織は、情報ガバナンスを構築するうえで、全社規模で取り組む必要があります。そのためには、体制・ポリシー・プロセス・テクノロジーの視点が必要不可欠です。

Point1 組織全体で取り組む

情報ガバナンスは組織全体で取り組むべきものです。経営陣のコミットメントはもちろんのこと、従業員全体までそのプロセスを浸透させる必要があります。中でも積極的に仕組みを作り組織全体に発信していくという事務局や担当部署のリーダーシップが成功へと導きます。

Point2 価値や保存期間に応じた分類と管理

事業継続に関わるものや法規制の要求事項などの記録用文書、会議資料のドラフトやメールマガジンなど記録に該当しない情報など価値に応じて文書を分類することが重要です。また、それぞれに応じた廃棄されるまでの期間に応じた活動などを定義します。

Point3 業務プロセスの構築

いざポリシーを策定して、文書管理のルールを定めても、今までの業務プロセスを変えたくないから、ルールを守らないということはよく起きます。結局「形だけのルール」と「現場のルール」のダブルスタンダードが生まれてしまっては意味がありません。文書情報を管理できる業務プロセスを構築していくことも情報ガバナンスには不可欠です。

Point4 統合文書管理プラットフォーム

企業組織の業務プロセスや情報ガバナンスの徹底を実現するためにはテクノロジーの力が必要不可欠です。特に管理性やセキュリティ、柔軟な働き方を実現するためにはクラウド型の文書情報管理基盤が必要です。

情報ガバナンス強化アプローチ

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

情報ガバナンスの構築をするうえで、現状を把握することが極めて重要になります。そこからあるべき姿へと近づけて行きます。また、組織全体への定着をどのように評価するかを含めて検討する必要があります。

5段階の習熟度モデル

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

情報ガバナンスの構築は一足飛びにできるものではありません。5段階の習熟度モデルは、まずは現状を理解し、あるべき姿を定点観測する際に用います。

情報ガバナンス チェックシート

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

自社の情報ガバナンスの浸透度をチェックしてみよう!チェックが1つでもできなければ改善していくことが重要です。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
フォレンジック & クライシスマネジメントサービス

出口 朋子 / Tomoko Deguchi

ヴァイスプレジデント

2007年よりソフトウェア開発会社にてWebシステム、携帯開発に従事。2014年よりeDiscovery支援、Forensic調査専門企業にて、クロスボーダー案件対応担当。2017年よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。情報ガバナンスに関する業務・システムの構築を支援。