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「2030年までに女性役員比率30パーセントを目指す」。政府が掲げる期限まで、あと約5年となった。現時点では約16パーセントと言われており、これからの5年がとても重要になってくる。一方で、アメリカではDEIプログラムの廃止など、バックラッシュと言われる状況になっている。政治的・ビジネス的に様々な意図があるだろうが、日本とアメリカの現状・背景は全く異なるもの。もともとDEIに否定的だった層が、アメリカを理由に、取組みを翻すことがないことを願う。▼アメリカのバックラッシュは、2023年の大学の入学選考で黒人や中南米系を優遇する「積極的差別是正措置」(アファーマティブアクション)を違憲とする連邦最高裁の判決から始まっていると言われる。実際私が2024年にニューヨークを訪れた際に意見交換した大学の教員たちも悩んでいた。▼アメリカでは近年「行き過ぎたリベラル(Wokeism)」と批判される事象や法律も存在する。例えば、未成年のトランスジェンダーがホルモン療法や性別適合手術を受ける権利などは、「子どもが不可逆的な決定をするのは危険」であるとされ、リベラル派の中からも慎重な対応を求める声があがっている。▼日本がこのレベルでのDEIが進んでいるのかと言えば決してそうではないだろう。性別や人種、思想によって差別されることなくその能力を発揮できる社会にしていくことはDEIではなく、「人権」問題なのだと考える。3月8日は国連が制定した国際女性デー。このタイミングで、日本はどのような社会を創っていくべきなのか、考える機会としたい。(パートナー 大塚泰子)