第3回 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 前田代表執行役が考えるDEIで目指す組織の姿
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
シニアコンサルタント
大沢 未希

多様なバックグラウンドを持つ方々にご登場いただき、DEI推進の課題や未来につなげるためのヒントを紹介する連載「Beyond DEI」。今回は、2024年6月にデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下、DTFA)の代表取締役に就任した前田善宏と、DTFA DEIリーダーの橋本久見が、DTFAにおけるDEIの位置づけや方向性、各DEI施策における課題や解決策などについて対談を行いました。
目次
前田 善宏
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
代表取締役
外資系コンサルティング会社、財務アドバイザリー会社を経てデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。多業種における戦略、財務、M&A・再編等のアドバイザリー業務に幅広く従事。2024年6月よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 代表執行役に就任。
橋本 久見
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
マネージングディレクター
米国デロイト・トウシュLLP入社後、監査法人トーマツ コーポレートファイナンス部に移籍し、M&Aに係わる様々なアドバイザリー業務に携わる。その後米国大手アドバイザリーファームを経て、2014年にデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に復帰。現在はアナリティクス業務を中心に従事。2024年6月よりDTFA DEIリーダーに就任し、各種DEI施策の推進にイニシアチブを発揮。
経営戦略としてのDEI
橋本
まず初めに経営戦略上のDEIの位置づけをお聞かせください。なぜDEIの推進がビジネスにおいて有効なのでしょうか。
前田
DTFAでは、DEIを重要経営戦略の一つとして位置付けています。この理由としては、第一にあらゆる個々人の違いを尊重し、誰もが貢献できる会社作りを行うことは当然のことでありながら、実際の達成には、制度面の整備や意識改革など、全社的な推進が必要不可欠であるため、DEIを重要な経営戦略として位置付け、積極的に推進していく必要があるからです。
第二には、多様な人材が能力を最大限に発揮する環境を会社が整えることで、メンバー一人ひとりが持つポテンシャルを発揮することが可能となり、その結果、異なる経験や価値観から多様なアイデアが生まれ、組織の原動力になると考えるからです。
橋本
DEI推進にあたり、具体的にはどのような施策や取り組みが有効だとお考えですか。
前田
育児や介護、言語をはじめとする文化的な価値観の違いなどの様々なご事情により、キャリアとの両立に悩まれている方々がいらっしゃると思います。会社としては、これらの悩みを取り除き、その能力を最大限に発揮して、皆さんが生き生きと活躍できる様々な制度を整えることがまず重要だと思います。
具体的には、女性男性問わず産前産後休業や育児休業の積極的な取得に向けた推進、産休を取られた後に復帰しやすい環境作り、言語や文化的な障壁を取り除くための取り組みなど、それぞれの悩みや事情に寄り添った制度作りが有効と考えます。
DEI推進にあたっての課題
橋本
現在のDTFAにおけるDEI推進状況はどのようにお感じになっていらっしゃいますか。
前田
女性活躍、育児や介護サポート制度の整備など、重要テーマを中心としてDEIの取り組みを積極的に推進してはいますが、海外と比べると劣後していると思っています。例えば、Internationalメンバーの採用は積極的に行っていますが、日本語を第一言語としないメンバーもご活躍頂けるように、日本語の勉強の機会の提供や生活面でお困りごとに対する支援などに不足を感じています。これに限らず、今後も多様な面におけるサポートの強化をしていきたいと考えています。
橋本
会社としては男性の育児休業などの取得率100%を目指しておりますが、実態としては道半ばというところです。会社はどのようなサポートができるとお考えでしょうか。
前田
育児休業の取得を躊躇している方の中には、キャリアの停滞や復職に不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。会社としては、個人の機会を育休によって狭めたり、仕事上不利になることはあってはならないと思いますし、純粋なスキルや成果によって評価がされるべきだと思います。育児の時期は意外に早く過ぎ去ってしまうものですので、パートナーや周囲の人とよく話し合って頂き、後ろめたさを感じず、ポジティブに休みを取得して頂きたいと思います。
女性活躍推進について
橋本
グローバルと比較して、DTFAは女性管理職が少ない部門がありますが、そのあたりはどのようにお考えですか。
前田
例えば、中途採用における指標の中に一定数女性を採用する項目を入れたり、新卒採用の際に女性の採用比率を高めに設定するなど、今は様々な仕組みを導入することで女性の割合を増やすようにしています。彼女らが昇進していくことで、段々と女性管理職が増えていくのではないかと思います。ただ、ゆくゆくは仕組みの中で強制されるのではなく、自然と女性が積極的に採用されるようになると良いなと思っています。
相互理解を深め、自然に協力し合える体制の構築
橋本
仕事柄、クライアント対応やクロスボーダー案件などで深夜や早朝に勤務しなくてはならないこともある中で、ライフステージの変化によって離職や転籍を選ぶ人もいます。こういった方々をどのようにサポートしていくべきかというのは永遠の課題のように思います。
前田
本当にその通りだと思います。そういった方が安心して働けるように、相互理解を促進し、カバー体制を強化しなくてはならないと思っています。例えば、お子さんのお迎えで早く帰らないといけないメンバーがいたらその時間をカバーできる別のメンバーを配置するようにチーム体制を組むことや、お子さんが急に熱を出してしまい抜けなくてはいけないメンバーがいた際、自然と代わりに別のメンバーがカバーに入れるような理解・協力のある環境にしていきたいと強く思っています。
これはDEIに関わらず、事故や病気などで突然働けなくなることは誰にでも起こりうることなので、リスクヘッジのためにもこういったカバー体制を整えることは非常に重要だと思っています。育児や介護などとの両立で時間的な拘束がある方はもちろんのこと、そうでない方であっても、言語・文化的な違いや、朝・夜が苦手といった生活習慣の違いなど、メンバーそれぞれに「個性」があります。そういった「個性」をお互いが理解し協力し合うことで、チームとしてバリューを最大限発揮できるようにすることが、DEIの「多様性の尊重」の一つであると考えており、そのような職場環境を作れるよう強く推進していきたいと思います。
ワークもライフも推進し、すべてのタレントが活躍できる環境づくり
橋本
DEIについて、前田さんご自身のご経験や感じていらっしゃることがあれば、教えてください。
永津
私の子どもが幼い頃は、男性が育児休業を取ることが一般的でなかった時代でもあり、育児支援もないままに夫婦で協力して綱渡りで育児に奮闘しました。当時は若さで何とか乗り切ったものの、今であれば制度を利用し、あの眠さと辛さを少しでも軽減できたのではないかと懐かしくも面映ゆくも思い出します。しかしながら子どもの成長に向き合う時間は、自らの視野や理解力に幅と奥行きを持たせ、寛容性を培うかけがえのない経験をもたらしてくれました。現在育児に奮闘中の皆さんには、ぜひ育休の取得などの制度を利用し、今このときにしかできない貴重な時間を経験していただき、将来の仕事の糧としてほしいと切に願っています。
また私は、これまで厳しい上下関係がないフラットな組織で働いてきた経験から、自分の意見を率直に言いやすく、役職や立場を問わず従業員同士の意見交換が活発な場こそ、組織を活性化させるものと身に染みて感じてきました。皆さんが伸び伸びと仕事ができ、能力や意欲を最大限に発揮できるよう、DTFAをよりフラットで風通しの良い職場にしていきたいと思っています。
橋本
最後に、メッセージをお願いします。
前田
会社というのは宿り木のようなものだと思っています。結婚・出産といったライフステージの変化などあらゆる人生のフェーズにおける居場所の一つとして会社を捉えてもらい、入社される方も、会社を出て新しい挑戦をされる方も自由に受け入れ、仕事を通じて皆さんの成長を促す場所であるべきだと考えています。皆さんのライフステージの応援はもちろん、様々な場面での活躍を後押しする制度・環境をDEIの観点から更に充実させていきますので、どうぞご期待ください。皆で一緒にこのDTFAという木を大きく育てていきましょう。