デロイト トーマツ グループ所定の入会審査を経た専門家のみが集結するプラットフォーム「M&A プラス」。参加しているのは、全国の士業、金融機関、M&A専門会社などです。1,000名超の専門家たちが集結するネットワークは幅広く、地域を跨いでのマッチングが可能となっています。ここをベースに実施される取引は、専門家を介しているからこその公正さを維持。M&Aを視野に入れている企業にとっては、大きな安心感が得られると期待できます。

今回は、このM&Aプラスにジョインしているアイザワ証券株式会社(以下、アイザワ証券)、株式会社ポーラスターパートナーズ(以下、ポーラスターパートナーズ)2社を通して実施されたM&Aについて、アドバイザーとして存在する両社の強みなどについて語り合う座談会が行われました。

豊福 哲矢氏

アイザワ証券株式会社
CRM部ソリューション課

笠間 浩明氏

株式会社ポーラスターパートナーズ
公認会計士・税理士

    

    

     

堂阪 圭氏

株式会社ポーラスターパートナーズ

田村 貴翔氏

株式会社ポーラスターパートナーズ

M&Aに向き合う企業が期待する多様なシナジー

――まずは今回成約したM&Aの、譲渡・譲受企業の概要について教えてください。

豊福

譲渡企業は、東京都を拠点とする建築業を営んでいます。遮熱や目隠しといった窓ガラスのフィルム施工事業を行なっており、顧客は学校をはじめ公共施設が中心です。

笠間

それに対し、埼玉県に所在するインテリア会社が譲受企業となりました。営業エリアは埼玉県のほか、東京都や千葉県も含んでおり、首都圏一帯といえます。壁紙や床材、カーテンなど窓周りに強く、大型の工事を受託することが多い、首都圏でも高いシェアを誇る企業です。

――両企業はM&Aによって、どんなシナジーを期待されていたのでしょう。

豊福

今回、譲受企業は窓周りの施工事業が強いとお聞きしておりましたので、当社で譲受企業の企業サイトや買手FAからの説明、トップ面談などを通して、両者の事業領域が近いことを確認しました。譲渡企業の持つ技術・ノウハウが、譲受企業に受け継がれていけば今後大きなシナジーが期待できますし、譲渡企業にとっては、これまで人材不足で逃してしまっていた案件を受託することも可能になると考えました。これは両企業にとってメリットといえることから、今回の譲受企業をお薦めさせていただきました。

笠間

近年、新築の着工件数は減り続けています。同時に、高気密、高断熱が求められ、窓も少なく、小さくなっている。エコロジーの観点から、開口部が多いとエネルギー効率が悪くなるという意味もあるでしょう。この傾向が進んでいくと考えれば、カーテンなどの需要も減少すると予測されます。そこで、ガラスフィルムという新しい素材を取り入れることに着目しました。建築工程にガラスフィルムの施工業務をプラスすることは容易ですし、アイザワ証券のおっしゃるようにガラスフィルムのノウハウなどが手にできるのは一つの価値との判断がなされ、アプローチにつながりました。

堂阪

営業エリアも重なる部分が大きかったため、売上の点でもシナジー効果が生まれると考えられたのも要因の一つです。

――ところで、アイザワ証券が今回の案件をM&Aプラスに掲載してくださった経緯についてもお聞かせいただけますか。

豊福

当社ネットワーク内の譲受候補となる企業は、大手の上場企業から小さな法人までいらっしゃいますが、今回の案件は規模としては決して大きくありません。一定の事業規模のある会社の譲受を希望する企業が多くを占めますので、案件を受託させていただいた当初より、譲受企業を探すにも苦心するだろうと予測したのです。場合によっては、当社内のネットワークだけでは完結できないことも考えられたため、M&Aプラスに掲載してネットワークを補強したいとの狙いがありました。

左から、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の宮川・牟禮、アイザワ証券の豊福氏、ポーラスターパートナーズの堂阪氏・笠間氏・田村氏

M&Aの専門家とはいえそれぞれにカラーが存在し、独自性ある活動が展開される

――本案件成約までのアドバイザリー業務を行なったのがアイザワ証券、ポーラスターパートナーズですが、自社の業務の特徴や強みはどこにあると考えていますか。

豊福

当社は100年以上の歴史を持つ対面型の証券会社であり、目の前にいるお客さま、そのご要望にどれだけ真摯に向き合うかを常に考え、大切にしているのが特徴です。M&Aアドバイザリー業務は、一般的に収益目標があるものですが、当社にはそれがありません。また、案件の規模についても制約はなく、どのような業種、規模感の企業でも対応しています。これもまた、特徴の一つです。そのうえで、お客さまの実需に合わせたサービス提供を行い、M&Aだけでなく、第三者承継など幅広い選択肢の中からベストプラクティスを探して提供させていただいています。

笠間

当社は、母体となる笠間税務会計事務所のM&A部門です。会計事務所が注力しているのは企業再生ですので、私たちも再生型のM&Aを実施しています。アドバイザリー業務そのものは、母体の会計事務所が得意とする宿泊業、建築業に業種領域を絞っていますが、今後は医療機器の分野にも力を入れていく計画があります。いずれの領域も、行政の許認可が関連するため業務的な難易度は高いのは事実。しかし、将来を見据えての動きといえるでしょう。

堂阪

従来手がけている宿泊業においては再生企業も多く、リソースが非常に限られている案件が多いです。そのため、私たちも現場に入って書類整理からメールアドレス、Wi-Fiの設定などまで行うことがたびたびあります。こういった地道な作業も厭わないのが当社の特色です。

田村

今回の案件でも企業にかなり入り込み、社長さまと一緒になって同じ目線、立ち位置を保ち、1から物事を考えていきました。

M&Aプラスを活用することで得られる安心感

――今回利活用いただいたM&Aプラスについて、両社からご意見を伺いたいと思います。

豊福

世の中にM&Aのプラットフォームは多々ありますが、当社はM&Aプラスのみを現在利用しております。理由としては、質の高い専門家だけに登録が限られていること、加えて、FAとのマッチングプラットフォームという点にも好印象を持ちました。そもそもデロイトさんの運営ですから安心感がありましたし、当然FAもその先にいらっしゃる企業も信頼ができると考えたのです。特に今回はやや難しい案件でしたので、M&Aプラスがなければ成功しなかったと感じています。

笠間

他社プラットフォームと比較して、厳選された環境があると感じました。案件についてもそうですし、FAがしっかりつくのも安心できます。

堂阪

付け加えるなら、アドバイザリー業務において、FAとコミュニケーションが揃ったのも業務負担を減らしてくれた要因です。M&A成約までのプロセスについて共通認識を持ち合わせているため、非常にスムーズな進行でした。

――本日は貴重なお時間をありがとうございました。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
コーポレートイノベーション

牟禮 貴史 / MURE TAKAFUMI

シニアコンサルタント

地域金融機関にて主に法人融資・有価証券運用を担当、政府系金融機関にてM&Aアドバイザリー業務に従事。現在は金融機関を中心に事業承継問題解決に向けたマッチング支援等を実施。公的機関との連携業務経験も有し、事業承継における官民の課題感・方針に関する知見も持ち合わせる。