世界各国でポピュリズムや排他的な主張が台頭し、政策とナラティブ(主観的な物語)の関係が注目を集めている。ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)が政策に及ぼす影響が大きくなる中、米欧では「ナラティブ政策フレームワーク」(Narrative Policy Framework、NPF)が政策過程分析の手法として発展した。NPFの意義と具体的な手法を概説したい。事例として、2016年にインターネットに投稿された「保育園落ちた」という文章を取り上げ、このナラティブがどのように日本の待機児童対策に影響したのかを分析する。

 

日本においても2020年前後から、ナラティブが政策・政治判断・選挙に影響したと見られる事例は続々と起きている。NPFの研究を進め、その成果を政策の立案・施行に反映していくことは、政策分析・評価の水準の向上と、効果的な政策の社会実装(社会からの受容の促進)につながるはずである。

江田 覚 / Satoru Kohda

編集長/主席研究員

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社し、「戦略研究所設立プロジェクト」に従事。調査分析、政策調整に携わる。2022年にデロイト トーマツに参画する前は、時事通信社にて編集委員、ワシントン特派員を務めた。
専門分野は国際関係論、産業政策論、政策過程分析。

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