6月欧州議会選挙で占う地政学リスク――もしトラ・中東事変・サプライチェーンへの影響は
グローバルに展開する日本企業にとって、欧州議会の右傾化は、自国優先の保護主義への対応で負担が増すリスクがある。一方で、環境重視から経済重視へのシフトや対中の経済関係の再評価による規制強化など、漁夫の利を得られるチャンスもある。M&Aを含む企業の投資計画やポートフォリオの再構築を考える上で、今回の欧州議会選挙の結果が経営判断の分水嶺となるかもしれない。
目次
2024年は、米国を筆頭に世界情勢を左右する国や地域で選挙が相次いで実施される。欧州連合(EU)で6月に行われる欧州議会選挙は、これまで、日本での注目度はあまり高くなかったが、欧州と米国、中国、中東関係の複雑性が増す昨今の国際環境下では要注目となる。
今回の欧州議会選では、自国優先主義(反EU)、反移民・難民、反気候変動政策を掲げる極右政党の議席数が増加すると予想されている。極右政党が勢力を拡大した場合、どういった政策転換が起こり得るのか。本稿では、欧州議会選に影響を与える米国や中東情勢を踏まえながら、欧州議会選の争点と選挙のビジネスへの影響について検討する。
ポイント
Ø EUの主要政党が勢力を保てば、フレンドショアリングを念頭に置いた産業政策や、気候変動対策と経済成長の両立を掲げる欧州グリーンディールなど、これまでの路線が継続される一方、懐疑的な右派政党が勢力を伸ばし、右傾化が加速すれば、各国が、独自の保護主義的な措置、環境政策、消費者保護などを講じることで、グローバルにビジネスを展開する企業の負担は増加する恐れがある
Ø EU域内で既に移民抑制の流れはあるが、右傾化でこの傾向が強まると、域内における労働不足(特に、サービス業、建設業、製造業など)や高齢化問題が深刻化する恐れがある
Ø 右傾化で経済成長を優先する動きが強まれば、欧州グリーンディールの一部の取組が実施困難になる恐れもある。環境規制強化よりも、フランスやドイツのようにグリーン産業の育成に重きが置かれ、EVシフトの更なる遅れなど、日本企業にとって追い風になるチャンスもある
Ø 域内産業の保護とデリスキング(脱対中依存)については、どの政党もこれを支持しており、この路線が継続される見込み。特に右派の勢力が拡大すると、中国との経済関係の再評価や貿易規制の強化を求める声が強まり、中国企業と競合するセクターにとって、有利な展開となる可能性がある
図1 2024年の主要国政選挙
(出所)各種報道
欧州で右派政党勢力拡大――反EU、反移民、反グリーンへと向かうのか
欧州では、2024年6月6日から9日にかけて欧州議会選挙が実施される。EUの加盟国には、人口比に基づいて議席数が割り当てられており、現在は、ドイツが96議席で最多、次いでフランスが79議席、イタリアが76議席を有する。本議会選では、全議席数が現在の705議席から、720議席に引き上げられ、各国での直接選挙により議員が選出される。なお、欧州議員の任期は5年だ。
今回の選挙での注目ポイントは、
l 主要政党である、欧州人民党(EPP、中道右派)、社会民主進歩同盟(S&D、中道左派)、リニュー・ヨーロッパ(RE、中道リベラル)が過半数を獲得し、フレンドショアリングを念頭に置いた産業政策や、気候変動対策と経済成長の両立を掲げる欧州グリーンディールなど、これまでの路線が継続されるのか。
l あるいは、EU懐疑派とされている右派政党、欧州保守改革グループ(ECR、右派)やアイデンティティーと民主主義(ID、極右)の勢力拡大により、EU域内でもポピュリズムが台頭し、自国優先が強まり、反EU、反移民、反グリーン、そして保護主義へと向かうのか。
――である。
図2 欧州議会主要政党と政策
(参照)European Parliament, 2024 European election results: Current legislature in figures (April 2024)
米大統領選が与える影響――欧州議会選のトランプ化は主要政党の追い風に
米国では、2024年11月の大統領選に向けた動きがすでに本格化している。2020年に続き、バイデン大統領とトランプ前大統領との一騎打ちになることは確定的だが、支持率は拮抗している。トランプ前大統領は、第1次政権(2017~2021年)と同様に、「アメリカ・ファースト」を掲げ、二国間の「ディール(取引)」を通して米国の国益確保を目指す姿勢だ。こうした米国第一主義が、第2次トランプ政権が発足した場合、さらに際立つ可能性もある。
<※参照:トランプ氏再選後に待ち受ける政策急転換 | DTFA Institute | デロイト トーマツ グループ (deloitte.jp)>
このため、仮に米国でトランプ氏が優勢となり、「アメリカ・ファースト」が鮮明になると、欧州ではフランスを中心に米国からの戦略的自律を強める動きが加速し、EU統合の深化・進化という「強いヨーロッパ」を求める声が高まることが予想される。これは、欧州議会の主要政党(EPP、S&D、RE)には追い風になる。
一方で、留意すべき点として、ヨーロッパ外交評議会(ECFR)の調査によると、EU市民の多くは、米国よりも自国の政治システムは機能不全に陥っていると回答している(※1、図3参照)。これは、現政権に対して、EU市民が不満を募らせていることを意味する。こうしたことから、EUにおいてもトランプ現象に似た動きが起こり得るということは想像に難くない。
図3 回答者の国、EU、米国の政治システムは機能しているか?
(データソース)ECFR
※12ヶ国(オーストリア、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スウェーデン)の平均。2024年1月時点の回答。
実際に、ドイツやイタリアなどEUの主要国でも、右派が勢力を拡大している。右派の一部の政党では、反移民や反ウクライナ支援など、トランプ氏が掲げる政策を模倣しており、米大統領選の争点が欧州議会選に波及する可能性がある(※2)。EU諸国でEUに懐疑的な右派政党が勢力を伸ばし、右傾化が加速すれば、欧州諸国においても自国第一主義、すなわち自国の利益を追求する傾向が強まるだろう。そして、各国が、独自の保護主義的な措置、環境政策、消費者保護などを講じることで、グローバルにビジネスを展開する企業の負担は増加する恐れがある。
中東情勢が与える影響――欧州でポピュリズム台頭か
中東情勢が欧州に与える影響として注目すべきは、下記の3つである。
(1) 難民・移民問題
(2) イスラエル・パレスチナ問題をめぐる欧州の分断
(3) 資源価格高騰による不満による与党支持率低下の懸念
第一に、中東情勢が緊迫すると、パレスチナなどから移民の波が欧州に押し寄せる可能性がある。治安悪化、財政負担に対する懸念から、欧州では移民増加に対する不満の声が高まっており、これが欧州議会選における主要争点であるとの見方もある(※3)。
ヨーロッパでは、中東やアフリカからの移民が急増している(※図4参照)。移民に対する社会的不安が高まる中、反移民を掲げるポピュリスト政党が躍進している。
図4 欧州への移民数 推移
(データソース)European Commission (2024)
この傾向が顕著に表れている国が、ドイツである。ドイツは、元々移民の受入には寛容だった(※4)。しかし、言語の障壁もあり、文化的な軋轢や宗教上の衝突が起こり、また社会保障負担に対する不公平感も相まって、ドイツでは反移民ムードが強まっている。こうした背景から、移民排斥や同化政策を掲げる政党が急伸している(※5、図5参照)。
図5 ドイツ世論調査 政党支持率
(データソース)アレンスバッハ世論調査研究所
※調査期間:2024年4月5日~18日
このようにEU域内で移民抑制を求める声が高まっており、こうした動きが実際にEUの政策変更をもたらした。2024年5月に欧州連合(EU)理事会は、「移民・亡命に関する協定(Pact on Migration and Asylum)」を採択。EU域内への入国審査を厳格化するなど、移民流入を抑制する(※6)。
仮に、EUが難民、移民の受入を抑制する動きを強めると、域内における労働不足(特に、サービス業、建設業、製造業など)や高齢化問題が深刻化する恐れがある。また人権軽視や排外主義の強化にも繋がり、長期的にはEU経済、社会的にはコストが増加となるだろう。
第二に留意すべきは、EU域内の分断である。2023年10月7日、パレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルに対して、ロケット弾などを発射したことにより、イスラエルとハマスの武力衝突が起こった。現在も戦闘が続いているが、このイスラエル・パレスチナ間の問題をめぐって、ヨーロッパでは世論が割れている。
まず、世代間の見解の違いだ。欧米では若い世代を中心にパレスチナ支持が広がっている(※7)。さらに、ウクライナに侵攻をしたロシアについては非難し、ガザへの攻撃を続けるイスラエルを支持するという姿勢(ダブルスタンダード)を疑問視する見方もある。
また、EU加盟国間でも、イスラエル・パレスチナ情勢に対する見解は分かれている(※図6参照)。EU内で分断が進むと、それぞれの国が独自に支援策などを講じる可能性もある。こうした、EUの分断は、グローバル企業にとってリスクとなる。例えば、イスラエル企業との関係は「親イスラエル」だと見なされ、企業イメージの悪化につながる恐れがある。実際、トルコでは、イスラエルを支持する企業の製品を排除する動きがある(※8)。
図6 イスラエル・パレスチナに対するEU加盟国のスタンス
(データソース)EU Matrix
第三に、中東情勢が欧州に与える影響として、原油の供給リスクと価格リスク、そしてそれに起因する中低所得層の与党へ不満増加の懸念がある。
仮に、イスラエルとイランの対立がエスカレートし、原油生産は深刻な打撃を受け、ホルムズ海峡が閉鎖される事態となれば、供給が途絶える可能性がある。ブルームバーグ・インテリジェンスは、この場合、原油1バレル=150米ドルまで上昇する可能性があるという試算を出している。実際、2024年4月19日、イスラエルがイランに対し攻撃したとの報道を受け、原油相場は急騰している。
2023年10月以降、欧州のインフレ率は減速傾向にあり、2%台で推移しているものの、ガソリン価格など身近な品目の値上がりは、与党への支持率の経過につながりやすく、欧州議会選で自国優先色の強い右派に追い風となる可能性がある。
際立つ気候変動対応疲れ――規制強化もよりも経済成長重視
実際に、EU市民は今回の議会選で何を主要な争点だと見ているのだろうか。
ヨーロッパ外交評議会(ECFR)の調査によると、EU市民にとっての最大の課題は、移民問題よりもむしろ、経済問題、コロナへの対応、そして気候変動だ。欧州は、過去十数年間、金融不安(欧州債務危機)、難民危機、新型コロナウィルスのパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻、そして気候危機などに直面してきたためだ。(※図7参照)。
図7 過去10年間で自分の将来に対する考えに最も影響を与えたイシューは何か
(データソース)ECFR。2024年1月時点の回答。
気候変動対策は、EUで賛否が分かれている問題の1つだ。気候変動対策で世界のリーダーを目指す欧州は、これを最優先事項と位置づけ、2019年12月に「欧州グリーンディール」を発表した。持続可能なEU経済の実現に向けて、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「気候中立」の達成を目標としている。その後も、炭素国境調整措置やバッテリー規則など気候変動対策に関する措置を矢継ぎ早に展開している。
気候変動対策が強化されていく一方で、EU市民の中には、炭素価格の引き上げや再生可能エネルギー導入によるエネルギーコストの上昇に対する不満や欧州企業の国際競争力低下への懸念が強まっている(※図8参照)。2023年に入ってから、欧州では「グリーンラッシュ(Greenlash)」が始まった。これは、グリーンバックラッシュ(環境政策の逆戻り)を意味し、環境関連の規制強化に反対するもので、フランスやドイツでこうした動きは顕在化し、欧州議会にも影響を及ぼしている。
図8 二酸化炭素排出量の削減と電気代の値下げ(エネルギーコストの削減)、どちらを優先すべきか
(データソース)ECFR。2024年1月時点の回答。
2023年5月、国内事情(※9)を背景に、フランスのマクロン大統領は、EUによる環境規制の一時停止(European regulatory pause)を呼びかけ、フランスの再産業化(reindustrialization)のために、税控除や多額の投資を通じてグリーン産業を育成する戦略を発表した(※10)。
ドイツにおいても反グリーンで極右ポピュリスト政党のAfDが勢力を拡大。2023年9月に暖房システムを新設する際に再生可能エネルギーの利用を義務付ける建造物エネルギー法(暖房法)を強引に成立させた、第2与党である緑の党(Grünen)への支持率は下落した(※11)。
グリーンラッシュは欧州議会にも波及し、気候変動対策を主導してきた政党でも、経済成長と気候変動対応の両立を強調し、これ以上の環境規制は不要だと唱え始めるなど、欧州グリーンディールの優先順位の見直しの転換点にある(※12)。また、環境保護や生物多様性よりも食糧安全保障や農業に従事する労働者の雇用確保を優先する方針だ(※13)。
加えて、今回の欧州議会選の争点を見るうえで重要なのは、各国の課題認識の違いである。オーストリア、ドイツ、オランダ、スウェーデンなど経済的豊かな国々ほど移民に対する懸念が強い。一方で、ポーランドやスウェーデンのように、ウクライナに地理的に近い国々は、ウクライナ戦争への関心が高く、ウクライナ支援の強化を望む傾向がある。仮にこうしたEU加盟国間の課題認識の違いが拡大すれば、EU統合の深化に影響を及ぼす可能性があり、EU懐疑派のポピュリスト政党に追い風となろう。
政策転換のシナリオ――右傾化が進めば、気候変動政策は軌道修正も
欧州で右傾化が進むと、どのような政策転換が起こり得るのか。6月の欧州議会選で、右派政党(EPP、ECR、ID)が過半数の議席を獲得した際のシナリオを気候変動政策と経済安全保障の視点から検討する。
(1)気候変動政策
EUでは、既に多くの気候変動対策に関する法案が成立していることから、グリーンラッシュ(反グリーン)の影響は限定的だとされる。それでも、EPPなどの右派政党は、欧州グリーンディールにおける取組の優先順位の見直しを求めるだろう。経済成長を優先する動きが強まれば、欧州グリーンディールの一部の取組が実施困難になる恐れもある。環境規制強化よりも、フランスやドイツのようにグリーン産業の育成に重きが置かれるだろう。
また、IDなどのポピュリスト政党は、脱炭素を推進することから生じる消費者への負担増には強く反対している。EUでは、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトを推し進めており、2035年以降は、EU域内の新車販売のすべてを原則ゼロエミッション車にする方針を示している(※例外措置として合成燃料を使う車の販売は容認)。しかしこうした方針が撤回される可能性もある。実際、EPPは、EVシフトを強制するのではなく、排出権取引や再生可能エネルギーの拡大、循環経済や市場原理に基づいた気候変動対策を求めるとしている(※14)。
(2)経済安全保障
欧州は、欧州域内の産業の空洞化を防ぎ、特定国への一方的な依存を軽減し、グローバル市場での欧州の競争力確保を目指しており、2023年6月に経済安全保障戦略を発表、2024年1月にはより具体的なパッケージも打ち出している。域内産業の保護とデリスキング(脱対中依存)については、どの政党もこれを支持しており、この路線が継続される見込みだ。特に右派の勢力が拡大すると、中国との経済関係の再評価や貿易規制の強化を求める声が強まる恐れがある。また、EU域内産業の競争力を高めるため、保護主義的な措置や域内産業への支援措置(補助金)などが取られる可能性もあり、経済安保を強化する動きが進むだろう。
他方、留意すべき点として、まず、EU内の分断の深まりがある。経済安全保障政策はEUレベルで進んでおり、とりわけ、他国との協調を進めるにはEU内で足並みを揃えることが必要である。EU内での分断が深まれば、各国の足並みがこれまで以上に揃わず、経済安全保障政策の進展が遅れることも想定される。また、極右政党はEU懐疑派であるという点も留意すべき点として挙げられる。右派は、反EUの立場から、EUの権限が強化されることを望まない。そのため、EUではなく、各国で独自にこうした保護主義的な措置を講じられる可能性がある。
EUのソフトパワー減退がもたらすリスク――人権や環境政策への影響大(中長期的な影響)
EU内で分断の深まりや、右派勢力の伸長による自国優先主義の加速は、EUレベルでの日本との協力を従来よりも難航させる可能性がある。日EUは、2023年に「日EU戦略対話」を創設するなど、一層協力関係を強めており、特に戦略物資の特定国への依存度低下や脱炭素分野での支援策のルール作りといった、企業にとって重要な分野での協力の進展が大きい。仮に、こういった分野で協力が遅れれば、日本企業の活動にも大いに影響しうる。
また、より大きな構図で見れば、EUが世界をリードしてきた人権や環境政策分野において後退するということは、EUが価値観や規制の対外波及力というソフトパワーを減退させるということである。これは、米中対立、ウクライナ、ガザ地区での戦争といった戦略的対立の時代にあって、日本が価値観や経済安保、経済協力において信頼できるパートナーが相対的に力を失うことを意味する。対中のみならず、経済安全保障政策における米国との協調という意味でも、日本にとっての欧州とのパートナーシップの意義は大きく、今後の国際秩序を決める一つの要素と言っても過言ではない。日本企業への影響について論じられることの少ない欧州議会選だが、その影響は決して小さくない。企業には、これまで以上に欧州各国の動向をウォッチしていくことが求められる。
<参考文献・資料>
(※1)Ivan Krastev, Mark Leonard, “Wars and elections: How European leaders can maintain public support for Ukraine”, European Council on Foreign Relations (February 21. 2024).
(※2)ウクライナ支援をめぐっては、ポピュリスト政党の中でも意見が分かれている。ハンガリーのオルバン政権やスロバキアのフィツォ政権は、ウクライナ支援に対して消極的である。他方、イタリアのメローニ政権は、ウクライナ支援を表明している。
Matina Stevis-Gridneff and Steven Erlanger, “Hungary Blocks Ukraine Aid After E.U. Opens Door to Membership”, The New York Times (December 14, 2023). “Italy is 'fully committed' to Ukraine support, Meloni tells NATO chief”, Euronews (November 10, 2022).
(※3)Lucia Schulten, “Is migration the EU's biggest challenge in 2024?”, DW (February 1, 2024).
(※4)メルケル政権(2000~2018年、キリスト教民主同盟:CDU)は、2015年の難民危機時に100万人の難民受入を表明し、社会民主党(SPD)など多くの政党がこの政策を支持していた。
(※5)移民排斥を掲げる極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)の支持率が急上昇し、与党である社会民主党(SPD)を抜き2位となった。また、左派ポピュリストであるザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)もAfDと同様に難民受入を規制すべきだと主張。AfDのようにEU脱退は掲げていないものの、ウクライナ支援に反対するなどAfDの主張を取り入れた政策を打ち出している。さらに、野党のキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首も移民を抑制する方針を発表した。移民には、ドイツの文化やドイツ語の習得などを要求するとしている(Sabine Kinkartz, “Friedrich Merz, the CDU and its bid for power”, DW (May 8, 2024)参照)。
(※6)European Commission, Pact on Migration and Asylum (updated April 11, 2024).
(※7)SNSではパレスチナ側の被害状況が拡散されており、パレスチナへの同情が高まっている。また、「主要メディアはイスラエル寄りの報道をしている」という批判もある(参照:“CNN staff say network’s pro-Israel slant amounts to ‘journalistic malpractice’”, The Guardian (February 4, 2024)).
(※8)“Turkish parliament dumps Coke, Nestle from menus over alleged Israel support”, Reuters (updated November 7, 2023).
(※9)フランスでは、2018年に燃料税引き上げや生活費の高騰に対する抗議デモ「黄色いベスト運動」が起こった。この税金は、二酸化炭素排出量の削減を目的としたものだったが、特に地方や低所得層に大きな負担を強いるものだとして、大規模な反政府デモへと発展した。
(※10)“Macron urges pause in EU environment regulations in push to 'reindustrialise' France”, France 24 (May 11, 2023).
(※11)“German lawmakers pass heating law that divided government”, DW (September 8, 2023).
(※12)これまで、社会民主進歩同盟(S&D)やリニュー・ヨーロッパ(RE)と共に欧州の気候変動対策を主導してきた欧州人民党(EPP)は、ここにきて方針を転換しようとしている。EPPのマニュフェストによると、経済成長と気候変動対応の両立を強調し、これ以上の環境規制は不要だとしている。
(※13)EPP, EPP Manifesto 2024 (accessed on May 15, 2024).
(※14)Nicholas Vinocur, Mari Eccles, “Europe’s conservative bloc calls for dropping ban on car engines, tripling border guards”, Politico (January 18, 2024).