2025年は日本にとって、大きな節目の年になる。終戦直後に生まれた団塊の世代が全員75歳以上となり、「重老齢社会」が始まるためだ。少子高齢化をはじめとした社会課題を解決するにはイノベーションを加速させることが不可欠になる。海外に目を向ければ、米国ではドナルド・トランプ氏の第2期政権が1月に発足する。トランプ次期大統領の米国第一主義によって、安全保障や気候変動対策など国際協調が必要な分野で日本は決断を求められる。持続的な成長に向けて何をすべきか、企画「2025年の論点」として順次レポートを公開する。

この企画では、

  • 注目すべき2025年施行の法律
  • 米国のトランプ第2期政権の政策とその影響
  • 家計調査に基づく消費の現状と見通し
  • 石破政権の政策運営と政治展望
  • 地域経済活性化の柱となり得る中堅企業の成長

――などを取り扱う。

初回は、これら個別のテーマの全てにおいて変革を迫る「少子高齢化」について、簡単に整理する。

2040年の危機」をチャンスに変えるには

2025年は昭和元年(1925年)から数えて、100年が経過することになる。「昭和100年」の位置づけから2025年を考える場合、これから始まる15年間の重みを意識すべきかもしれない。昭和の激流を決定づけたのは、その前の大正時代の15年間だった。昭和100年という現在地から15年の間に「何をするか」が、21世紀後半の日本の風景を定めることになる。

2025年に日本では、団塊世代(19471949年生まれ)の全員が75歳以上の後期高齢者となる。15年後には少子高齢化が一段と進み、「2040年の危機」が到来するといわれている。

想定されている事態は、

  • 団塊ジュニア世代(19711974年生まれ)の全てが65歳以上となり、総人口に対する高齢者の比率が35%に達する[i]
  • 労働人口は現状から約1000万人不足する[ii]
  • 独居高齢者が現状から25%増えて1000万人を超える[iii]
  • インフラ老朽化も進み、建設後50年を超えた道路・橋の割合が75%となる[iv]
  • 予防保全による道路の維持修繕・更新費が2兆~3兆円で推移する[v]

――などである。

こうした事態を奇貨として、変革を進めることができるのか。2025年以降の日本が迫られる課題である。

日本の政官財が社会実装すべきテーマは多岐にわたる。海外の成長の取り込みや高齢化に合わせた新規事業、AI(人工知能)やロボティクスの実装、中堅企業の生産性・成長力の強化、意思決定改革、リスク分析の精緻化などである。

DTFAインスティテュートは今回の企画で「重老齢社会」に突入する日本の課題を複数の角度から整理する。そして、2025年以降も継続的に分析と提言を行い、社会実装を提案・促進していく。

 

<参考文献・資料>

[i] 厚生労働省「令和6年版高齢社会白書」, 2024621日閣議決定(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/06pdf_index.html)。

[ii] リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」, 2024314日(https://www.recruit.co.jp/sustainability/service-work/0032.html)。


[iii]
ⅰと同じ。


[iv]
国土交通省「インフラメンテナンス情報」, 2018年度掲載(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html)


[v]
国土交通省「社会資本の将来の維持管理・更新費の推計」, 2018年度掲載(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/_pdf/research01_02_pdf02.pdf)。

 

※いずれも202412月9日閲覧。

江田 覚 / Satoru Kohda

編集長/主席研究員

時事通信社の記者、ワシントン特派員、編集委員として金融や経済外交、デジタル領域を取材した後、2022年7月にデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。DTFAインスティテュート設立プロジェクトに参画。
産業構造の変化、技術政策を研究。

この著者の記事一覧

駅 義則 / Yoshinori Eki

客員研究員

時事通信社で経済部記者として金融破綻や電機再編などを取材。米ブルームバーグ・ニュースに移籍し、アジア地域のテクノロジー業界担当の記者とエディターを務めた。東洋経済オンライン、三菱総合研究所の編集・対外発信業務に携わった後、2024年4月からDTFAインスティテュート客員研究員。

この著者の記事一覧