2026年7月28日、 FPoS Developers Conference 2026が東京で開催予定です。本カンファレンスにおいて当研究所所長神薗雅紀が講演を行います。

 

奪えない鍵が、信頼をつくる。 —FPoSが実現するデジタルアイデンティティとその未来—
イベント名称FPoS Developers Conference 2026
開催日時:2026/7/28 
開催場所:東京国際フォーラム

講演:神薗 雅紀

 

また、本カンファレンスに合わせてホワイトペーパーを公開いたしました。
 

第一回:日本におけるトラスト基盤の歩みと属性認証 ~ 個人認証から「何者であるか」の証明へ~
第二回:日本におけるトラスト基盤の歩みと属性認証 ~ 属性認証の技術的潮流 ~
第三回:日本におけるトラスト基盤の歩みと属性認証 ~ 属性認証のあるべき姿と求められるガバナンス ~

 

 

日本におけるトラスト基盤の歩みと属性認証

属性認証が作り出す新たなデジタル社会 


 

イントロダクション

社会のさまざまな活動がオンラインで行われるようになる中で、デジタル空間で「誰を、何をもとに信頼するのか」をはっきりさせることが大切になっています。これは、行政手続、金融取引、医療・福祉サービス、企業活動などをデジタル化していくうえで、重要な課題です。これまでのデジタル認証は、主に「その人が本人かどうか」を確かめるために発展してきました。ですが、実際の社会では、それだけでは足りない場面が多くあります。たとえば、その人がどのような資格や権限を持っているか、どこに所属しているか、どのような状態にあるかまで確認する必要があります。そこで重要になるのが、属性認証です。

 

 

属性認証とは、人や組織が持っている資格、権限、所属、状態などの情報について、それが本当に正しいかを、信頼できる発行元までさかのぼって確認できる仕組みです。これは単なるID連携ではなく、「本人であること」の確認に加えて、「どのような資格・権限・状態を持っているか」をデジタルに証明するための基盤です。日本では、公的個人認証サービス(JPKI)やそれに紐づくID技術等が「間違いなくその人であること」を確認する仕組みとして整えられてきました。これに対して属性認証は、そこからさらに進んで、「その人がどのような条件を満たしているか」を確認する仕組みだといえます。

 

属性認証が生み出すサービス例

属性認証を取り入れると、いろいろな分野で新しいサービスを作りやすくなり、今ある仕事も進めやすくなります。たとえば、会社の従業員情報や在職証明を信頼できる仕組みとつなぐことで、金融では銀行口座の開設や住宅ローンの審査で、在籍確認や収入確認をより安全に行えるようになります。これにより、確認のスピードと正確さの向上が期待できます。さらに行政でも、条件に合った優遇措置の適用や、手続きの簡素化につながります。紙の証明書を何枚も出してもらう代わりに、必要な条件を満たしていることをデジタルで確認できれば、行政サービス全体をもっと便利で効率的にできます。

 

 

医療・福祉や教育でも、属性認証は大きな意味を持ちます。たとえば、障害者手帳や学生証が電子化されれば、場面ごとに必要な情報だけを見せることができます。大切なのは、相手にすべての個人情報を見せるのではなく、「対象者であること」や「学生であること」だけを確認できる点です。これにより、利用する人の不安を減らし、不要な個人情報が漏れるリスクも下げられます。
さらに、会社の中でも、社員であること、特定の部署にいること、必要な権限や資格を持っていることが分かれば、入退館管理やシステム利用の管理をより適切に行えます。このように属性認証は、ただ認証を厳しくする仕組みではなく、「この人に何を認めてよいか」を安全に判断するための土台になるものです。
民間サービスとして、恋愛や結婚等を目的としたマッチングアプリや転職アプリが一般的になっていますが、利用者の方に正しい収入情報や勤務先を登録することによって、経歴詐称や不要なトラブルのないコミュニティーを作ることも実現できます。

 

 

 

属性認証に求められるガバナンス

もっとも、属性認証は技術だけで自然に広がるものではありません。安心して使うには、その情報が正しいか、発行元を信頼できるか、誤りがあったとき誰が責任を持つかを明確にする必要があります。つまり、技術だけでなく、運用ルールや責任分担を決めるガバナンスが欠かせません。
特に重要なのは、属性情報を管理する役割と、電子的な証明を発行する役割を分けて考えることです。病院や学校、企業などの属性管理機関は、資格や所属などの情報を正しく最新の状態に保つ責任を持ちます。一方、証明書発行機関は、その情報を安全に電子化し、署名や鍵管理などの技術面を担います。この役割分担によって、多くの組織が無理なく属性認証に参加しやすくなります。

 

 

また、ガバナンスにはトップダウンとボトムアップの両方が必要です。トップダウンでは、関係者の役割や責任を整理し、確認、発行、提示、検証、失効、監査について共通の原則を定めます。ボトムアップでは、医療、金融、教育など分野ごとの実情に合わせて基準を積み上げていきます。共通原則だけでも、個別事例だけでも不十分であり、両方を組み合わせて制度と実務を整えることが、属性認証を社会に広げるうえで大切です。

 

おわりに

属性認証は、金融、行政、医療・福祉、教育、企業などで、新しいサービスや仕事の効率化につながる可能性があります。一方で、社会に広げるには、誰が情報の正しさに責任を持つのかを明確にし、官民でルールを整えることが欠かせません。属性認証は、これからのデジタル社会を支える大切な基盤になると考えられます。