世界で猛威を振るう新型コロナウイルス。コロナワクチンの接種が全世界で進むものの、変異株の存在もあり、今もなお不安な状態が続いています。日本でも感染者の増加に伴い、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令され、多くの企業や事業者が営業休止・時短営業を余儀なくされています。今なお以前の生活に戻ることは難しく、「新しい生活様式」が求められています。
経営者の中には、新型コロナウイルスによる影響で「今後の経営方針に悩んでいる」、「この情勢が続くと廃業の可能性が頭をよぎる」などの悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。ここでは、新型コロナウイルスによる企業への影響と、中小企業が抱える課題について見ていきます。

新型コロナウイルスによる国内企業への影響と、懸念されるリスクとは?

帝国データバンクの調査によると、新型コロナウイルス関連の倒産は、日本全国で既に1763件発生しています(2021年7月15日16時時点)。

出所:帝国データバンク、新型コロナウイルス関連倒産、2021年7月15日時点よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

業種別に見ると、上位は「飲食店(295件)」、「建設・工事業(176件)」、「ホテル・旅館(97件)」、「食品卸(91件)」となっており、すでに幅広い業界に大きな影響を及ぼしていることがわかります。倒産に至らずとも、一部店舗の閉店など、事業縮小を余儀なくされている企業も多く存在し、新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えるべく、企業としての対策が急務とされています。

そのような中、中小企業においては、新型コロナウイルスの影響に加えて、ある傾向が顕著になっています。それは「経営者の高齢化」です。実際に、中小企業経営者の年齢分布について、1995年と2015年を比較してみると、その変化は明らかです。

中小企業経営者の年齢分布
出所:帝国データバンク、中小企業の成長と投資行動に関する調査、2016年よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

1995年から2015年にかけて、50代前半だった経営者年齢のボリュームゾーンが、60歳代後半にシフトしており、 経営者の高齢化は年々深刻化しています。後継ぎがいない企業においては、新型コロナウイルスによる急激な資金繰りの悪化から、先の見えない経営への不安が増大し、「廃業」を加速させる可能性があると考えられています。

では実際に、「廃業」を検討するとなった場合、どのような問題が考えられるのでしょうか。過去に「廃業」を検討した中小企業・小規模事業者のデータをもとに、「廃業時に最も苦労したこと」について見ていきましょう。

「廃業時の苦労」とその解決策とは?

次のグラフによると、廃業に当たり苦労したと答えた人の中で、「最も苦労した」項目として多かったものが「顧客や販売先への説明」と「従業員の処遇」でした。この2点の問題を解消するために、何か良い解決策はないのでしょうか。

廃業に当たり最も苦労したこと
出所:みずほ情報総研(株)、中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査、2018年12月よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

その解決策の1つとして、「M&A」が考えられます。

M&Aとは、Merger and Acquisitionの略であり、企業の合併・買収をいいます。つまり、異なる企業同士が、相乗効果(シナジー)を期待して、1つの企業や関連企業となることで、事業の多角化や体質改善、競争力強化を図るための重要な企業戦略の1つです。M&Aにおいては、企業同士が円滑にM&Aを行うことができるように、豊富な情報と専門的な知識を用いてサポートする「ファイナンシャル・アドバイザー(FA)」という専門家が存在します。

では、具体的に「M&A」には、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

M&Aのメリットは?

次のグラフは「後継者不在企業がM&Aに期待する効果」を示したものです。グラフにもあるように、M&Aは、特に「事業の承継」、「従業員の雇用の維持」、「事業の成長・発展」を期待して行われています。廃業時の苦労として挙げられていた「顧客や販売先への説明」や「従業員の雇用の維持」を解決するうえでM&Aは有効といえます。その他にも、経営者のメリットとしては、「株式譲渡による創業者利益(キャピタルゲイン)」も考えられます。

後継者不在企業がM&Aに期待する効果(複数回答可)
出所:中小企業庁、中小企業庁白書、2018年よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

「M&A」におけるメリットをより多く享受するために、企業に体力があるうちに検討を開始することがより良い相手企業を見つける秘訣といえます。また、実際に「M&A」を進めるうえでは、専門的な知識や各業界における情報網が大きな鍵となります。

一方で経営者の中には、上記のような情報網を得るために、「誰に相談をすればいいのかわからない」という悩みを抱えている方も多いかと思います。身近に相談できる専門家がいらっしゃらない場合は、インターネットを利用することで、無料で初期的な相談を受け付けている専門企業を見つけることもできます。

先ほど紹介した「ファイナンシャル・アドバイザー(FA)」への相談や、売手・買手・FAが多数登録する「M&Aマッチングプラットフォーム」を利用することで、「M&A」のマッチング確率は上がりやすくなります。

また費用面においても、現在政府は、倒産・廃業企業の増加を懸念し、様々な補助金制度を検討しています。2020年度補正予算 の「経営資源引継ぎ補助金」においては、M&A関連費用について一定額を国が補助する制度が盛り込まれ、利用を促すことで中小企業でのM&Aの検討が行いやすくなることが期待されています。 今後、廃業リスクを回避するために、M&Aという選択肢がより一層浸透していきそうです。