様々なメディアで、「高齢者が」、「高齢化社会が」というキーワードが日々散見されます。他方で、現在の我が国の高齢化の状況と高齢者の生活を下支えする介護保険制度、また高齢者向けビジネスを皆さんはどの程度ご存じでしょうか。
本連載では3回に分けて、「日本の置かれた状況と介護保険制度概要」、「介護保険サービスの概観とポイント」、「これからの高齢者向けビジネス デジタルを見据えて」として述べていきたいと思います。

日本の置かれた状況

日本は、高度経済成長期における所得水準の向上や社会保障制度の制定・拡充、医療技術の発展等に伴い、亡くなる人が徐々に減少し、また1971~1974年のいわゆる第二次ベビーブーム以降、出生数の減少に拍車がかかっていきました。

図表1
注:1966年に出生数が大きく減少しているが、「丙午」で出生数が減少したもの。
出所:厚生労働省、人口動態調査よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

他方で、高齢者数は年々増加の一途をたどっています。WHO(国際保健機関)では、65歳以上を「高齢者」と定義しており、日本では、1950年に高齢者人口約416万人、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)約4.9%であったところから、2020年(推計)には、約3,619万人、高齢化率約28.7%と、70年間で人口にして約8.7倍、人口の約3割が65歳以上の高齢者が占めるまでに至りました。

図表2
出所:総務省、国勢調査(2015年まで)・総務省、人口推計」(2020年)・国立社会保障人口問題研究所、将来人口推計(2025年以降)よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

また、WHOの定義においては、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会を「超高齢社会」とされています。そのため、日本は約50年前の1970年時点で既に「高齢化社会」に突入しており、2005~2010年の間で「超高齢社会」となっていたことがわかります。

図表3 諸外国の高齢化率
出所:内閣府、令和2年版高齢社会白書よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

なお、諸外国と日本の高齢化率の状況を比較すると、日本の高齢化率が突出して高いことはもちろんですが、ドイツ・フランス・イギリスの欧州3か国は2030年までに日本と同様の「超高齢社会」に突入する一方で、アメリカは、「高齢社会」である期間が長く、「超高齢社会」となるのは2035年と一歩遅れることが予測されています。
さらに、アジアの国々に目を移すと、東アジアでは、中国・韓国は既に「高齢化社会」となっており、両国とも2020年以降早晩、「高齢社会」となることが予測されています。東南アジアの国々では、タイとシンガポールの高齢化率が高く、2020~2025年までの間に、「高齢社会」となることが予測されています。

介護保険制度概要

2000年、日本の介護保険制度は開始されました。2000年以前の介護サービスは、「老人福祉・老人医療」というくくりりの中で行政による措置として主に行われていましたが、これに対し、図表1と2にある通り、少子高齢化の急激な進展が予測される中で、社会全体で支え合うために介護保険制度が創設されることとなりました。
そのため、国民健康保険制度の全市町村への普及(国民皆保険)が1961年に完成したことに比べると、日本の社会保障の中では新しい部類の制度となります。

図表4 介護保険制度の仕組み
出所:独立行政法人福祉医療機構サイトよりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

介護保険制度は図表4の通りですが、仕組みを簡単に述べると、「40歳以上の被保険者が納付する介護保険料と税金を財源に、被保険者のうち介護サービスが必要と認定を受けた個人が介護サービスの提供を受け、その利用料は、個人が1~3割、保険者が7~9割を負担する」制度です。

本稿では、①介護保険料の納付、②利用料の支払、③ケアプラン作成(要介護認定)に絞り、説明します。

①介護保険料の納付

介護保険料は、介護保険の被保険者である40歳以上の方が納付しています。65歳以上の被保険者を第1号被保険者、40~64歳の被保険者を第2号被保険者と呼んでいます。
それぞれの概要は図表5の通りで、本項を読んでいる40歳以上のビジネスパーソンの方は、給与明細をご覧いただくと、介護保険料が天引きされているかと思います。

図表5 介護保険の被保険者
注:対象人数および要介護認定について、第1号被保険者は2020年6月時点、第2号被保険者は2018年の平均値である。
出所:厚生労働省、介護保険制度の概要・介護保険事業状況報告(暫定)よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社作成

②利用料の支払い

介護サービス提供者は、提供した介護サービスの対価として、利用料を請求します。この利用料は「介護報酬」と呼ばれ、利用者が負担する部分と公的に負担する部分に分かれています。
利用者負担1割・公的負担9割が原則ですが、利用者の年金収入およびその他の所得が多い場合には、利用者負担が2割から3割へ増加し、公的負担が8割から7割へと減少する仕組みとなっています。
介護報酬は、3年に1度改定がなされ、直近では2021年に改定が行われています。
介護報酬の基本的な構造は、図表6の通り、介護サービスを受ける個人の状態「要介護度」に応じた基本報酬が設定されています。
基本報酬以外にも介護サービス提供者のサービスの提供体制や要介護度以外の個人の状態に応じた加算が設けられています。
また、介護報酬は原則1単位10円ですが、地域間の人件費の差を勘案し、1単位10円よりも高く設定されている地域もあります。
なお、公的負担で利用できる介護サービスの量(支給限度額)が要介護ごとに定められています。
この支給限度額は、最も要介護度が軽い方で月額約5万円、最も要介護度が重い方は、月額約36万円となっており、この支給限度額までは利用者負担は1~3割で済みますが、支給限度額を超えた部分は全額個人負担となります。

図表6 介護報酬の構造(イメージ)
出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

③ケアプラン作成(要介護認定)

介護サービスを利用するためには、要介護認定を受けたうえで、利用者の希望や身体の状態に応じた介護サービス計画(ケアプラン)を作成する必要があります(図表7)。
要介護認定は、新規認定の場合、原則的な有効期間は6カ月間で、12カ月間まで有効期間を設定することが可能です。また、更新申請の場合、原則的な有効期間は12カ月間となり、要介護度に変更が無い場合は最長48カ月間まで有効期間を設定することが可能となっています。

図表7 要介護認定~介護サービスを受けるまで
注:図表7は介護認定から介護サービスを受けるまでのフローを簡易的に示したものである。
出所;デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

おわりに

本稿では、日本の置かれた状況と介護保険制度の概要について述べました。読者のご家族がご利用しているかもしれない介護サービスは、本稿のような制度の下、運用がなされています。
次稿では、現在のどのような介護サービスが存在しているか、その種類と内容について述べていきます。
日本の超高齢化社会については、社会保障維持などの観点からネガティブなイメージで語られることも多いですが、諸外国と比較した場合、「諸外国が5年後、10年後に経験する社会を先行して経験している」ともいえ、高齢者向けビジネスにおいて、商機があるかもしれません。