デロイト トーマツ グループのスポーツビジネスグループでは、Bリーグのビジネス的側面にスポットライトを当て、Bリーグを客観的に測ることができるモノサシとして、2017-18年シーズンより「Bリーグマネジメントカップ」を発行しています。

Bリーグマネジメントカップでは、ビジネスマネジメントにおいて最も重要なテーマである「マーケティング」と「経営効率」、「経営戦略」、そして「財務状況」の4つの視点からBM(ビジネスマネジメント)レベルを総合評価し、その結果で各チームをランキングし、最も優秀なチームであるCup Winnerを選出します。評価対象はB1とB2を含めた36のBクラブです。

ステージごとにデロイト トーマツ グループが設定したKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)に基づいてディビジョン別にランク付けを行い、そのランキングに応じてBMポイントを付与します。最終的に累計BMポイントが最も多いクラブがCup Winnerとなります。

では、早速BリーグマネジメントカップにおけるB1の分析結果を紹介しましょう。

琉球、各分野で着実な成長を見せ初優勝!!

B1部門の優勝クラブは注目の沖縄アリーナが稼働を開始した琉球となりました。

琉球はマーケティング分野と経営戦略分野、財務状況分野で2位(マーケティング分野と経営戦略分野は2位タイ)、経営効率分野で1位タイと全分野で好成績を収め、2位の宇都宮に14ポイントもの大差を付けて初優勝を飾りました。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザー合同会社

年間を通してコロナ禍による制約が課されたシーズンでしたが、各分野で安定して上位の成績を収めました。

中でも入場者数制限で各クラブが苦戦を強いられた入場料収入は、驚異の+118百万円の伸びを見せ、他クラブを圧倒しました。これは期中に念願叶いようやく完成した沖縄アリーナの影響が大きいと思われ、沖縄アリーナで開催したホームゲームでは平均集客率が50%に迫り、新型コロナにおける制限下における上限ギリギリの集客を実現しています。

スポーツが持つエンターテインメントの力で、沖縄に、ひいては日本に明るい光をもたらそうとする取り組みに引き続き注目です。

1stクォーター:マーケティング

「満員のアリーナ」を実現することは、スポーツ興行において最も基本的な目標となります。一方で、コロナ禍でアリーナへの来客に制限が課せられる中での興行を余儀なくされているため、アリーナ来場者へのBM施策と、来場できないファン・ブースター向けのBM施策をバランス良く実施していく観点が今まで以上に重要になると思われます。

平均入場者数

2020年シーズンにおけるB1の平均は前年比▲1,680人(▲51.5%)の1,580人でした。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

トップは千葉の2,395人、2位は川崎の2,353人、3位は琉球の2,245人となりました。千葉は昨シーズンに続きB1でトップとなりましたが、コロナ禍による入場者数制限の影響で前年比▲2,720人(▲53.2%)と大幅に減少させています。

B1全20クラブの本KPIは昨シーズンより減少していることに加え、過半数の11クラブで50%以上の大幅なマイナスとなっており、大変厳しいシーズンであったことが数字からも分かります。

年間最多入場者を記録した試合は横浜アリーナで開催された宇都宮vs千葉のB.LEAGUE FINALS(2021年6月1日)でしたが、それでも入場者数は4,785人でした。

一方で、オンライン視聴者の増加傾向が報じられているように、会場に来る人だけがファン・ブースターではないため、入場者数の制限が続く中、各クラブはいかにしてさらなる観戦体験の向上を実現させるのか、BM施策の重要性がますます高まってくると考えられます。

2ndクォーター:経営効率

BMとFM(フィールドマネジメント)の関係に焦点を当てたKPIである「1勝当たりFチーム人件費」と「1勝当たり料収入」。BM側は、「勝利数」というFM的要素を前提としながらも、いかに効率性を追求しつつ顧客満足度も高められるかというトレードオフの課題に常に直面しています。このKPIに絶対解はなく、クラブごとの最適解を見付けることができるかどうかが、BMの重要なミッションの1つです。

1勝当たりチーム人件費

2020年シーズンにおけるB1の平均は、前年比▲5.7百万円(▲26.7%)の15.5百万円でした。昨シーズンはコロナ禍により全体の約1/3の試合が中止となった関係で、試合数や勝利数の絶対値が少なかったため、前年比では減少傾向にありますが、コロナ禍の影響が無かった2期前(14.1百万円)と比べると微増となっています。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

最も効率的に勝利を重ねたのは富山で、B1平均3分の2程度のチーム人件費にも関わらず、勝率0.650で39勝しており、1勝を約7.0百万円で挙げたことになります。対して最下位の広島はB1平均と同等のチーム人件費で9勝にとどまってしまったため、1勝を挙げるのに48.5百万円を費やしたことになっており、その差は7倍近くにもなります。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

このKPIの値はマネジメントの観点からは基本的に小さい方が望ましいと考えられますが、その分析はあくまでも相対的に行うべきという点に留意が必要です。

一般的には、BMの判断による多額のチーム人件費の投入はFM面にプラスの影響を与える傾向があります。ただし、チーム人件費に投入できる資金は有限であり、財務的な健全性を求められるBクラブにおいては、無尽蔵なチーム人件費の拡大はリスクであるともいえます。

そのため、各クラブは自クラブの相対的な位置づけを客観的に把握しながら、いかに限られた原資で効率的に勝利を挙げられるかを思案する、BM施策への真摯な向き合いが重要であるといえます。

3rdクォーター:経営戦略

クラブの資産(アセット)をどこに割り当てるかというBM施策は重要です。FM面への投資となる「売上高・チーム人件費率」、社会的影響力への投資となる「SNSフォロワー数」、ブランディングやクラブ財源確保への投資となる「グッズ関連利益額」。興行以外のビジネスにいかにリソースを割いてクラブ経営に役立てているかが読み取れる指標です。

売上高・チーム人件費率

2020年シーズンにおけるB1の平均は、前年比▲2.2P(▲4.9%)の41.8%となり、Bリーグ開幕以来はじめての減少となりました。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

これまでB1の平均チーム人件費は、毎年50百万円以上の増加を続けてきましたが、2020年シーズンは5百万円の増加に抑えられたのに対し、平均売上高は+30百万円と増加したことが主な要因です。

本KPIは、クラブにおいて期初の売上予算からチーム人件費が設定される傾向があることを踏まえると、BM戦略が反映されやすい指標といえます。また、チーム人件費への投資はFM面の強化に繋がる一方、クラブの経営を圧迫する要素にもなるため、諸刃の剣となり得る性質も有します。2020年シーズンは、コロナ禍による先行き警戒感からクラブ経営の健全性を重視した意思決定がなされる傾向にあったものと考えられます。

2020年シーズンのB1で本KPIが最も低かったのは大阪で25.7%(前年比▲5.9%)でした。大阪は、売上高が1,570百万円と千葉に続く高い水準となっているのに対し、チーム人件費は404百万円とB1平均(408百万円)を下回る水準となっています。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

それにも関わらず、FM面では、前年に続き6割を超える勝率を記録しており、BM面とFM面のバランスが最も上手くとられていたクラブの1つであるといえるでしょう。

4thクォーター:財務状況

Bリーグでは「バスケットボール界全体の安定的・持続的な成長と発展に寄与すること」を目的にクラブライセンス制度が導入されています。中でも「財務基準」は、3期連続赤字や債務超過、資金繰りに対して厳しいチェックがなされます。コロナ禍によりライセンス交付の要件に特例措置が導入されましたが、それでもクラブの安定的な財務体質の確保は最優先課題です。

売上高

2020年シーズンにおけるB1の平均は、前年比+30百万円(+3.2%)の960百万円でした。コロナ禍の影響を受け入場料収入は減少したものの、全体としては増加する結果となりました。トップは千葉の2,040百万円、最下位は信州の503百万円と、同一ディビジョン内でおよそ4倍の差が開いている状況です。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

千葉は2位の大阪に470百万円という大差を付けて2年ぶりにトップとなりました。なかでもスポンサー収入は前年比+446百万円の1,309百万円と前年から大幅に増やしています。

B1の平均的な売上高構成比は、スポンサー収入の割合が最も高くおよそ58%を占めており、コロナ禍以降、その比率は増加傾向にあります。そして、スポンサー収入は大企業の資本傘下にあるクラブが高い傾向にあり、特に名古屋D(三菱電機)は79%、A東京(トヨタ自動車)は83%と非常に高い状況です。

一方で、大資本を持たない宇都宮や富山などのクラブは、スポンサー収入が約40%、入場料収入・物販収入の合計がそれぞれ約30%~40%と、より収入源が分散された売上構成となっています。今後のエクスパンション制への移行に向けて、どちらのトレンドが主流になるのか、注目です。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

次回は、優勝クラブである琉球ゴールデンキングスについて、デロイト トーマツ グループの目線で分析を行います。お楽しみに!